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 荒俣さんの本を読んでいる途中で、この本をちょっと手にとって読んでみたら面白かったのでそのまま先に読み終わってしまった。(俣から股へズレた)
 体験記というのはやはりいい。著者の表現はとてもいけてる。何度爆笑したことか。
 シドニーからパースまで4000km以上、およそ2カ月間、ひたすらチャリンコで進む旅である。

 

 

【動機はない】
 こんな大それたことにチャレンジしようとしているのだ。
 動機は、ない。
 動機がなければアクションを起こせないほど、僕の精神は軟弱ではない。ただ突き動かされるように “空っぽの灼熱大陸を思いっきり走りたい!” と思っただけだ。(p.7-8)
 “空っぽの灼熱大陸を思いっきり走りたい!” というパッションは動機ではないのか。パッションに直結した行動派の著者にとって、パッションと行動の中間域にくだくだと表現できるものなど何もないと言いたいのだろう。

 

 

【ベジマイト】
 ベジマイトというのは、黒いペースト状の食べ物で、パンなんかにぬって食べるのが一般的らしい。・・・中略・・・。もともとは健康食品だったのが、いつのまにかオーストラリアを代表する食品になってしまったものだそうだ。・・・中略・・・。
 いや、まずいなんてもんじゃない。想像を絶する味だ。人知を超えているというか、史上最大というか、とにかく人類の英知を結集してつくりだしたようなまずさだ。(p.31)
 オーストラリアを代表する健康食品なんだから、一人に一瓶ずつイタズラ半分の御土産にすればいいのに・・・と思ってしまう。しかし、貰っても完食できる日本人など殆どいないだろう。
 ギャル曾根ちゃんにベジマイト丼を食べさせてあげたいわぁ。餓鬼霊が一挙に逃げ出しちゃったりして・・・。

 

 

【仁義なき戦い】
 ハエ : とうてい追い払い切れるものではなく、気分は生ゴミ状態。完敗。
 アブ : 仁義なき戦いにて累々たる死骸を見下ろし圧勝。
 アリ : アブの死骸を献じて和解成立。 (p.69-76)
 オーストラリアに行ってハエの印象を持ち帰らない人はいないだろう。アブの経験はないけれど、アリさんにはやられた。コップを逆さにしたようなバンクシアの花を真近でシゲシゲと見ていたら、サンダルの素足に食い付かれて文字どおり飛び上がったのである。オーストラリアのアリさんは力があってデカくって実に重そうに見えた。踏み潰して報復するより逃げることを何より選んでしまった程である。

 

 

【益荒男の日本人】
 確かにオーストラリアには僕のような旅をしている自転車バカの日本人は多い。僕も何人かに出会った。ドイツ人やオランダ人といったヨーロッパ人のサイクリストもたくさんいたが、国籍別では日本人が一番多いだろう。それも単独行ばかりだった。ほかのアジア人はついぞ見かけなかったので、こういう奇行は日本人という国民性を考えるうえで重要なのではないか。少なくとも日本人はよく言われるような ”和” に盲従する民族ではない。(p.157)
 この記述には日本人に関する重要な指摘がある。
 著者は14ページに、吉田松陰の有名な句(下記)の後に、よっしゃ、行くぞー! と書いて旅の記述を始めている。 大和心を有する者達は、一人で生まれ一人で死んでゆくことの自覚が大和魂の中に根付いているのを無意識ながらも知っている。民族の智恵としての “和” ではあっても、個々の心は “ひとり → 霊(ひ)鳥 → 火の鳥” なのである。
 オーストラリアに滞在する日本人の中には、共通しただらしないファッションで群れをなす日本人留学生達のような滓も大勢いれば、著者のように孤高な行動に駆り立てられる益荒男も少なからずいる。将来の日本を牽引してゆくのは、間違いなく後者の若者たちなのであろう。
   《参照》  日本文化講座⑧ 【 武士道 】
           『 かくすれば かくなるものと 知りながら 止むに止まれぬ 大和魂 』 
           『 武士道は不死鳥である 』
 
<了>

 

  《オーストラリア関連》