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 中里尚雄さんという日本人サーファーの著作である 『水人』 の好印象が記憶に残っていたので、期待して読んでみた。2004年8月初版。

 

 

【宝物は・・・大切にしたいものは・・・】
 宝物は私が持っているものの中にあるのではなく、できるだけ物を所有したくないという気持ちの中にあることが、今、わかったのだ。
 大切にしたいものはただ一つ、こうした真実の瞬間の記憶だけなのだ。そして、私自身のこの部分につながればつながるほど、自由の本質をより深く理解できるのだ。しかも、人生のあらゆる面で、より幸せになれるだろう。(p.58)
 “真実の瞬間の記憶” と書かれていることに関して、これ以上詳細な記述がないから推測の域を出ないけれど、陸上で普通に生活している人々より、海で波に乗っているサーファーさんのほうが、 “真実の瞬間の記憶” に遭遇できる可能性は遥かに高いことだろう。
 魂をインスパイアーすることにおいて、 “海の気” と “都市の気” では全く比較にならない。
 “真実の瞬間の記憶” は、同じサーファーである水人さんが 「一瞬に永遠を見る」 と表現していることと通底しているのかもしれない。
      《参照》  『水人』 中里尚雄 (扶桑社)
               【一瞬に永遠を見る】

 

 

【孤独】
 孤独は、自分が誰であるかを発見させてくれる魔法の機会なのだ。
 独りでいられるようになりなさい。
 あなたの孤独を抱きしめることを学びなさい。 (p.72)
 自分が誰なのかは、魂のみが知っている。独り以外に出合えようはずもない。
   《参照》   “孤独” に関する引用一覧

 

 

【人生のコツ】
 人生のこつは、年をとらずに成長することだと私は信じている。・・・(中略)・・・。子供であってもおとなであっても老人であっても、ずっと大切に心に残ることをしてゆくのが人生なのだ。人生の秘訣を学びとること、そして障害をチャンスに変え、挫折を成長の踏み台にすることなのだ。
 私の中の子供は、ただ一つの夢をたずさえて、この世界に生まれてきた。それは遊ぶことである。ところが、この遊び好きな子供は突然、あらゆるしきたりや偏見に遭遇した。そして、やがて死に始めた。
 幸いなことに、私は海の中にすばらしい友を見つけた。海で遊ぶイルカたちや海の上をすべるように飛翔するカモメたちが、生き生きとした子供心を再び目覚めさせてくれたのだ。この先、どんなことが起ころうとも、私が目を再び閉じてしまうことはない、と私は知っている。
 人生はおしとどめるすべもなく、素早く過ぎてゆく。しかし、子供の心を取り戻してからは、人生が私を追い越してゆくことはなくなった。子供の心を持っていれば、年老いてしまうことはない。(p.81-83)

 

 

【いけないこと】
 死ぬことは悪いことではない。人生を十分に生きていないことこそが、いけないことなのだ。(p.133-134)
 死を怖れている暇などないほどに、十分に人生を生きている人は、ほぼ完璧な人生を過ごしているのかもしれない。ただし、現実的な生活だけに係留されていて、魂の欲するところなど思いもしないままに、人生を生きているというのであるなら、いずれ空虚感に纏わり憑かれることになるのではなかろうか。

 

 

【魂のオデッセイ】
 著者は、化学者として経済的には十分成功してけれど、そんな生活を放棄してしまう決意をした。
 この計画をシドニーの友人たちにうちあけると、当然のことでではあったが、ほとんどの者は信じられなかった。
「今まで成しとげてきたことを全部捨ててしまう気なの?」 と、彼らは一様にたずねた。
「いや、そうではなくて、僕はきみにわかってもらえない夢に従うのだ。日々、僕たちをゆっくりと殺してゆく仕事から離れて、人生が終わる前に自分の夢に従うことが大切だと君が悟るまでは、分かってもらえない夢にね」 (p.149)
 人生を 「魂のオデッセイ」 ととらえている人々の視点は、常にあちら側にあるから、こちら側で定住する中での経済生活は、まさに 「僕たちをゆっくり殺してゆく仕事」 以外の何物でもないと思えるのである。
 

 

<了>