その日は少し曇っていたけど、ヤゴが海に行こうと言うので海パン一丁で海まで

出かけた。本当はヤゴの家に誘われたけど、ヤゴの姉ちゃんに会いたいような、

会いたくないような不思議な気持ちだったのでやめることにした。

 僕とヤゴは人のまばらな海で少し泳いだあと、いつものようにテトラポットの上に

座りフナムシ達をながめながら話をしていた。

 「ねぇ、夏休みの自由研究何にするか決めた?」

ヤゴは眼鏡をタオルで拭きながら僕にそう聞いた。

 「ううん、まだ何にも考えてないよ。」

 「僕ね、小説書くことにしたんだ。」

 「小説!すごいな、どんな話?」

 「えっ・・・・・。」

 「教えてよ。誰にも言わないからさ。」

 「本当に?」

 「ああ、言わないよ。絶対。」

 「じゃあ・・・・・・うんとねぇ・・・・イカの話。」

 「イカ?」

僕は笑うのをこらえながらヤゴの顔をじっと見た。

 「この前読んだ本に書いてあったんだけど、一億年後地球を支配してるのは

イカかもしれないんだって。」

 「イカが?ハッハッハッ・・・まさか。」

 「本当なんだって。そう書いてあったんだ。」

 「それで?」

 「だから、小説の内容は・・・・つまり人間はイカに支配されたくないから皆で

イカを食べちゃおうって話。」

 「ハッハッハッ・・・それでどうなるの?」

 「イカは人間に食べられないように、すごーくまずい味に進化するんだ。それで

人間がイカを食べなくなると、イカはどんどん大きくなって人間を食べちゃうよう

になって・・・・。」

 「で・・・・・?」

 「人間は絶滅して、最期はやっぱり地球はイカに支配されちゃうんだけど、人間

があんなに食べなきゃイカも進化しなかったし、人間も絶滅しなくてすんだのにっ

て話。」

 「・・・・・・何か怖い話だね。」

僕はヤゴの小説の話を聞いて、ちょっと気分が落ち込んでしまい、少しの間二人

とも無言になった。

 「あっ、そういえばカルは明日から林間学校行かないの?」

 「えー、いやだよ林間学校なんて。ヤゴは行くの?」

 「僕だっていやだけど、お母さんがPTAの役員やってるから行かないと怒られる

んだ。」

 「ふーん、僕は夏休みなのに早起きしておかしな歌を歌ったり、変な臭いのする

女の子と手をつないでフォークダンス踊ったりするのなんて絶対いやだよ。」

 「変な臭い?」

 「うん、いい匂いの女の子もいるけどね・・・・・・。」

僕はフナムシを棒切れでつつきながらヤゴに聞いてみた。

 「ねぇ、ヤゴの姉ちゃんも行くの?」

 「うん、来年は受験で行けないし、今年が最後だから行くって。」

 「ふーん、そうなんだ・・・・。」

 「なんで?」

 「いや、別に・・・・・。」

フナムシはみんな逃げてしまい、つつくものがなくなった僕は棒切れを海に投げ

捨てた。