現在、SOMPO美術館では“モーリス・ユトリロ展”が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は一部撮影可。特別に許可を頂いております)
《ひまわり》を所蔵していることから、
ゴッホの美術館というイメージのあるSOMPO美術館。
あるいは、改名前は「東郷青児記念」とあったので、
東郷青児の美術館というイメージのあるSOMPO美術館。
しかし意外にも、今回を含めて過去に3度も、
SOMPO美術館では、ユトリロの展覧会が開催されているそうです。
実はSOMPO美術館は、ユトリロの美術館でもあったのですね。
さて、10年ぶり3度目となる今回のユトリロ展では、
フランスのポンピドゥー・センターの全面協力のもと、
初期作品から晩年の作品まで、約70点が紹介されています。
展覧会は全3章仕立て。
それぞれが、ユトリロの3つの時代に対応していました。
まず第1章は、「モンマニー時代」です。
ユトリロの母シュザンヌ・ヴァラドンは、
ルノワールやロートレックのモデルを務めながら、
自身も画家として活動した自由奔放な女性でした。
忙しさゆえに、息子にかまけている時間が少なく。
その寂しさから、ユトリロは8歳にしてワインに溺れるようになりました。
(注:よい子の皆はマネしないでね)
毎日1リットルは飲む酒びたりな生活から、
リットル+ユトリロで、「リトリロ」と呼ばれるように。
21歳でとうとうアル中の診断を受け入院生活を余儀なくされます。
その退院後、医師に薦められたのが、絵画でした。
ユトリロはその薦めに従って、絵を描くように。
母が住んでいたパリ近郊の小さな町モンマニーと、
モンマルトルとを行き来しながら、多くの風景画を描きました。
「モンマニー時代」は、ピサロやシスレーといった、
印象派の画家の影響を受けた絵を描いていたユトリロですが、
20代後半になると、白い壁のあるパリの街並みを好んで描くようになります。
これが俗にいう、「白の時代」。
第2章では、ユトリロの代名詞と言えるこの時代にフォーカスが当てられています。
某タレントが「白って200色あんねん」と言っていましたが、
ユトリロの白は、もしかしたらそれ以上にあるかもしれません。
一口に「白」と言っても、作品によって絶妙にニュアンスが異なっていました。
また、単純に色味だけでなく、そのマチエールも多種多様。
というのも、ユトリロは白の絵具に、
石膏や鳥のフン、砂といったものを混ぜていたそうです。
近づいて観てみると、独特のざらつきが感じられました。
彼の「白の時代」の絵を観る機会は何度もありましたが、
今回改めて、まとまった数の作品を観て何より実感したのは、
ユトリロはとにかく、壁を描くのが好きだったのでしょうね。
もはや執拗さすら感じるレベルでした。
普通に真正面から描くだけでは飽き足らず。
あえて道の遠近感を強調することで、
両サイドの壁をできるだけ描こうとしていたのでは?
そう勘ぐってしまうほどに、壁推し(?)していました。
中でもとりわけユトリロの強烈な壁愛を感じたのが、
《ベル・ガブリエルの酒場、サン・ヴァン サン通り、モンマルトル》です。
絵の主役は間違いなく酒場でなく、突き当りにある壁。
この壁を描きたくて描きたくてしょうがない。
そんな強い意志のようなものが、ひしひしと伝わってきました。
ちなみに。
ユトリロが壁と同じくらいに偏愛していたのが、ラパン・アジル。
パリのモンマルトルにある伝説的なキャバレーです。
ユトリロはこのラパン・アジルを生涯で約300点も描いたそう。
本展ではそのごく一部が紹介されていました。
前を見ても、ラパン・アジル。
後ろを見ても、ラパン・アジル。
一生分のラパン・アジルを摂取した気がします(←?)。
さてさて、本展のラスト第3章では、
ユトリロの晩年となる「色彩の時代」が紹介されています。
冷静に考えたら、「色彩の時代」って、
一般的な画家なら、一生涯「色彩の時代」である気がしますが。
ユトリロに関しては、「白の時代」を経てからの「色彩の時代」。
確かに、急にキャラ変したのかと思うくらいに、色彩が明るくなっていました。
この時代の作品は、この時代の作品で良さはありますが。
個人的にはやはり、「白の時代」のほうに惹かれました。
あの唯一無二なメランコリックな作風と比べると、
「色彩の時代」の作品にはそこまで深みが感じられないと言いますか。
いかにもな風景画といった印象でした。
壁を熱心に描いていたあの頃のユトリロが懐かしいです。
もしかしたら、本展の学芸員さんも秘かにそう思っていたのでしょうか。
「色彩の時代」に描かれたこちらの絵は・・・・・
白い壁一面にポツンと飾られていました。
ユトリロインスパイア系の展示スタイルです。
┃会期:2025年9月20日(土)~12月14日(日)
┃会場:SOMPO美術館
┃https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/mauriceutrillo/

















