ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、京橋のアーティゾン美術館では、

モネの大規模展覧会が開催され、連日賑わっていますが。

新宿のSOMPO美術館では、そのモネの師に当たる、

19世紀フランスで活躍した風景画家ウジェーヌ・ブーダンの展覧会、

“ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求”が開催されています。

 

ブーダン展 SOMPO美術館 50周年記念
(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

ブーダンといえば、風刺画家として当時それなりに人気のあった若きモネに、

戸外で制作をすることを勧め、印象派誕生のきっかけを作った人物として知られています。

それだけに、モネの展覧会や印象派の展覧会で、

ブーダンの名前や作品を目にする機会は多いのですが。

あくまで師匠ポジションでさらっと紹介されるだけに留まり、

彼自身にスポットライトが当たる機会はほとんどありませんでした。

本展は、日本における実に30年ぶりとなるブーダンの回顧展です。

 

本展の監修を務めたのは、フランスの美術史家で、

ブーダン研究における第一人者の1人、ローラン・マヌーヴル。

彼の協力のもと、フランスの複数の美術館(一部チェコも)から、

油彩画や素描、パステルなど約100点の作品が来日しています。

本展ではそれらを年代順ではなく、さまざまな切り口で紹介。

ブーダンの魅力を多角的に再考する内容となっています。

 

まず紹介されていた切り口は、やっぱり海景画です。

といっても、一般的にイメージされる、

海水浴を楽しむ人々を描いた絵は一切ありません!

ブーダンの新たな魅力を伝えるべく、本展ではあえて、

彼の代名詞といえる作品群は展示していないのだそうです。

浜辺を描いた絵も一応あるにはありましたが・・・・・

 

ウジェーヌ・ブーダン作、海景と空の絵

ウジェーヌ・ブーダン《ドーヴィル》 1888年 油彩/カンヴァス

50×75.3cm ランス美術館 (inv.907.19.32)C. LE GOFF©

 

 

海水浴を楽しむ人々の姿はなく、閑散としていました。

なんとなく、サザンオールスターズのバラードが聴こえてきそうな感じです。

・・・・・と、それはさておきまして。

意外にも、ブーダンはその生涯で、

オランダの海景画家が描くような絵も多く残しています。

 

ブーダンの海景画、帆船と波

ウジェーヌ・ブーダン《ベルク、出航》 1890年 油彩/カンヴァス
79×110.2cm ランス美術館 (inv.907.19.34)C. DEVLEESCHAUWER©

 

ブーダンの展覧会、海景画4点展示

 

 

実は、ブーダンは水夫(船員)の父を持ち、

彼自身も若い時に船員として働いた経験がありました。

それゆえ、海景画が得意だったというのも一つの理由ですが。

ブーダン自身はこんな風に語っていたようです。

 

私は最終的に海景画家に落ち着いた。なんと奇妙なことか。

 そして、その原因は何だと思う?
 それは間違いなく、〔ヨハン・バルトルト・〕ヨンキントが目下の投機の対象であり、

 彼の絵には800から1,000フランが払われていること、

 商業的に彼の地位を維持するにはもっと手頃なものが必要であり、

 次善の策として私が選ばれた、ということなのだ」

 

つまり、当時、海景画で人気を博したオランダ人画家がおり、

その下位互換的なポジションとして、ブーダンが重宝された、ということ(笑)。

もちろん本人による自虐もあるのでしょうから、

実際には、ブーダンもそれなりにちゃんと人気はあったのでしょう。

 

 

「海景」に続いて紹介されていた切り口は、「空」です。

 

ウジェーヌ・ブーダン《ドーヴィル》、空と海辺
ウジェーヌ・ブーダン《空の習作》 1880年頃 油彩/板
27×21.5cm 個人蔵、ノルマンディー

 

 

ブーダンはこれまたオランダの画家たちに倣って、

画面の4分の3を空が占めるという大胆な構図を取り入れました。

空を正確に描くことに長けていたブーダンにとって、この構図はドハマり!

画家のカミーユ・コローは、ブーダンを「空の王者」と称賛しました。

また、詩人のボードレールはその“気象学的な美しさ”を絶賛しています。

 

image

 

 

さて、展覧会では他にも、「素描」や「人物」など、

計8つの切り口でブーダンの作品が紹介されていました。

 

ブーダン展の風景画と空の習作
ウジェーヌ・ブーダン展:3点の絵画展示

 

 

中でも印象に残っているのが、「動物」のコーナーです。

 

ブーダン作《ベルク、出航》牛の群れ

 

 

ブーダンが動物画を描いていたこと自体、意外な印象があります。

バルビゾン派の主要な支援者であった画商デュラン=リュエルは、

コンスタン・トロワイヨンの動物画の需要が高まっているのを受けて、

ブーダンにトロワイヨン風の動物画の制作をオファーしたそうです。

なるほど。ブーダンはヨンキントだけでなく、

トロワイヨンの次善の策としても選ばれていたのですね。

ところで、トロワイヨン風の牛の絵もありましたが、

出展作品の中には、トロワイヨンの画風とはほど遠い、

習作かあるいは、未完成のような牛の絵がありました。

 

ブーダン展風景画:牛と水辺の眺め

 

 

しかし、ブーダン的には、これが完成形とのこと。

刻々と変化する大気や雲の一瞬の姿、

まさに“瞬間の美学”を素早い筆致で描こうと試みたのです。

あまりにも器用で何でも描けてしまうゆえ、

ヨンキントやトロワイヨンといった他の画家風の、

いうなれば、ジェネリック的な絵を発注されがちなブーダンですが。

この素早い筆致で瞬間を描くスタイルは、彼のオリジナル。

しかも、印象派に先駆けて、このスタイルを確立していたわけです。

一般的にはマネやピサロが“印象派の父”とされていますが、

印象派にとっての“本当の父”は、ブーダンだったのですね!

本展を通じて、ブーダンの評価が高まるのは確実です。

星星

 

 

ちなみに。

ブーダンの絵が印象派に先駆けていたことを物語る作品は他にもありました。

それが、こちらの《オンフルール、聖カトリーヌ教会の鐘楼》です。

 

モネの絵画、街並みと教会の風景
 
 
よく見ると、左下にモネのサインがあります。
1点くらいは教え子のモネの作品が出展されているのかと思いきや。
なんでも、この絵はモネの死後、
息子のミシェルがアトリエで発見したものなのだそうです。
署名は無かったものの、ミシェルは父の作品だと判断し、
モネのサインのスタンプを押して、美術館に寄贈したのでした。
ところが、モネの専門家たちは、作風が一致しないと長らく疑念を抱い ていたのだそう。
そして、2013年になってようやく、真の作者がブーダンだと結論づけられたそうです。

ブーダンがモネ風なのではなく、モネがブーダン風だったのですね。

 

 

 ┃会期:2026年4月11日(土)~6月21日(日)

 ┃会場:SOMPO美術館

 ┃https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2025/eugeneboudin/

 

~読者の皆様へのプレゼント~
“ブーダン展”の無料鑑賞券を5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は4月28日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 

 

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