■インク色の欲を吐く(全3巻)
漫画:梅ノ木びの
出版社:KADOKAWA
発売日:2022/8/12(1巻)
ページ数:198ページ(1巻)
19世紀末のイギリス。
21歳の青年ビアズリーは小説家オスカー・ワイルドのもとを訪ねてこう言った。
「是非ボクの絵を『サロメ』に使って欲しいのです」
ワイルドは突然の申し出に驚いたが、
彼の大胆不敵な態度、妖しい魅力、
そしてたぐいまれなる才能に溺れていく。
同性愛疑惑、実姉との近親相姦などスキャンダラスな噂が飛び交う一方で、
肺病に苦しみながらも、ただひたすらに作品を描き、芸術にすべてを捧げた。
地位も名誉も手に入れたビアズリーが、死の直前に求めたものとは――。
(カドコミより)
「実在の芸術家を主人公をいくつも読んできましたが、
この『インク色の欲を吐く』は、頭一つ抜けて面白かったです!
まず何と言っても、第1話からガシッと掴まれました。
オスカー・ワイルドとの出逢いから、
ワイルドが同性愛の罪で逮捕されるまでが描かれているのですが、
そのストーリーテリングが実に鮮やか。
フィクションがかなり混じっているのですが、
というか、ほぼほぼフィクションなのでしょうが、その塩梅が絶妙で。
“いやいや、そんなわけだろ!”ではなく、
“むしろ史実がそうだったら面白い!”と思わせるものでした。
ネタバレしたくないので、グッと堪えますが、
第1話のラストに待つ意外な展開に、ぜひ皆様も驚いてください。
漫画では他にも、『イエロー・ブック』の編集主任からの追放や、
ビアズリーが好色小説 『ヴィーナスとタンホイザー』を執筆した顛末、
ホイッスラーとのいざこざと、のちに彼と和解するまでのエピソードが、
フィクションを絶妙に交えながら、描かれています。
ちょうどこの春に、三菱一号館美術館で観た、
ビアズリーの展覧会を思い出しながら読み進めました。
もしもタイムマシンがあるなら、ビアズリー展の開催前に戻って、
『インク色の欲を吐く』を読んだうえで展覧会を楽しみたいものです。
なお、ストーリーももちろん素晴らしいのですが、
それに輪をかけて素晴らしいのが、絵のクオリティ!
ビアズリーと比べても遜色ないくらいに、精緻で妖艶で耽美で。
純粋に、絵として美しいと感じるページが多々ありました。
この企画であまり絶賛した記憶がないのですが、
『インク色の欲を吐く』に関しては、たただた絶賛。
何も言うことはありません。
いや、強いて言うなら、全3巻でなく、もっと読みたかった!
展覧会でもそんな気持ちになりませんでしたが、
ビアズリーが25歳という若さで亡くなったことを、初めて惜しいと思いました。
せめて彼があと数年は長生きしてくれたら。
漫画の続きが読めたものを。
(星5つ)」
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