
この著書が出版されたのは、1991年でした。当時、世間を賑わせていたノストラダムス関連の世紀末ものの中の一つなのですが、この書籍は、西欧文明の視点で見た終末史観に逢着するのではなく、日本人の精神から見た、世界文明の転換期、という視点で記述されていることが、他の類書と大きく異なっていました。
出版当時、この本を読んだ私は、神道に関する知識が殆どなかったため、この書籍に関して、国旗の星、月、太陽、という分類で世界の文明を分類していたことが強く印象に残っていた程度でした。しかし、昨日、船井幸雄さんの 『人間塾』 の中で、「国旗の不思議」 という括りを読み、この本のことを思い出していたのです。本箱から探し出して再読してみました。
これほどまでに日本文明の根本を的確に押えて記述されていた本であったとは、驚きです。この書籍、15年前の私には、間違いなく 「猫に小判」 でした。
【 『聖書』 と 『古事記』 】
古事記の上巻(神代巻)を、第一部から第三部に区切ると、聖書との対応が明らかになるそうです。
『古事記』 『聖書』
第一部 神々の誕生・国生み(高天原) 天地創造(エデンの園)
第二部 スサノオの神やらい~三諸山の大神託 エデンの園追放(創世記)~終末(黙示録)
第三部 古事記は続いていますが、 聖書は終わりです。
つまり、聖書の世界が、高天原から追放されたスサノオの世界であり、アマテラス(古事記を保有していた日本)は、その間、天の岩戸に隠れていた、という大枠です。
聖書文明圏の深層意識がノストラダムスの世紀末に類する喧伝を好んで行っていたのですが、古事記に連なる日本文明圏の深層意識を持つ人々は、いよいよ、日本文明が世界の表に出る時代であることを自覚していたのです。
【言辞の相】
大宇宙の波動(神)が発するものは、人間の心にイメージとなって現れます。このイメージを表出する道具が言葉なのです。著者は、大宇宙の波動を受け止め、心の中で考え、それを表出するシステム全体を “ 言辞 ” と表現しています。
この概念は、神道で言うところの “言霊” と言い換えてもいいように思えます。
【父性言語 vs 母性言語】
日本語をローマ字で表記した場合、a,i,u,e,o を母音、その他を子音としていますが、著者は、母韻、父韻、子韻という分類で記述しています。母音=母韻であり、父韻は、k,s,t,n,h,m,y,r,w で、母韻と父韻の組み合わせを子韻と定義しています。
著者は、この母韻と父韻の定義を基に、父性宗教と母性宗教の分類を行っています。
前者は父韻主導のヘブライ語であり、神は YHV の3つの父韻で表されます。唯一神・ヤハウェを意味しているのですが、日本語ではなんとも発音できません。
後者は母韻主導のサンスクリット語です。この言語体系で育まれたヒンズー仏教は、「あ」の音を最も尊重しています。サンスクリット語で五大(地・水・火・風・空)を意味する、キャ、カ、ラ、バ、ア は全て「あ」行の音です。また、日本にも瞑想の行法として伝わっている、阿字観(あじかん)にも見られます。「あ」という種字(しゅじ)を見つめて瞑想するのです。サンスクリット語では、言葉以前のイメージをそのまま形象化した種字を本来のものとして大切にしています。
著者は、日本語のマトリックスは縦系列であれ、横系列であれ音韻が語義に対応しており、音義対応の日本語マトリックスは人類文明史にその類例を見ないものである、と語っています。
【 星の文明 vs 月の文明 vs 太陽の文明 】
父韻と母韻を基に、文明、宗教、国旗の絵柄、古事記の神々を対比して記述すると、以下のようになります。
● 父韻主導 意思の原音 ヘブライ語 西欧文明 ユダヤ・キリスト教 星の文明 スサノウ
● 母韻主導 存在の基底音 サンスクリット語 東洋文明 仏教 月の文明 ツキヨミ
○ 両韻主導 共生宇宙原音 日本語 日本文明 神道 太陽の文明 アマテラス
・日本語は、母韻と父韻を完全に組み合わせたマトリックス構造をもっています。
