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 国際的な機関投資家であるマーク・モビアス。ソロスやバフェットという名前は聞いたことがあったけれど、モビアスという名前はついぞ知らなかった。
 経済って現実の生き物だからホントは読みだせば面白いのだけれど、とっかかる気分になれない事が多い。そんな時、このマンガが目に入った。
 表紙の禿のオジチャン、昔の俳優のユル・ブリンナーに似ていると思ったら、漫画の中にもそんな場面があった(p.75)。
 1960年にはシラキュース大学の研修留学で半年間、京都に滞在したことがあるという。

 

 

【テンプルトン】
 テンプルトン・ミューテュアルファンド・オーガニゼーションの創始者、ジョン・テンプルトンはアメリカでいち早く国債投資を行ったファンドマネージャーの一人である。
 1954年に彼はグローバル・ファンドを立ち上げ世界中に投資を行った。
 1960年代から1970年代にかけて彼は当時発展途上にあった日本の投資にいち早く乗り出し・・・PER(株価収益率)が3倍しかなかった日本株を買い付けてPERが30倍になったところで売却し大きな利益をあげた。
 まさに彼はエマージング・マーケットの先駆者だった。(p.94-95)
 このテンプルトンにヘッドハンティングされて、1987年にマネージャーとなったのが、マーク・モビアスである。
 ヘッドハンティングされる前、モビアスは香港を拠点に経験と実績を積み上げていた。

 

 

【エマージング・マーケット(新興市場)の性格】
 データ主導投資の弱点は投入されるデータの質にある。新興市場では60%正しければ上々なのだ。
 その国に行って企業や人々を知るということの最大のメリットは、そのことで自分自身が信念を持てるかもしれないからだ。(p.105-106)
 新興市場では、データの質以外にも、株式の登録制度や振替決済制度が確立されていなかったり、株券が偽造されたりといったことが当たり前に起きる。
 こういった投資の阻害因子を保持したままでは、新興市場は発展しない。国家といえどもルールを確立していなければ、世界中からの投資を受けられないから、ヤクザ稼業を野放しにしていては、順調な発展は実現しない。この書籍には、トルコやロシアのそういった実例が記述されている。

 

 

【冷静な判断】
 日本の投資家からインドネシアに投資するように矢のような催促があったという。しかし・・・
 主要なインドネシア株の収益率を検証すると過去の株価よりも市場全体が割高になっているのが分かった・・・(p.122)
 ので、モビアスは日本人投資家の意向を無視して動かなかった。そして相場が暴落した。
 資金が無事だったのに、誰も感謝しなかったという。
 機関投資家は、あくまでもデータ解析による結果を元に冷静に判断する。
 タイを震源とする東アジア通貨危機の場合もそうだった。
 

 

【東アジア通貨危機】
 特定の国の通貨の購買力平価(PPP)を計算するには、その国のインフレ率を米国のインフレ率で割れば米ドルに対して強いか弱いか分かるのです。インフレ率がどんな経済でも弱さを示す指標だからです。
 タイではインフレ率が上がり多数の企業が資産を超えるドル建て負債を抱えて深刻な状態でした。それを見抜いた国際的な投資家たちが、ローンを提供していた銀行やファイナンス・カンパニーから、自分たちの資金を引き揚げた。その結果バーツは急落し同じように不安定だったアジア各国の通貨を連鎖的な下落に導いたのです。(p.166)
 ところで、マレーシアのマハティール首相の、「通貨トレーダーの陰謀」 という非難に関しては
 彼らトレーダーは過大評価されている。通貨のサヤ取りをしているだけです。いずれ各通貨は時間をかけて自らの水準を探します。トレーダーの行為は、たんに下落を早めただけでしょう。(p.167)
 と書かれている。
 このアジア通貨危機の時、もっとも安定していた台湾の経済政策はどのようなものであったのか、経済学部の学生さんなら調べてみると面白いかもしれない。
 そして近未来、計画的に中東で戦争が起こされ、渦中の米・中・ロがインフレに向かった時、日本の通貨はインフレに巻き込まれるのか否か。ハイパーインフレを起こした米ドルのデノミを想定した場合、そして、日米揃い踏みのデノミを想定した場合などの思考実験はたいそう興味深い。既に誰かが書いていることだろう。
 意外な策(案)によって、日本が世界を救済することになるかもしれないのだから。 

 

 

【国家ファンド】
 テンプルトンのような企業ファンドではなく、国家ファンドという概念で、日本を世界に羽ばたかせればいいじゃないだろうかと、素人なりに思うことがある。
 小さな国に、日本の資金と技術を全面的に提供して、あたかも日本の一地域であるかのように、国家全体の発展を助けるのである。そして、それは戦前の日本が、台湾と朝鮮でやっていたことである。
 台湾や朝鮮の併合は、決して収奪や搾取をするための植民地経営などではなかった。日本国内の貧困地域選出議員の猛反対を押し切ってまで行われた、膨大な額の持ち出しによる殖産興業という日本国土化だったのである。
 あらたな国家ファンドで新興国を発展させるために、言葉まで日本語を強要する必要はない。日本の信用力と資金力と技術力は、国家単位であればこそ、圧倒的な威力を発揮するはずである。
 実際のところ、 ”X計画(預金封鎖)” のような衝撃的な方法は別として、この方法以外に、既に破綻しているといっても過言ではない日本の国家財政を、長期的に立て直す方法はないだろう。
 
<了>