事故で目が見えなくなっていたジョセフ(ティム・ロビンス)の看護婦として、海上油田にやってきたハンナ(サラ・ポーリー)の、辛い過去を解き放つ過程が描かれている。ハンナのトラウマに関わるのは、戦争の歴史。


【タイトルに即して書くなら・・・】
 目の見えないジョセフが、ハンナに話した秘密のこと・・・。「僕は泳げない」。 2人とも爆笑。
 ハンナは、心の中に秘めていた過去の悲惨な出来事をジョセフに話し、胸に残る数多の傷に触れさせる。
 目が回復して、ハンナを探し出したジョセフが、「一緒に暮らそう」 と言ったのに対して、
 ハンナは、「わたしの流す涙の海に、あなたは溺れてしまう」
 これに対するジョセフの応答は、「泳ぎを練習するよ」
 シャレタ会話だったけれど、観ていたチャンちゃんはといえば、「ハッピーエンドで良かった」 という安堵の吐息のみ。


【レクイエムとしての映画】
 この映画は、数十年前の西欧の悲惨な歴史に対するレクイエム(鎮魂歌)だったのだろう。生者のみならず死者にとってもである。特に無残な死を遂げていった女性達にとっての・・・。
 数十年経っただけで、大量虐殺の歴史は語られなくなる。そうかといって、悲惨すぎた事件の当事者にとっては思い出したくない過去。ハンナのカウンセラー役だったインゲ(ジュリー・クリスティー)の、そんな語りを聴いていて、この映画の作成意図が分かった。
 生き残った者たちは、恥を忍び、ただただ心を閉ざして生きている。心に傷と闇を抱いて生きている人にとって、この映画は、せめてもの希望となるハッピーエンドの贈りものだ。死んでしまっている人々にとっても、生きている人々に過去の事実を正確に伝えることによってレクイエムになっている。


【イザベル・コイシェ監督】
 歴史に対する深い悲しみを表現しているこの映画の作成監督は、やはり、イザベル・コイシェさんという女性だった。男性なら、このような映画は作れないだろう。
 それにしても、スペイン人によって作られた映画であることにビックリする。この映画の歴史的背景として語られているのはナチスやクロアチアなのであるから。
 やはりスペインには、スペイン内戦に関わって、人間を守るために反戦を訴え続けた芸術家達の魂が現在でも息づいているようだ。ピカソの 「ゲルニカ」 だけではない。カタルーニャから生まれでた芸術家達はキラ星のごとく輝いている。この監督もカタルーニャ生まれである。

 

<了>