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 2007年までソニーのCEOだった著者。CEOになれたのも時代の先を観るレポートが評価されたからだろうというようなことが書かれているけれど、そのまま2020年頃を見据えて、日本はああすべきだこうすべきだというような内容が記述されている。2007年7月初版。

 

 

【日本と英国の通信政策の違い】
 日本とイギリスの違いは、ブリティッシュ・テレコムのありかたのひとつを見てもわかります。BTは日本のNTTと異なり、いまやただの電話事業者ではない。自分たちを世界的なインフォメーション・サービス・プラットフォームと位置づけています。
 BTは携帯電話部門を手放し、いまは固定回線事業だけでやっている。・・・(中略)・・・しかもただの固定電話ではなく、FMC(Fixed Mobile Convergence 固定ブロードバンドネットワークの相互接続)という、日本と全く違う通信政策をやっています。私の見るところ、これは通信政策として将来素晴らしい成長をするでしょう。(p.26-27)
 BTがすすめているFMCについて、これ以上詳細に記述されていないからよく分からないけれど、各家庭の固定回線が携帯の基地局の役割まで兼務的にはたすということだろうか。固定回線という通信インフラが整っている先進国は、これを有効活用すればまだまだ様々なメリットを生み出せると考えてのことなのだろう。
 じゃあ、日本はどうかというと。
 NTTはかつて、ISDNや携帯電話で日本独自のシステムをつくった結果、日本の電話だけ世界とは違うシステムになってしまいました。・・・(中略)・・・
 いわゆる固定電話は2020年には完全になくなってしまいます。それどころか、おそらくNTTという企業も、存在しつづけているとしても、交換機電話とは別のビジネスをやっているはずです。(p.85-86)
 確かな記憶ではないけれど、南米は日本の通信システム方式を採用したというニュースを昨年聞いたような気がする。いずれにしても、世界は高度な情報通信システムを完備することで飛躍的に進化するのである。

 

 

【日本は必要とされている】
 中東に行くと、現地の人はみな、日本の技術と教育をほしがっている。日本の良さは、日本人より彼らのほうがよくわかっているのです。
 では、日本と中東諸国はどういう関係を持っているか、インドに対してはどうか・・・と考えていくと、日本にはまだ、たくさんの可能性が広がっていることに気づきます。
 アメリカや中国だけに媚びる必要はありません。世界の様々な国とよい関係をつくっていけばいい。良好な外交関係を積み上げていく努力をするのです。(p.38-39)
 日本の企業人は貪欲さを露骨にしないし節度ある行動をしているから、海外に進出している他国の企業人より、遥かに好感をもって受け入れられている。
      《参照》  『イスラムマネーの奔流』 北村陽慈郎 (講談社) 《後編》
              【マレーシアは東南アジアのイスラム金融窓口】
              【アラブ諸国の中・韓と日本に対する見方の違い】

 現在は、要請があっても治安の問題で、日本企業が進出しないケースがかなり多いらしい。日本人が世界に貢献するために、本格的に海外へ出てゆくようになるのは、世界から戦争や動乱の可能性が完全に去った時だろう。その時から、本格的に世界は日本化するのである。

 

 

【Domestic Focus (国内中心主義)】
 世界の動きを国内でしか通用しない考え方で推し量ってしまうのも、日本の欠点です。いわば世界が 「地動説」 で動いている時代に、日本だけが 「天動説」 でいるようなものです。
 日本時間の深夜に空港を閉めてしまうのも、地球の動きを無視した 「天動説」 のひとつのシンボルのように私には思えます。(p.46-47)
 海の玄関である港でも、日本は検閲に異常に時間がかかるとかいうことも 「天動説」 だろう。確かに天動説から地動説にシフトすれば、世界との扉は広く大きくなるだろうけれど、狭く小さい扉であっても、外国の人々が来たくなるような素晴らしい国になれたら、最高である。

 

 

【情報通信の時代】
 これまで半導体産業を支えてきた 「ムーアの法則」 は、半導体の大きさが22ナノに達したときにひとつの限界に達するといわれています。
 半導体産業は、いまちょうど60ナノくらいのサイズの生産のために設備投資を終えたところです。ここから逆算すると、収穫逓増が限界に達するのは量産レベルで10年後、開発レベルでは5年後です。つまり、半導体産業の連続的な成長を続ける寿命はあと5年から10年しかありません。
 もう一つの重要な法則が、「メルカトーフの法則」 です。ネットワークがもつ価値は、そのネットワークにつながっている者の数の2乗に比例する、つまりユーザーが多くなればなるほど、ネットワークの価値は急激に高まっていく、という法則です。
 ネットワークに関してはもうひとつ、通信網の帯域幅は1年で倍になるという、「ギルダーの法則」 もあります。この法則は、ネットワークの帯域が広がるスピードのほうが、半導体の進化よりも速いことを意味しています。(p.72)
 情報通信が世界に大きな影響力を持つようになって、世界経済や未来社会がハッキリ予測できると言い切れる人はいなくなった。
 例えば、大前研一さんは “見えない大陸” という言葉でそれを表現していたし、著者は、
 もし私がグーグルのCEOであったら、夜も眠れないほど悩むと思います。(p.73)
 と書いている。
 しかし、どんなに予測が困難でも、大局的にはきっと素晴らしい時代になるはずである。

