父は軍人の家庭に産まれた。父の父、私の祖父は、まあまあ、偉い軍人さんで、馬が家に迎えに来たそうだ。
幼い頃「坊ちゃん」と父は呼ばれていた。
しかし戦争に負け、祖父は職を失った。
結核で死に絶えてしまった家で生活していたと聞いたことがある。そんな中、17歳歳の差の弟が産まれる。
お産婆さんを呼ぶことが出来ず、父と父の妹で取り上げたと聞く。何度聞いても、想像を絶する。イメージなどできない。父は勉強が出来たそうだ。高校はなんとか卒業したが大学進学への道は絶たれた。
父はいつも笑っている。
大きな声で笑い、愚痴などいう事はない。
大らかで、優しい印象は、昔から変わらない。
振り返ってみても怒られた事は数回。
手を上げられたことは、記憶にあるのは一度だけだ。
優しい人だと思っていた。
愛されていると感じていた。
母が亡くなるその時まで
何も疑わず、そう思っていた。
振り返ってみよう
愛を感じた出来事はあっただろうか??
父の勧めで入った生命保険は知らぬ間に解約されていた
母が父に預けた私の結婚資金は
いつの間にか、無くなっていた
父は何着もスーツを買い、何足もの靴を買い
ネクタイは山ほど
自分の衣装にお金をかける人だった
それでも
私はスーツで出勤する父の姿が好きだった
笑っているから
怒らないから
嫌なこと言わないから
スーツ姿が好きだから
だから・・だから・・
私は父の本当の姿を見つけられずにいたのか?
母は何度も私に言った
お父さんは けだもの
お父さんは 金の亡者
お父さんは 信用できない
私は笑顔に騙され
まさか そこまでと
母の言葉を聞き流した
母の葬儀
「俺は金がない」と笑顔で言った父
「貸してくれ」と笑顔で言った父
そして
母が懸命にためた 弟の障害年金は
父の手によって 底をついた
父は
私の常識の範囲を遥かに超えた まるでモンスターの様だ
あまりにも 想像を遥かに超えすぎて
全体像がまるで見えない
私は今まで何を見ていた?
人は都合の良いように解釈をする
人は自分に害のない人を良い人だと判断する
けれど モンスターはモンスターだ
母が亡くなって初めて 目のあたりにすることになる