
かつての戦争における日本の失敗例を具体的に調査して、教訓を学び取ろうとする内容。誰だって再び戦争が起こることを期待してはいないだろうけれど、戦争以外の分野に照らして、この本の教訓から学べることは多い。
【砲口馬力】
【砲口馬力】
「砲口馬力」という計算がある。機銃の砲口から飛び出してくる弾丸の重さとスピード、そして1分間に何発撃てるかを掛けた仕事量のことだが、早く言えば1分間あたりの1銃の発射火薬の消費量のことである。 (p.48)
日本の戦闘機は2種類の機銃を装備していたのに対し、アメリカの戦闘機は1種類の機銃を装備していた。砲口馬力で合理的に計算するとアメリカの方が有利なのに、日本は熟練パイロットの戦闘員の主張が優先された。熟練パイロットとはいえ死んでしまえば質の技術は継承できない。戦争は合理(量)的に設計されるべきである。
【美風と無責任】
南雲中将は、「ミッドウェーの責任をとって、私はここで死ぬのが仕事だ」と言って、サイパン島では看護婦さんとテニスばかりしていたと、生き残った看護婦さんが書いている。しかし、高い給料をとっていたのだから、給料分くらいは米軍を手こずらせることを何か考えろと言いたい。
死ねばすべてが帳消しというのは日本の美風ではあるが、まだ生きているうちはプロとしての責任があるはずだ。美風はときに無責任と表裏一体である。 (p.91)
死ねばすべてが帳消しというのは日本の美風ではあるが、まだ生きているうちはプロとしての責任があるはずだ。美風はときに無責任と表裏一体である。 (p.91)
【マッカーサーとフィリピン経済】
じつは、彼(マッカーサー)の父親はアメリカを代表するフィリピン統治の最高責任者だったから、フィリピンには彼が動かせる利権が山ほどあった。戦後マッカーサーが連れてきた悪徳商人がフィリピン経済に迷惑をかけたのは、知る人ぞ知る事実である。 (p.98-99)
「アイ・シャル・リターン」の名言で有名なマッカーサーが、そう言って、その通り帰ってきた理由は、利権にあった。カッコイイ科白にごまかされてはいけない。ついでに書いておくが、近年のフィリピンの高学歴者はアメリカで教育を受けているから、どちらかというと侮日的である。
【思考が用語に縛られる】
・・・対潜攻撃をする戦法とかを、工夫すべきだった。しかし、日本軍にはそういう発想が何もない。意味もなくいままでのやり方を続けていた。発想を変えられなかった理由を想像すると、用語が 「制圧」 だけで 「攻撃」 というのはなかったことが思いつかれる。爆雷には 「威嚇投射」 という用語しかなかった。思考が用語に縛られていたのである。 (p.114)
失笑してしまうのは、私だけではあるまい。戦争しているという意識があったようには思えないではないか。おっとりとした日本人の集団は、平時のように 「無益な殺生はしたくない」 と考えていたに違いない。呆れる。 潜水艦の配置にしても、公務員的というか基本どおりに等間隔配備を遵守させていたというから、一つの艦が発見されれば、全ての艦が位置を読まれてほぼ全滅させられていたのだという。二の句がつげない。
【ノモンハンを指揮した辻正信】
陸軍の作戦参謀。昭和14年5月、ソ連の機械部隊と衝突して2万人近い兵力を失い大敗北(ノモンハン事変)を喫しながら、作戦の正しさを主張してやまず、現場の連隊長多数が責任を取って自決する悲劇を招いた。太平洋戦争では緒戦の勝利で「作戦の神様」と呼ばれたが、近代戦の要である機械化と補給を軽んじ、作戦指導も敵情判断欠いた極端に精神主義的なものだった。ガダルカナル島の弾薬も食料も底をついた部隊に同島の死守を命令するなど、その後の日本軍の敗北をより悲惨なものにした。 (p.142)
近代戦に相応しからざる精神主義を糾弾する論述は数多あるけれど、その中でも、最も強く糾弾されるのがこれである。
【本当のエリートとは】
しかし今日では、日米交渉に当たる担当者の中にも、大義(日本の国益)を主張する気骨ある官僚は殆どいないのだそうである。アメリカのいいなり。近年の改革で日本が失った(=アメリカに渡した)資産総額がいくらになるか、一般の国民は全く知らされていない。知ったら、きっと気絶する・・・。
エリートの育成とは、「大義のためには自らを滅する」という心構えを持った人間を育てるということである。
戦争のとき、やたらブン殴る上官がいたのは、大義のために自らを滅するエリートがいなくなっていたということである。それはいまでも同じで、高級官僚がおかしくなっているのは、本当のエリートがいないことを示している。 (p.151)
日下さんの言っているエリートとは、将に “武士道精神の体現者” である。戦争のとき、やたらブン殴る上官がいたのは、大義のために自らを滅するエリートがいなくなっていたということである。それはいまでも同じで、高級官僚がおかしくなっているのは、本当のエリートがいないことを示している。 (p.151)
しかし今日では、日米交渉に当たる担当者の中にも、大義(日本の国益)を主張する気骨ある官僚は殆どいないのだそうである。アメリカのいいなり。近年の改革で日本が失った(=アメリカに渡した)資産総額がいくらになるか、一般の国民は全く知らされていない。知ったら、きっと気絶する・・・。
<了>