今年の11月3日に、開館30周年を迎える千葉市美術館。
それを記念して、今年は1年を通じて、
コレクションを中心にした特別な展覧会が続々開催される予定です。
そのトップバッターを飾るのが現在開催中の展覧会、
大河ドラマ『べらぼう』の主人公・蔦屋重三郎にスポットを当てた展覧会です。
蔦重が主役の展覧会ではありますが、
本展は『「浮世をえがいた絵」のはじまり』からスタート。
まだ1枚1枚手彩色されていた初期の浮世絵から、
多色摺りが可能となりカラフルで華やかになった錦絵の誕生まで。
蔦重が活躍する以前の浮世絵の歴史が、プロローグとして紹介されています。
ちなみに。
その冒頭に展示されていたのは、
菱川師宣による《衝立のかげ》という1枚です。
菱川師宣といえば、“千葉が生んだ浮世絵の祖”。
浮世絵=江戸(東京)の文化と思われがちですが(←?)。
実は、その起源は千葉にあり!
あえて菱川師宣の作品から本展を始めていることに、
そんな千葉市美術館の静かな主張のようなものを感じました。
さてさて、本展のメインとなる蔦重パートでは、
蔦重や彼と関係が深い人物たちの書籍の数々が紹介されています。
加えて、蔦重が生まれ育った江戸唯一の幕府公認の遊廓、
吉原を題材にした浮世絵や絵画も数多く紹介されていました。
また、本展では、蔦重のプロデュースにより、
一躍人気絵師となった喜多川歌麿の作品も大充実!
浮世絵はもちろん貴重な肉筆画も一挙大公開されています。
中でもとりわけ見逃せないのが、特別出品の《祭りのあと》です。
パリの宝石商で著名な浮世絵コレクターであった、
アンリ・ヴェヴェールの旧蔵品で、現在は個人蔵の作品。
公開されるのは、なんと本展が初めてとのことです。
他の主要な歌麿の肉筆画と違って、
まるで漫画(劇画?)のようなタッチで、
さらさらっと描かれているのが印象的でした。
ビックコミックスピリッツの巻末に掲載されていそうな感じです。
また、意外だったのが、女性がそこまで美人に描かれていなかったこと。
歌麿といえば、美人画。
それも、艶のある美人を描くイメージが強かったのですが。
《祭りのあと》の女性は・・・なんというか・・・まぁ素朴な顔立ちでした。
もちろん、展覧会を全体的に観れば、
これぞ歌麿というような美人画が多かったですが。
実は、《祭りのあと》以外にも、
歌麿による素朴な顔立ちの美人画がありました。
その一つが、こちらの《楼上二美人》です。
美人の価値観は人や時代によってさまざまだとは思いますが、
どちらも、うっすらとジャルジャルの後藤さんに似ている気がしました。
それからもう一点インパクトのあった、
歌麿の美人画が、こちらの《菊もとお半》です。
眉毛、太っ!!
一昔前の井上咲楽を彷彿とさせるものがありました。
さてさて、蔦重がプロデュースしたといえば、
謎多き浮世絵師・東洲斎写楽を忘れてはいけません。
歌麿の作品の充実ぶりとは対照的に、
意外にも千葉市美術館のコレクションには、
写楽の作品はほとんど含まれていないのだそう。
それもあって、本展に華を添えるべく、
こちらの《市川鰕蔵の竹村定之進》が特別出品されていました。
何よりも気になるのは、浮世絵の隣に展示されたブツ。
子どものような字で、「東洲斎写楽」などと書かれています。
実はこちらの写楽の浮世絵は、
いけばな草月流の創始者・勅使河原蒼風の愛蔵品。
隣に飾られていたのは、彼の直筆による包みとのことです。
自分でわざわざ包みを作るなんて、よっぽど大事にしていたのでしょうね。
ちなみに。
浮世絵界に革新を起こした蔦重ですが、
脚気により、49歳という若さでこの世を去ります。
しかし、その死後、蔦重の遺志を引き継いだ者たちによって、
北斎や広重、英泉ら次世代のスター浮世絵師が誕生しました。
極東の市井の文化に過ぎなかった浮世絵は、
やがて彼らによって、世界の「Ukiyo-e」となったのです。
それはまさに、奇跡としか言いようがありません。
蔦重を軸にして、そんな浮世絵の奇跡の軌跡が辿れる展覧会です。



















