年間に数多くの公募展が開催されることから、
東京都美術館は、“公募展のふるさと”とも呼ばれています。
そんな東京都美術館で2017年より毎年開催されている展覧会シリーズが、
公募団体で活躍する作家を紹介する“上野アーティストプロジェクト”です。
9回目となる今年のテーマは、「刺繍」。
“刺繍―針がすくいだす世界”と題して、
針と糸で作品を制作する作家にスポットを当てています。

紹介されているのは、大正末から現在までの5名の作家です。
本展の冒頭を飾るのは、平野利太郎。
彼は、江戸時代より続く刺繍を家業とする家に生まれ、
日本刺繍の伝統的技法を踏まえつつ、革新的な表現に挑みました。
例えば、こちらはピーマンをモチーフとした作品。
まじまじと観ると、刺繍なのに、
ぬめぬめ感がちゃんと再現されていました。
しかも、そののっそりとした動きまで感じられます。
この父にして、この子あり。
日本刺繍の伝統は伊達ではありませんでした!
続いて紹介されていたのは、尾上雅野。
目に飛び込んできた瞬間、印象派の絵画かと思ってしまいました。
刺繍というと、一般的には精緻なイメージがありますが、
彼女の刺繍はそれとは違って、近づいてまじまじと見てみると・・・・・
3人目に紹介されていたのは、刺繍画家の岡田美佳さん。
生まれつき、人との対話を苦手とするという彼女は、
20代の頃に、安野光雅の『旅の絵本』との出逢いを機に、
刺繍画を制作するようになり、以来独学で400点を超える作品を制作してきました。
いつかどこかで目にした風景やモチーフを、
糸だけなく、ビーズや布、時には絵具も用いて再現している尾上さん。
その作品はどれも、温かみやまばゆさが感じられました。
この絵を観ていたら、無性にスコッチエッグが食べたくなりました。
さてさて、展覧会は後半戦へ。
4人目の作家は、伏木庸平さんです。
伏木さんは生活している時間すべてが、制作時間とのこと。
朝起きてすぐや、電車での移動中など、
手が空いた時に、使い古した布に糸を刺しているそうです。
そんな伏木さんの作品の中でもっとも巨大なのが、こちらの《オク》。
なんと、2011年頃から現在まで、
15年近くにわたって、糸が刺し続けられているそうです。
《オク》が完成することはないそうで、
時にはその一部が分裂(?)して、別の作品になることもあるのだとか。
サグラダファミリアの完成がいよいよ見えてきた今。
《オク》が新たな「未完の代名詞」になるかもしれません。
展覧会のラストを飾るのは、望月真理さん。
もともとは西洋の刺繍を学び、制作していたそうですが、
50代半ばでインドを旅した際に、カンタ(※)に出逢い、共鳴します。
(※インドのベンガル地方を中心に伝わる古い布を重ねて刺し子刺繍を施したもの)
冒頭に展示されていたのは、そんな望月さんが、
初めて作ったというカンタ、その名も《一番初めに作ったカンタ》です。
以来、彼女はカンタを制作し続け、日本にカンタを広める第一人者となりました。
ちなみに。
こちらの《象は森の王様》は、90代を超えた望月さんによるカンタ。




















