
「大量破壊兵器が隠されている」 という口実でアメリカが戦争を仕掛ける前の、2002年に、著者が訪れてみたイラクの様子が、豊富な写真と共に書かれている。
【イラクの女性 と サウディアラビアの女性】
アメリカと対立しているイラクという国に住む女性は、古い因習から解き放たれて民主化している。一方、アメリカと良好な関係を保っているサウディアラビアに住む女性は、昔ながらの歴然とした部族国家的な因習に囚われ生活している。
これだけでも、アメリカの言う “民主化” が単なるタテマエであることは分かる。アメリカの国益に同調すれば良し、しなければ何とでも理由をつけて戦争に巻き込むのがアメリカという国である。
その後、戦争が行われた理由は、フセインが、「石油の支払いをユーロ建てにする」と言ったことらしい。基軸通貨ドルの支配を揺るがす発言は、即座に武力行使に直結する。
町に女性の姿は沢山ある。彼女たちはサウディアラビアのように顔を隠してはいない。イランのようにみながみな髪を布で覆ってもいない。正確に言うと、顔をすっかり隠した女性は南部で数人見かけたくらい。髪を覆う比率は半々だろうか。モスル大学の女学生は8割が髪を見せていた。
官庁にも女性の姿は多い。情報省の中には英語の日刊紙を発行しているセクションがあるが、そこは編集長以下みな女性なのだという。女性には車の運転もさせないサウディアラビアとはずいぶん違う。 (p.38-39)
この文章からも、“民主化” という錦の御旗を掲げるアメリカのあくどい手法を知ることができる。官庁にも女性の姿は多い。情報省の中には英語の日刊紙を発行しているセクションがあるが、そこは編集長以下みな女性なのだという。女性には車の運転もさせないサウディアラビアとはずいぶん違う。 (p.38-39)
アメリカと対立しているイラクという国に住む女性は、古い因習から解き放たれて民主化している。一方、アメリカと良好な関係を保っているサウディアラビアに住む女性は、昔ながらの歴然とした部族国家的な因習に囚われ生活している。
これだけでも、アメリカの言う “民主化” が単なるタテマエであることは分かる。アメリカの国益に同調すれば良し、しなければ何とでも理由をつけて戦争に巻き込むのがアメリカという国である。
その後、戦争が行われた理由は、フセインが、「石油の支払いをユーロ建てにする」と言ったことらしい。基軸通貨ドルの支配を揺るがす発言は、即座に武力行使に直結する。
【紙幣は1種類だけ】
旅をしているかぎり、町や村で人々を見ているかぎり、今のイラクは普通の国である。・・・。イスラムの国としてイラクだけが違うという印象は無かった。
イラクの社会に、旅行者が首をかしげる一面が無いわけではない。例えばお金。紙幣がサダム・フセインの肖像を描いた額面250ディナール札1種類しかないのだ。これ一枚が16円ほどだから。・・・。百枚の束には銀行の帯封があって、束のままで1枚の25000ディナール札として通用している。5000ディナールや10000ディナールの札を作ればいいと外から来た者は考えるが、それがない。 (p.64)
子供の頃に見ていた漫画に描かれていた、石器時代の大きな石の貨幣を思い浮かべてしまう。前近代の文化では、なんといっても質ではなく量が価値を意味するようである。中国などは現在でも、“贈りものは大きくなければならない” とする考え方が残っている。これでは、日本のようにハイクオリティーで世界をリードする文化国家にはなれない。イラクの社会に、旅行者が首をかしげる一面が無いわけではない。例えばお金。紙幣がサダム・フセインの肖像を描いた額面250ディナール札1種類しかないのだ。これ一枚が16円ほどだから。・・・。百枚の束には銀行の帯封があって、束のままで1枚の25000ディナール札として通用している。5000ディナールや10000ディナールの札を作ればいいと外から来た者は考えるが、それがない。 (p.64)
【本を読むイラク人、鑿を動かすイラク人】
シュメールとヤマトは同系である。政治的安定さえ得られれば、イラクは素晴らしい国になれるであろうに・・・。
バクダッドのラシード街という賑やかな通りの西の方にムッタナビという地域がある。ムッタナビは16世紀の詩人の名前である。休日になるとここに古書の市が立つ。
アラブ圏では、本を書くのはエジプト人、印刷するのはレバノン人、買って読むのはイラク人という言葉があるそうだが、実際ここに集まった読書家はみなとても熱心だった。英語の本では大学レベルの教科書が多かったが、シェークスピアやディケンズ、フォークナーなどもあった。
ぼくは、こういうイラク人の文化的な姿勢に共感を覚える。
別の例を挙げれば、ハトラという北方の遺跡で、石材をゆっくりと丁寧に削っていたあの老いた石工のこと。・・・。彼の目には目前の戦争は映っていない。見えているのは十数年後百年後のこの遺跡の姿ばかりだ。イラク人の誇りにはいくつかの理由があるが、世界で最も古い文明を創造したというのもその一つだ。たかだか二百年あまりの歴史しかない某国が何をいばるかと笑う。 (p.69-70)
メソポタミア文明を生み出したシュメール人の血脈が、本を読むイラク人に繋がっているのだろう。個々の魂の中に神殿を持つヤマト人が、イラクにある古代遺跡に触れたら、インスパイアーされるものが沢山ありそうな気がする。アラブ圏では、本を書くのはエジプト人、印刷するのはレバノン人、買って読むのはイラク人という言葉があるそうだが、実際ここに集まった読書家はみなとても熱心だった。英語の本では大学レベルの教科書が多かったが、シェークスピアやディケンズ、フォークナーなどもあった。
ぼくは、こういうイラク人の文化的な姿勢に共感を覚える。
別の例を挙げれば、ハトラという北方の遺跡で、石材をゆっくりと丁寧に削っていたあの老いた石工のこと。・・・。彼の目には目前の戦争は映っていない。見えているのは十数年後百年後のこの遺跡の姿ばかりだ。イラク人の誇りにはいくつかの理由があるが、世界で最も古い文明を創造したというのもその一つだ。たかだか二百年あまりの歴史しかない某国が何をいばるかと笑う。 (p.69-70)
シュメールとヤマトは同系である。政治的安定さえ得られれば、イラクは素晴らしい国になれるであろうに・・・。
<了>