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 アラブの大富豪とは、即ち産油国の王族たちのことである。2008年2月初版。

 

 

【アラビアのゼネコン】
 この本には、サウド家は当初は英国の支援を得ていたと書かれているけれど、実際の背景は米国だったのであろう。
   《参照》   『歴史に学ぶ智恵 時代を見通す力』  副島隆彦  PHP研究所 <後編>
              【アメリカの触手】

 サウド家のアブドルアジズによってアラビアが統一されると、商圏も全域に広がりインフラ整備が盛んになってゆく。
 道路や港湾などの公共工事の請負業者としてサウド家の御用商人となり豪商への道を歩み始める者もいた。その最大の成功者がスーパー・セネコンとなったビンラディンである。(p.25-26)
 つまり、アメリカの軍需産業の一角として名高いゼネコン企業・べクテルの下請けとして技術を積み上げていったのであろう。ビンラディンがネオコン一派なのは見え見えである。すなわちブッシュのお友達。ネオコン一派は互いにお芝居が上手である。
   《参照》   『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた (下)』 ヴィクター・ソーン  徳間書店
            【カーライル・グループ】

 

 

【アバヤの下】
 サウジアラビアの女性は厳しい戒律のため外出がままならない。 ・・・(中略)・・・ 彼女たちはアバヤと呼ばれる黒いベールで顔も手足も覆い、夫と父親以外には決して素顔を見せないが、女同士になってアバヤを脱ぐとその下は目もさめる派手なファッションに身を包んでいるそうである。(p.30)
 なるほど・・・女性にとっては他にお金を使えるところがないのだろうから、仲間同士の室内ファッションショーが盛んなのだろう。

 

 

【ドバイ】
 石油を産出するものの、ドバイにはそれほどの埋蔵量はない。
 ラシード首長には 「入れ物をつくれば中身は後から付いてくる」、つまり先行投資こそがドバイの生き残る道であるという強い信念があった。彼の構想はドバイを中央アジアからアフリカ東海岸までをカバーする物流拠点に変身させるという壮大なものであった。 ・・・(中略)・・・ 新空港を建設し、自前の航空会社(エミレーツ航空)を設立した。(p.55)
 さらに高級ホテルも完備し、受け入れ態勢は万全である。近隣各国から集めたカネで観光施設を整え、それらの国から訪れる観光客にカネを落とさせる。他人の財布を二度開かせるムハマンド首長のマジックは、まったく見事と言うほかない。(p.59)
 ムハマンドは、ラシードの息子。
 ドバイが、アジアにおけるシンガポールのような物流の拠点を目指したのは、ラシードやムハマンド個人のアイデアと言うよりは、明らかに英国の地政学的な政策提案という後押しがあってのことなのだろう。
   《参照》   『世界を知る力』 寺島実郎 (PHP新書) 《前編》
            【ユニオンジャックの矢】
            ~ 【ドバイ 】~ 【シンガポール~シドニー】

 

 

【HRH】
 サウド家の王子としての彼の正式な名前は 『HRHアルワリード・ビン・タラール・ビン・アブドルアジズ・アル・サウド』 という長ったらしいものである。最初のHRHはヒズ・ロイヤル・ハイネスの頭文字をとった尊称であり日本語の 「殿下」 に相当する。
 HH(ヒズ・ハイネス)の尊称を持つ者も多いけれど、直系の男子のみが持つHRHとは雲泥の差があるとか。
 王制をしくアラブ諸国は、同じく王国である英国や、天皇のいる日本には、歴史的な深みからか、近しい意識を持っているという。

 

 

【サウジアラビアのHRHアルワリード】
 アルワリード王子は、企業家でもある。一度は失敗して、シティーバンクに融資を頼んだこともあったけれど、その後は逆に6億ドル融資して、シティーの危機を救ったこともあるとか。
 当時の公共工事は面白いほど儲かるビジネスであった。 ・・・(中略)・・・ 国内有数の富豪ビンラディン財閥はまさにその典型であり、アルワリード王子もその一人だったのである。(p.83-84)
 現場で作業するのはインドからの出稼ぎ労働者で、監督するのはエジプト人という人件費安の仕組みが、儲かる仕組みであったらしい。
 ただ彼の場合は、ゼネコンからスポンサー事業、さらに投資家へと転身し、世界的な富豪に昇り詰めたのである。(p.84)

 

 

