「TOP MUSEUM」こと東京都写真美術館では、
約39000点にも及ぶコレクションを紹介する展覧会、
“TOPコレクション”が定期的に開催されています。
その最新作となるのが、現在開催中の“TOPコレクション 明日の食卓”。
『食』を切り口に、国内の14名の作家の作品を紹介するものです。
展覧会は全4章仕立て。
第1室は「あのとき、あの食卓で」と題し、
家族や自分自身の食卓の記憶をテーマに、
野口里佳さんや川内倫子さんの作品を紹介しています。
こちらの章の冒頭に展示されていたのは、
島尾伸三さんの「生活 1980-85」シリーズ。
妻と娘との何気ない日常生活が映し出されています。
自身を含む各家庭の冷蔵庫を客観的に撮影したシリーズです。
その最大の特徴は、扉を閉じた状態と、
全開になった状態と、2枚1組になっていること。
人様の家で実際に使われている冷蔵庫なので、
その内部の様子は、妙に生々しいものがありました。
まるで見てはいけないものを見てしまっているような。
ちょっとした背徳感すら覚える作品群でした。
なお、紹介されていた作品の中には・・・・・
猫が冷蔵庫の内部を覗いているものも(笑)。
これもまたリアリティです。
ちなみに。
島尾伸三さんと潮田登久子さんは、実の夫婦。
「生活 1980-85」シリーズに登場する妻は、潮田さんです。
(ついでに言えば、娘は漫画家のしまおまほさん)
展示室の中央には、そんな島尾家の私物の数々も展示されていました。
原さんは、1990年代より古いカメラを胸元に構え、
ノーファインダー(=ファインダーを一切覗かない)で、
目測でシャッターを切る独自のスタイルで撮影しているそう。
どこか焦点が定まっていないような、
不思議な浮遊感の正体はその撮影方法にあったのですね。
さてさて、続く第2室は「食と地域のあいだに」。
自身の写真を“光のスープ”に例えた、
奈良原一高の「ポケット東京」シリーズを皮切りに、
土地と食との結びつきが感じられる写真を紹介する章です。
この章では、第14回木村伊兵衛写真賞に輝いた
宮本隆司さんの「建築の黙示録」シリーズも展示されています。
「建築の黙示録」シリーズは、建築物の解体風景や廃墟を記録したもの。
浅草松竹映画劇場や根岸競馬場、九龍城砦など、
国内外の建築物の解体風景が撮影されていますが、
本展ではその中から、サッポロビール恵比寿工場が紹介されていました。
この工場が解体された地に誕生したのが、恵比寿ガーデンプレイス。
東京都写真美術館が開館する前のこの土地の光景が映し出されているのです。
第3室は、「環境のなかで」。
こちらでは、食を巡る問題について取り上げられています。
とりわけ印象的だったのは、「アニマル黙示録 イマドキの野生動物」シリーズ。
“自然界の報道写真家”宮崎学さんが、
週刊誌『FRIDAY』に連載していたフォトルポルタージュです。
新宿三丁目のネズミやニジマスの養殖場に侵入するツキノワグマなど、
人間が作り上げた文明社会の歪みの中で生きる野生動物の姿が映し出されています。
それらの中には、野生のサルを映したものも。
右側の写真につけられたタイトルは、
《缶コーヒーの残り香を楽しみながら散歩するニホンザル》とのこと。
昨年逝去された現代美術家・折元立身さんの代表的プロジェクト、
福島県やポルトガルなどの開催地の地元のおばあさんたちを招き、
食卓を囲む〈おばあさんのランチ〉シリーズが紹介されています。
『食』をテーマにした展覧会ということで、
美味しそうな食べものや料理の写真が多いのだろうと、
勝手に期待していましたが、意外とそうでもなく・・・
良くも悪くも、飯テロな展覧会ではありませんでした(笑)

余談ですが。
本展で個人的にもっとも気になったのは、
第1室の章解説にあったこんな文章でした。
日々の暮らしにおいて、「食」
例えば、家族や仲間、周囲のひとと過ごした何気ない時間、
おそらく担当の学芸員さんによるテキストと思われますが、
“くやしさや悲しさを抱えながら口にしたおにぎり”というフレーズが、
気になって気になって仕方がなかったです(笑)
一体、どんな過去があったのでしょうか。












