1970年代の英国パンクシーンから登場し、
フェミニズムアートの先駆者 として高く評価されるリンダー・スターリング。
その日本初となる展覧会“LINDER: GODDESS OF THE MIND”が、
現在、銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて開催されています。
50年以上に及ぶキャリアの中で、
リンダーは数多くのアートワークを制作してきました。
その中で彼女の代名詞とされるのが、
イングランド出身の伝説的なパンクロックバンド、
Buzzcocksの1stシングル『Orgasm Addict』のジャケットです。
女性の裸体にアイロンと口を張り合わせる。
この斬新でインパクトの強いフォトモンタージュは、
のちにポスターやビルボードとなり、さらにはライトボックス作品となりました。
本展には、現在ではテートにも収蔵されているという、
そのライトボックス作品《It's the Buzz Cock!》も出展されています。
さらに本展には、彼女のもう一つの代表作《Pretty Girls》も出展されていました。
こちらは、1970年代の成人向け雑誌を素材に制作されたシリーズ。
シリーズ名にもなっている『Pretty Girls』というグラビア誌から、
女性像を切り抜き、その顔の部分に家電の切り抜きを張り合わせています。
性的なコンテンツとして消費される女性。
家事を担当する存在であると考えられていた女性。
そんな女性に対する2つのイメージをフォトモンタージュで表現しています。
それらの作品のように、成人向けグラビア誌やファッション誌など、
既存の画像を巧みに組み合わせて作品を制作しているリンダーですが。
時には、自分自身が被写体になることもあります。
本展のメインビジュアルに採用されている《She/She》は、その最初期の作。
自分の家の台所にあったラップや包帯、
雑誌の切り抜きなどで顔の一部を隠すリンダー。
その姿を友人の写真家に、ポートレートではなく、
まるで物撮りのように撮影するよう指示したのでした。
なお、写真と併せて並ぶ詩のようなものは、
彼女がフロントを務めたポストパンクバンドの楽曲の歌詞だそうです。
また、《She/She》を制作した2年後、
1983年に発表された《The Sculpting of the Self》には、
当時、ボディビルにハマっていたというリンダーの背中が映し出されています。
ちなみに。
2011年に制作された《The Rite of Spring》のモデルも、リンダーなのだそう。
全身に浴びているのは、食用着色料や蜂蜜、
カスタードやライスプティングといった液状の食べものとのこと。
発表当時は必要なかったとは思いますが、
コンプラが厳しい現代であれば、作品の一部に・・・・・
「※この後スタッフがおいしく頂きました」
というテロップを入れたほうがいいかもしれません。念のため。
さてさて、本展には旧作だけでなく、
リンダーの新作の数々も紹介されています。
それらの中で見逃せないのが、《The Male Muse》です。
リンダー曰く、「性的に表象された女性のイメージは、もう一生以上見てきた」とのこと。
そこで近年は特に、女性が受けてきた視線を、
男性に向けるフェーズにシフトしているそうです、
なお、この作品のモデルを務めているのは、ミゲル・アゼース。
イングランド出身のプロサッカー選手です。
なお、会場には、本展のために制作された最新作《Against Nature》も。
完成した作品の表面には見えないものの、
紙と紙を繋ぎ合わせ、作品を成立させる糊。
彼女は自身の作品を通じて、“糊”のように見えないながらも、
人と人や、人と社会を繋ぐ存在にも想いを馳せて欲しいと考えているそう。
フォトモンタージュやコラージュの作品は数多く観てきましたが、
言われてみれば、一度も糊を意識したことはありませんでした(汗)
縁の下の力持ち、ならぬ、フォトモンタージュの裏の糊。
これから鑑賞する際は、糊についても考えてみたいと思います。

















