2025年の秋、大本命の展覧会の一つ、
東京国立博物館の本館特別5室にて絶賛開催中です。
興福寺の創建者・藤原不比等の1周忌にあたる721年に、
元明天皇と元正天皇が長屋王に命じて建てさせたのが、北円堂。
法隆寺にある夢殿を差し置いて(←?)、
“日本に現存する八角円堂のうち最も美しい”とも賞賛される建造物です。
1049年の火災で一度目の焼失、1180年の南都焼討で二度目の焼失。
現存しているのは、1210年頃に再建されたものです。
その再建の際に、運慶一門によって9軀が造仏され、内陣に安置されました。
中でも、本尊の弥勒如来坐像と無著・世親菩薩立像は、
どれも国宝に指定されており、かつ運慶晩年の傑作とされています。
そんな弥勒如来坐像は、昨年2024年に約9か月にわたる修理を終えたばかり。
本体のお顔や背面など傷んでいた部分が美しさを取り戻しました。
国宝 弥勒如来坐像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影:佐々木香輔
本展の目玉は何と言っても、その修理仕立てホヤホヤの弥勒如来坐像!
寺外で公開されるのは、なんと実に約60年ぶりとのことです。
国宝《弥勒如来坐像》(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 会場風景
過去に一度、興福寺北円堂を訪れた際に、
安置されていた弥勒如来坐像を拝見しているのですが。
修理のおかげもあるのでしょうか、
オーラというか存在感というか風格が、
より増している印象を受けました。
とりわけ印象的だったのが、ポージング。
真横から観ると、微妙に重心が後ろに傾いているのが見て取れます。
その絶妙な角度によって、弥勒如来坐像が、
リラックスしつつも、どっしりと構えているように感じられました。
さらに本展では、無著・世親菩薩立像も北円堂から上京中。
弥勒如来坐像の背後にピッタリと控えています。
(左から)すべて国宝 運慶《世親菩薩立像》、《弥勒如来坐像》、《無著菩薩立像》 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 会場風景
2軀そのものの造形もさることながら、
とりわけ感銘を受けたのが、その配置です。
前に出すぎず、かといって後ろすぎず。
“ここしかないだろう”と思わせる絶妙な位置に置かれていました。
それにより、「しごでき感」が増していた気がします。
(右から)すべて国宝 運慶《世親菩薩立像》、《弥勒如来坐像》、《無著菩薩立像》 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 会場風景
さてさて、本展ではこれらの3軀が、
北円堂の内部を再現した空間で展示されていました。
(左から)すべて国宝 運慶《世親菩薩立像》、《弥勒如来坐像》、《無著菩薩立像》 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 会場風景
その3軀の周囲には四天王立像が配置されていましたが、
キャプションを見ると、どうやら北円堂の四天王立像ではなさそうです。
同じ興福寺が所蔵する国宝の四天王立像ですが、
北円堂ではなく、普段は中金堂に安置されているものでした。
国宝《四天王立像(増長天)》 鎌倉時代・13世紀 奈良・興福寺蔵 中金堂安置 会場風景
実は、現在北円堂にある四天王立像は、
奈良時代末期に造仏されたもので、運慶一派の作ではありません。
北円堂再建の際に運慶らが造仏した四天王像は、
長い間失われたものとされてきましたが、近年の研究により、
「中金堂の四天王立像がこれにあたるという説」が急浮上しているそう!
その見解をもとに、興福寺北円堂の再現を試みたのが今回の展覧会です。
もしかしたら、これが鎌倉復興当時の光景だった・・・・・のかもしれません。
興福寺北円堂は普段は非公開ですが、
基本的に毎年春と秋に、特別公開の期間があります。
(注:今年の秋は本展開催のため、興福寺での特別公開は無し)
だったら、実際に興福寺北円堂で観ればいいじゃん。
そのように思った方もいらっしゃるかもしれませんが、
再建当時の光景(かもしれない)が観られるのは本展だけ。
そういう意味では、仏像ファン必見の展覧会といえましょう。
再建当時の興福寺北円堂の内陣を再現する。
それに全振りした展覧会なので、他に余計な演出は一切ありません。
展示される仏像は北円堂の3軀と中金堂の4軀、併せて計7軀のみ。
これをシンプルで潔いと見るか、少々物足りないと見るか。
好みによって意見が分かれそうです。


ちなみに。
もし、少々物足りなく感じてしまった方は、
同じ東京国立博物館の本館1階にある11室へ。
こちらでは、東博が所蔵するさまざまな仏像が展示されています。
《毘沙門天立像》 平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
《広目天(四天王立像のうち)》 平安時代・12世紀 京都・浄瑠璃寺蔵
※上記作品は9月28日(日)に展示が終了しています。
中でも注目は、展示室入り口で待ち構える一対の金剛力士立像です。
《金剛力士立像》 平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
平安時代の作で、その高さは約3メートル。
かつては滋賀県の蓮台寺(現在は廃寺)の門に安置されていたそうです。
しかし、1934年の室戸台風によって門ごと大破したのを機に、
京都の美術院に引き取られ、修理を繰り返し行われ、今の姿となりました。
2022年に東博に購入されたものの、あまりの大きさのため、
収蔵庫に収められていましたが、この春より常設展示されています。
そんな金剛力士像の後ろ姿は、こんな感じ↓
運慶一派の筋骨隆々な四天王像の後に観ると、
筋肉質ではありますが、ちょっとプニッとしているような。
もう少し絞っても良いような気がします(←?)。
┃会期:2025年9月9日(火)~11月30日(日)
┃会場:東京国立博物館 本館特別5室
┃https://tsumugu.yomiuri.co.jp/unkei2025/











