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 糸井さんが書いている前書きを読んで、非常に興味を抱きつつ読んでみた。
 著者の新書は、ここ10年ほど読んでこなかったけれど、イスラム世界をフィールドに捉えることで、キリスト教世界をより明確に浮き彫りにしてきたらしい。2007年1月初版。

 

 

【前書き】
 〈思想書だけど、ビジネス書〉 という、
 ある時期にピーター・ドラッカーが受け持っていたような分野に、
 この 『三位一体モデル』 の内容はピッタリはまりそうだというわけです。
  ・・・(中略)・・・ 
 こうして、この、「誰にも読ませたい思想書」 であり、
 「現代社会の秘密を解くためのビジネス書」 でもあるこの本は、
 世に出ることになったのです。(p.6)
 糸井さんご自身の事務所で出版する書籍だからなのだろう。
 のせ方がたいそう上手である。

 

 

【三位一体】
 「父なる神、子なるキリスト、そして精霊」 と言われる三位一体(trinity)。
 まず 「父」 が、この世界に揺るがしがたい同一性を与えます。つぎに 「子」 が、それを私たちの世界につなげます。神と人間の間をつなぐ媒介のはたらきをするのです。それでは、「霊」 はいったい何をしているのか。ひと言でいうと、増えていくものをあらわす、つまり 「増殖する」 のです。こうして、「霊」 を組み込んだキリスト教は、「増殖」 現象を、自分のなかに抱え込んでいくことになりました。このことが、イスラム教とキリスト教のあいだの、もっとも深いレベルでの対立を示しています。(p.22-23)
 キリスト教文明は、資本主義経済体制の中にあって、「増殖する霊」 を 「利子」 に当て嵌め、商人は 「利子」 を取ってもよい、ということになったのだという。イスラム法のシャリーアでは、原則的に利息を禁じている。
    《参照》   『サハラの果てに』  小滝透 (時事通信社)  《後編》
              【イスラム法のシャリーア】

 

 

【「煉獄」の意味付け】
 ついでに考えだされたのが煉獄である。それ以前は、天国に行くか地獄に行くかしかなく、商人は地獄行きだった。しかし、その中間に煉獄を置くことで、商人にも、地獄を出て煉獄の山を登り切れば天国へ行ける可能性を与えたのだという。
 こうした経緯を経て、西ヨーロッパの資本主義は動き始めました。ガシャン、ガシャンとギアが噛みだしたのが、13世紀から14世紀。それから16、17、18世紀を経て、19世紀にフル稼働に入ります。しかし、この都合のいい煉獄の山が発明されていなかったならば、今日の西欧資本主義はなかった、といえるでしょう。(p.32-33)

 

 

【合理化】
 今日の世界に行き渡っているヨーロッパの原理は、世界各地にあった様々な良きものを押しのけ切り捨てる形で、浸透してきた。即ち合理化と言う名の世界展開である。科学は特にその先進分野であった。近年は、その弊害を見直す立場で、「ファジー(あいまい領域)科学」 などが研究されてもいるけれど、中間領域やファジー領域切り捨ての実例として多くの人にとって分かりやすいのが音楽である。
 日本人の音楽的感性に響くような、「こぶし」 や 「うねり」。似たようなものは、中近東やトルコなどの民謡にも見られるのですが、これらは、ヨーロッパの音楽では切り捨てられてきました。かつては、ヨーロッパでも、ピアノの調律などは不合理なぐらい複雑なやりかたをしていたのですが、ピアノを大量生産できるようになると、そんな面倒なことはやめようと、12音階に統一してしまった。つまり、「音の合理化」 によって、音楽の喜びの重要な部分を切り捨ててしまったのです。(p.73)
 団塊の世代のオジさん達が若い頃流行らしていたフォークソングは、たいていギターでつくられたものだった。耳に覚えのあるそれらの曲をピアノで弾いてみると、明らかな音のズレに違和感を持つのである。これこそ12音階という音の合理化により生じている違和感なのである。
 思うに英国で生まれた偉大なるロックバンド・クイーンの音楽を愛する人々は、合理化からはみ出た部分の音が生む快感を享受している人々なのではないだろうか。私は、クイーンといえば、演奏中にネジが外れて今にも解体してしまいそうな、そんな感じの音色を出すギターの音を真っ先に思い出す。英国人が21世紀に残したい名曲のナンバー1に選んだクイーンの 『ボヘミアン・ラプソディ』 なんて、タイトルにしても歌詞にしても、まさに近代合理主義が人間を抑圧してきたことの “なれの果て” を象徴的に表わしていると言えるだろう。

 

 

【 「霊の合理化」 】
 こうやって考察を進めていくと、おそらく 「霊の合理化」 ということが、西欧資本主義の発達における、もっとも重要なキーワードなのではないか、ということに気づきます。つまり、西欧では、目に見えず、抽象的な存在である霊を、均質なものとしてとらえ、それを数えあげたり、計算できるものにしてしまった。アラビアから学んだ計算の技術を発達させることによって、西欧は資本主義の礎をつくりあげ、増殖していく価値を計算し、操作できる物にしてしまったのです。そして、こういった技術は、西欧以外の世界の人々には、まねのできないことでありました。(p.76-77)
 なるほどねぇ~~~~~。
 音の合理化も、経済の合理化も、霊の合理化も、その過程で起こったことは同じであるという。
 このことは、人間の心のなかにある 「三位一体」 の構造が、ことなる領域でよく似た働きを起こしている、ということのあらわれだといえるでしょう。(p.77)
 「霊の増殖」 を置き換えた、物的な 「価値の増殖」 に関与している分野、すなわち 「経済」、「情報」、「広告」といったものこそ、西欧が主導で今日の世界に拡展してきた分野である。
 「三位一体」 の構造を、 “国際経済界” に当てはめるならば、 「父なる神」 が “世界皇帝のロックフェラー” で、 「子なるキリスト」 が “ビルダーバーグ会議に集う国際金融の支配者たち” で、「精霊」 が 「貨幣」 そのもの。
   《参照》   『泥棒国家日本と闇の権力構造』 中丸薫・ベンジャミン・フルフォード (徳間書店)
                【闇の権力の中枢】

 “情報産業” に当てはめるならば、 「父なる神」 が “スターウォーズの精神” で、 「子なるキリスト」 が “ビルゲイツやグーグルの創始者達” で、「精霊」 が 「情報」 そのものなのであろう。
   《参照》   『ウェブ人間論』 梅田望夫・平野啓一郎 (新潮社) 《後編》
             【グーグルの通過儀礼としての 『スター・ウォーズ』 】

 

 

【これから世界は】
 霊を合理化し、それを増殖するマネーに代替させた世界経済は、現在ルール無用の貨幣過剰供給状態にある。たび重なる金融危機の結果、基軸通貨ドルは終わりのときを防ぐという目的のため、ジャブジャブに供給されている状態であるし、これに絡んでユーロも不安定極まりない。
 西欧発の 「霊の合理化」 に起因する世界支配は、そろそろ馬脚も露わに年貢を納めるべきときなのであろう。あと2年ほどか。
 その時は、「物的に代替された霊」 ではなく、「本来の霊」 が実相をあらわすのだろう。星を基調とする国旗を持つ西欧をルーツとする国々が支配してきた夜の時代が終焉し、そろそろ日の出の太陽を国旗に持つ国々が世界の先頭に立つ時代なのである。
 
 
<了>