
チャンちゃんの中では「キチィーちゃん」のサンリオ、サンリオといえば「キティーちゃん」、それで完結していた。それ以外に「キタキツネ物語」や「ケロッピ」や「詩とメルヘン」などもサンリオの企画商品だったとは、ついぞ知らなかった。こんなことを正直に書くと「だからお兄ちゃんは遅れてる」と妹に言われるに決まっているから、先に書いておく。「うるせー」
【出色の日本企業】
物づくり大国・日本の中で、出色の企業・サンリオ。日本の高度成長期、日本と共に発展してきたこのアメニティー企業を抜かすことは出来ない。「友情と幸せを売る会社」、そんな企業コンセプトを抱き続けた、方言丸出しの辻社長の足跡を追ってみると学べることが多い。
【マーケティング】
子どもに人気のある動物3大キャラクター。犬、猫、熊。犬はアメリカ産のスヌーピー、熊はイギリス産のテディーベアーが既に存在している。残っているのは猫。キティーちゃんが日本で生まれたのは必然なのか。
ウォールト・ディズニーとサンリオ社長:辻信太郎。並べるとなんかヘンだけど、子どもに向ける愛情を持ち続けていた人としての共通項はありそうだ。
【ネーミング】
サンリオの由来について、辻社長の出身県から、“山梨の王” と言われるが本人は否定している。世界の文明はいずれも大きな河で生まれた。聖なる河、セント・リバー。これをスペイン語で言えば、サン・リオだそうだ。確かにサンリオが世界ブランドになっている現状からすれば、聖なる河が原意だったのであろう。オリンピック日本代表を目指して頑張っている柔道選手は、決して金メダルを取れないというから。
もう一個。ピューロ・ランドのピューロは、大道芸人が発祥のピエロと純粋を意味するピュアーを組み合わせた造語だそうだ。おそらく殆どの人々が知らずに使ってる。
サンリオについては、他に『これがサンリオの秘密です』と『社長大学』を読んだことはあったけれど、いずれも社長自身の著作だったからか、照れて隠していたのであろう。この本ほど経営者の理念に関する逸話が丁寧に書かれている本はない。
【経済的合理性か?愛の理念か?】
個人であれ会社であれ、実生活を営む上で、必ずしも同調しないと思われるこの問題に直面する。いや、本当は同調している。顕現するに位相(時間)差があるのだ。
出典は 『功過格』 であったかどうか、「積善の家に余慶あり、積不善の家に余殃あり」 は宗教的な思想として余りにも常識である。家を個人や会社や国家に置き換えても同じこと。創業から50年近いサンリオの航跡からすれば、善を積み続けてきた余慶としての繁栄であるに違いない。
・1969、米中南部、カンザスシティーのホールマーク社。辻社長はオイオイ泣いていたという。
辻社長が感動の余り、涙した言葉というのは
「・・・人間の幸せのために役立つことをしようというのが、私達の経営理念です。・・・・・」(p.92)
・1978、サンリオが1億円出資してプロデュースした長編記録映画 「愛のファミリー」 がオスカー
(アカデミー賞)を受賞。(p.14) 知らんかった。
・辻社長は 「お母さんに見せられないものは、絶対に作らず、売らず」 を社是としている。(p.58)
・評価の高かった文化事業部の月刊誌が黒字にならず休刊。「なぜやめたのか」 と三千通の抗議を受け、
「健全な赤字部門があってもいいじゃないか」 と再開。(p.63)
・膨大な赤字(50億円)を出してまでアメリカでアニメ製作に踏み切った動機を 「ディズニーの死後、彼の志を
継ぐ者が一人もいない。・・・いくら儲かるかというバンカー的発想なんですね。悔しいじゃないですか。
エロや暴力ばかりで、心を打つような映画のないのは」 (p.221)と。
【最後のまとめ】
愛の理念さえあれば良い、ということでもなさそうである。
「夜、机に向かって子供向けのメルヘン小説を書き、イチゴや動物の絵に「かわいい」と感動するこの男は、一方では冷酷なほど計数経済に智恵を働かせる。辻の中には二つの人間が住んでいる、と表現してもいい」 (p.228)
現実においても手抜かりはない。
<了>
《子ども文化を創造しているもう一つの会社 『ミキハウス』の読書記録 》
『惚れて通えば千里も一里』 木村皓一 ミキハウス