
オーストラリア人で日本に20年ほど住んでいる著者。書かれている日本語が上手で面白く奥が深い。茶道の実践を通じて日本文化を理解してきた内容が、素直に記述されている。
【手作りの品 vs ブランド品】
日本で学んで自分で作った掛軸をお茶の先生にあげたら、「手作りの品は人にあげない。それが日本人の伝統的な考え方なの」 と言われてしまいました。西洋人は手作りのものを一番喜んでもらえると考える。でも、日本人は本当の職人が作ったものでないと失礼だと思うんですね。なんで日本人がブランド好みか、これでよく分かりました。 (p.34)
【日本人の丁寧さ】
日本人の丁寧さですが、とくにデパートの包装ときたら、すでに伝統工芸ですよ。それに比べてひどかったのは、「花の都」 とか言われているパリの有名デパート。ヘアバンドを買ったんですが、品物を包もうともしなかった。それどころか紙袋を出して、自分で入れろといわんばかりの顔をする。日本での生活が長くなっていた私には、とんでもないことでした。 (p.67)
贈り物の包装に関する日本人の丁寧さは、エコという視点では疑問視されてしまうけれど、日本文化の“奥ゆかしさ”を理解できるようになれば、著者のように感じるだろう。
《参照》 『京都の秘密 経営の絶対ヒント 深見所長講演録5』 (菱研)
【日本的美意識と銀閣寺】
【みずみずしい】
漢字で書けば、「瑞々しい」。広辞苑には、「光沢があって若々しい。新鮮で美しい」、とある。普通の日本人でも、意味から想定して 「水々しい」 と書いてしまいそうだけれど、これは間違い。「瑞」 は本来 「めでたい」 の意味であり、“神様が宿っている” とする考え方が基になっている。
「瑞雲」、「瑞穂」 などの単語の意味する処まで思索している著者は、並みの日本人よりも、遥かに深い日本文化の理解者である。
【きれいにする】
日本語では、美しく飾ることも、清掃することも、「きれいにする」 と言うでしょう。「きれいな水」は「清らかな水」なんですね。英語では、beautiful と clean は別ですが、日本では、clean なものは beautiful なんです。 (p.50)
外国人が日本語を通じて日本文化を知る一例である。
日本人が英単語を通じて英語文化を知る一例がある。
Incentive
この単語には、動機と刺激、二つの意味がある。動的・外発的な欧米文化ならではである。静的・内発的な日本文化からはこのような単語など発生しようもない。
【触覚も味のうち】
西洋の磁器や京焼は肌が冷たいくせに、お茶が入るとあっちち。楽茶碗を作った利休は、人間が何を求めているか、よく分かっていたんだな。雅やかな京焼とか染付けは、目に楽しいけれど、手に取ったときの満足感にかけています。冷たい大名の食事と暖かいおふくろの料理の違いです。 (p.150)
【タイトル解題】
日本人は 「初々しい」 ことを大切にし、また、経年によって生ずる 「艶」 や 「貫禄」 を良きものと考える。しかし、英語では、人間が年を取ることはなるべく考えまいとし、否定しようとする。 (p.131)
著者は、生まれてから死ぬまでの人生の中に、通時的に美を見出そうとする日本人の態度の中には、深い官能性があるのかもしれない、と考えているようだ。
熟したものにはいい味がでる。人生すべてと、両手を大きく開いて思う存分に抱き合ってしまう、これはセクシーな生き方です。 (p.132)
【在日ニッポン人】
あとがきに、面白いことを書いている。
今の日本の若い人たちも、この国の伝統に 「外人」 と同じ感覚で接していると思います。
私以上に 「在日ニッポン人」 ではないでしょうか。 (p.181)
<了>