【オイル・マネーとアラブ諸国】
 1970年頃の第一次オイルショック(産油国にとってはブーム)が前回で、2008年頃の石油価格高騰が今回。
 前回のオイル・ブームで石油価格が2ドルから20ドル以上に上がったのと、今回のブームで20ドルから90ドルに上がるのとでは、黒字幅の桁が違う。(p.110)
 前回のブームは国内消費の活発化から輸入の増加という形でオイル・マネーは海外に還流したけれど、今回のブームは、既に物余り状態なので、マネーの過剰流動性を引き起こしていると書かれている。つまり、国内外の大規模投資へと向けられている。

 

 

【湾岸産油国の生活】
 湾岸産油国には所得税がない。しかも医療費や教育費も無料である。パンなどの食料品は驚くほど安価で、ガソリンも日本の5分の1以下、ミネラルウォーターよりも安い。(p.117)
 夫はといえば、その多くは公務員である。こちらもエアコンの効いた事務所で、これまた大した仕事もせずコーヒーを飲みながら同僚とのおしゃべりに余念がない。(p.118)
 アラジンの魔法のランプである石油を産出する国は、圧倒的に豊かである。
 公務員の実態と言うのは世界共通であるけれど、所得税や住民税を徴収する国でありながら、堂々と働かず傲慢な公務員は、純粋にモラルなき寄生虫である。

 

 

【アブダビ】
 UAE(アラブ首長国連邦)の富の源泉である石油と天然ガスの95%はアブダビから産出される。 ・・・(中略)・・・ 。UAEを家族に例えるならばアブダビが長男で、ドバイが次男、その他の5つの首長国は3男から7男であるといえる。(p.123)
 その結果、国内には ・・・(中略)・・・ 「モノ」 が溢れかえっている。そこでアブダビが次に輸入を目論んだのが 「モノ」 ではなく 「文化」 である。
 輸入する 「文化」 の目玉が、パリのルーブル美術館である。世界の美術の宝庫ルーブルの分館をアブダビに開設しようというのである。(p.124-125)
 ルーブルという名前の年間使用料だけで5億2千万ドル払ったという。お金がありすぎると、こんなことまでできてしまう。400兆円も借金を抱えている極東のどっかの国とは大違い。
 つい最近、アブダビ政府が日本のコスモ石油の筆頭株主になったが、このようにオイル・マネーの正体が表に出るのは極めて稀である。(p.130)
 目に見えない資産の大国・日本を急浮上させるのは中東からのオイル・マネーなのではないだろうか。
 日本への投資大歓迎である。
   《参照》   『イスラムマネーの奔流』 北村陽慈郎 (講談社)

 

 

【ヨルダン】
 ヨルダン王国は貧乏な国である。 ・・・(中略)・・・ サウジアラビアのサウド家、アブダビのナヒヤーン家、カタールのアルサーニー家、そのいずれをとっても大富豪の名に恥じない。その意味では、ヨルダンのハシミテ家を取り上げることは本書の主旨にそぐわない。
 しかし、中東の歴史と政治はヨルダンのハシミテ家を抜きにして語ることができない。何故ならナシミテ家は、イスラム教の開祖ムハンマド直系の子孫として中東では右に並ぶもののない由緒ある家系だからである。(p.138)
 この事実が、下記のオイル・マネーの川と重なって、重要なポイントとなっている。

 

 

【オイル・マネーの川】
 オイル・マネーの流れを川に例え、そこにアラブの王室をあてはめるとすれば、源流はサウジアラビア、中流がドバイ、下流をヨルダンになぞらえることができる。つまりサウジアラビアはオイル・マネーの供給元、ヨルダンはその投資先であり、ドバイはオイル・マネーの供給元と投資先をつなぐゲートウェーということである。(p.5)
 石油を産出する豊かな湾岸諸国から、石油を算出しない地中海側の貧しい国へ資金は流れる。即ちそこにはアラブの盟主たるハシミテ家が住むヨルダンであり、ヨルダンはアラブ共通の敵であるイスラエルに隣接している。これが中東の火種と言われる地域で紛争が継続されうる内的な構図であり、内的な資金の流れのひとつである。
 ヨルダンは、 ・・・(中略)・・・ 地域のトラブルを引き受け、調停役を買って出ることで外国からの援助を引き出すのである。(p.157)
 ヨルダンはイスラエル側の意向を入れつつ、アメリカからも様々な援助を引き出している。

 

 

<了>