・星の文明:イスラエルを基に、アメリカやロシア、それに十字を描く英国などの西欧諸国がこの分類になります。
・月の文明:インドを基に、トルコ、チュニジア、リビア、パキスタンなどです。インド以外のイスラム諸国の国旗には、三日月と星がデザインされています。星(西欧)と月(インド)の緩衝地帯ですね。
・星と月の文明は夜の文明で、太陽の文明である昼の文明と相補関係にあると考えることもできます。
【漢字を生み出したのは中国か?】
蒼頡という人物が、“六書” という漢字の造字法をまとめあげたという記事があるそうです。この記事に関して、国語学者は “結縄の文字” や “獣の足跡” などが元になって漢字が作られたと解釈してすましているそうです。しかし、これは、漢字の音と義の対応を全く考慮していない考え方であり、完全に間違っている、と著者は記述しています。
このような、浅薄な国語学者の解釈を成り立たせている根拠は、言葉が、宇宙の波動を受け取った人間の内発的な意匠によって生み出されたものである、とする視点の欠如によるように思います。
“言霊の幸はう国”、日本人の言語感覚からして、あまりにも当然なことが考慮できていない国語学者は、日本語の重要性を再考すべきではないでしょうか。漢字は中国が発明したという思い込みを覆すことは、権威にぶら下がった老齢なルイセンコ学者にはできないことのようです。英明な若手の日本学者に期待します。
《参照》 『あなたへ・・・そして あなたから』 サトヴィックミカエルクラブ編 知玄社
【日本語と中国語の違いを見よ】
日本語は、平仮名や片仮名はいうまでもなく、漢字に付与された読み(音)と意味(義)においてすらも、言霊に相性良く溶け込んでいます。著者の言葉で表現すれば、“言辞の相” に完全に溶け込んでいるのです。
漢字の本家といわれている中国では、毛沢東が、「ゆくゆくは表音文字であるローマ字にする」 という方針を打ち出し、「繁体字」から「簡体字」へと文字体系を崩して以来、“言辞の相” は完全に乱れてしまっているのです。
【日本語が世界の原型である】
上述したように、中国において文化の基層につらなる言語は破壊されつつあります。既に中国の若者は、繁体字は殆ど読めないそうですから破壊されてしまったと言ってしまっていいでしょう。
日本語はどうでしょうか。漢字においてすらも、日本語は、音韻・字義において、中国の漢字よりもその本質を保っている言語なのです。文化の基層である言葉が、既に破壊されている中国と、いまだ磐石である日本。この結果を導く理由、それは、「原日本語こそが漢字のルーツであった」 ということなのです。
今や、欧米からの外来語がカタカナとなって氾濫しています。この現象を、日本語文化崩壊の危機と考えている人々が多いようです。しかし、カタカナに変換されてしまった外来語は、既に日本語の言霊の中に取り込まれているのです。
漢字が、中国語より日本語の音義において、より相性が良くなているように、アルファベットですら、カタカナとして日本語に取り込まれた場合、それは日本語の中に回帰し取り込まれてしまうのです。
これらは、日本語が共生宇宙原音(言霊)としての、根源的な言語構造を持っているからなのです。
【太陽の文明は、夜の文明(星と月)に封印されていた・・・】
世界史的に見れば、欧米の父性(スサノオ)文明が、科学技術力・経済力・軍事力で世界を席巻し、地球を危機に追いやるように見えます。元々は、国旗に太陽を描いていた中国が、共産主義に転じて、本来の漢字すらも破壊し、星の文明に組していることが大きな難所のようです。
しかし、日本で神道系の神事に参加したことのある人々は、天岩戸開きや、カゴメから出てきた鳥に象徴されるものとして、太陽文明の復活を予感し理解しているに違いありません。本来のスサノオは、日本文明の中で正規の役割を担って復活しているようにも思います。
新たな日本文明は、神やらいでも失楽園でもなく、融和を促進する立場で、世界に貢献するのが使命です。
《参照》 オペラ 『魔笛』 モーツァル
<了>