
人生にやや惑う人なら、学生であれ、社会人であれ、すべての人々に共通する、考え方・社会の見方を、提示してくれるであろう、素晴らしい書籍でした。
著者の無理のない文体と表現力に負うところが大きいようです。それに、父親をなくした青年に向けて書かれた、父親の親友であり飲み友達であった著者からの手紙という、実際にあった状況が、読者の側の興味と咀嚼力をより一層高めてくれているようです。
【 「響き」 という言葉】
この本を読み終わって、一番印象に残った言葉が 「響き」 です。
本を閉じたとき、オレンジ色の横帯の裏側に、その 「響き」 という言葉の書かれていた周辺の文章がそのまま記述されていました。 「響き」 という言葉を、人生の中でこのように捉え表現しうることに、私は、いささかの驚きと共に感慨を持ったのです。
おそらく別の言葉で言い換えるならば 「つながり」 という表現になるのかもしれませんが、似て非なる表現です。受け取る側に浸透するものが、浸透する度合いが、違うのです。文字通り響きません。しかし、「感応同響」 という表現では行き過ぎです。この書籍が対象とする読者の世界からは逸脱してしまいます。
このような文脈の中で、私だったら 「響き」 という言葉は決して思いつかない言葉です。しかし、何故そうなのかが分りました。
【 「響き」 というお酒】
私はお酒を飲まないのですが、ウイスキー会社の最高級酒に 「響き」 という名前がつけらてられている理由が、なるほどよく分ったような気がします。アルコールを殆ど飲めない私でも、飲酒を愛好する著者の表現力によって、はからずもその世界の一端を理解することができたようです。
へミングウェイや村上春樹などの作家は、お酒の力を借りて、響き渡る感性世界を遊弋した後に、余韻を残したまま机上で執筆することがあったに違いないと思えてきました。
<了>
福田和也・著の読書記録