 

 

【家も変わる】
 2020年には、家そのものが 「動かない車」 としてとらえられるか、あるいはロボットとして考えられるようになるでしょう。
 夜は寝室の間取りが広くなり、昼はリビングが広くなる。壁がすべてスクリーンになると、窓という概念もなくなって、部屋や家の考え方そのものが変わります。家の建て方も根本から変わります。あまり料理をしない家では、台所は普段はなくて、必要なときだけ出現すればいい。(p.91)
 スクリーンではなく可動式の収納庫が代用されている壁の家なら既に作られている。家は長年使うものだから、家族構成が変わっても、壁の位置を自由に変えることができればその時その時の実状にあった使い方ができる。
      《参照》  『TM3の思想』 守田昌利 ごま書房
               【スケルトン・インフィル工法】

 しかし、著者が想定しているスクリーン・ウォールというのは、もっとずっと進化した家を可能にすることだろう。すでにスクリーン式の有機ELテレビはソニーによって開発されているけれど、今後テレビはAV家電から環境家電へとさらに進化するはずである。そんな環境家電スクリーン・ウォールであれば、地下に住宅を作っても、地上生活とほぼ同じ環境ができてしまう。

 

 

【「環境・平和・文化国家宣言」】
 すでにいろいろなところでいわれていることですが、「20世紀における地域間、国家間の争いは石油をめぐるものであったが、21世紀の争いは水、食料となると考えられる」 というのは、私もそのとおりだと思います。
 これからの日本は、技術によって地球環境の改善に貢献することを国の最優先政策とすべきです。「環境国家宣言」 を行い、人口減少時代に適合したあらたな社会経済システムを、自らの努力によって日本が作り出せば、世界の将来にとっての規範を示せるでしょう。
 「環境国家宣言」 と 「平和国家宣言」、「文化国家宣言」 の3つを、日本の政治のゆらぐことのない基本方針とすれば、過去のどんな大国もなしえなかった大きな影響力を、世界に対して持つことができます。(p.133)
 抜きん出た環境技術力持つがゆえの環境国家と、原爆被爆体験を持つ世界唯一の国としての平和国家については、書かれていなくても分かるけれど、「文化国家宣言」 については、ボケた頭で読んでいたからだろうか、その詳細やアウトラインでさえ書かれていたようには思えない。こここそが最重要だと思うのに。

 

 

【クオンタムリープ】
 著者は、ソニーのCEOを退任して、クオンタムリープという会社を設立し経営していると書かれている。(p.135)

 クオンタムリープとは、量子力学の世界で、素粒子のエネルギーが高まると、軌道が漸次変化するのではなく、いきなり飛躍的に軌道が上がる現象をいい、量子飛躍と訳されている。
 日本に、連続線上の漸次的変化ではなく、「非連続の飛躍的改革」 をもたらすことができれば幸いであるという思いでこのような社名にしたらしい。
 社会の急速な変化は、人為ではなく思いがけない自然災害などによってもたらされるものである。今年3月の東北大震災は明らかに、闇の権力が仕掛けた人口削減計画としての人為災害ではあるけれど、それを自然災害と看做して、社会を変える方向に利用してしまえばいいのである。
   《参照》   『闇の世界権力の「日本沈没計画」を阻止せよ』 中丸薫/レオ・ザガミ (ヒカルランド) 《前編》
              【東日本大震災は、ハープと核爆弾の組み合わせ】
              【闇の世界権力の世界人口削減計画】

 福島原発が停止したって、本来は日本国内の全発電量の2%にも満たない発電量だったのだから、余剰電力で楽に賄えるのに、電力不足だとか電力消費量15%削減だとかの情報操作を行ってまで原発利権を確保しておきたい金狂いの邪悪なオッサンたちの作為は、腹立たしいほどいい迷惑である。であるにしても、この場合もこれを利用して、日本人が生活の仕方を根本的に考えるようになる契機となれば、それはそれでいいのだろう。
 時代の先を見る先進的な企業家や科学者たちが、未来へのいくつかの道筋を想定して企画計画しているけれど、最終的に大きな流れとして動き出すには、大衆の意識が変わらなければならない。
 閾値を越えた人々の共通認識が揃うことによって生ずる、「百匹目の猿」 現象こそが、社会的なクオンタムリープなのであり、これこそが、本質的でより根本的な社会変革を一挙にもたらすのである。地方都市でポヨヨ~~ンと生きているだけの人々は、百一匹目以降であり、日本を素晴らしい国へと進化させる役割を、現時点では全く担っていない。
 

 

<了>