現在アーティゾン美術館では“硲伊之助展”と併せて、
“ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ”が同時開催されています。
スイス生まれのゾフィー・トイバー=アルプ(1889~1943)と、
その夫でダダイズムの創始者の一人とされるジャン・アルプ(1886~1966)。
そんな20世紀前半を代表するアーティスト・カップルにスポットを当てた展覧会です。
ドイツとフランスのアルプ財団を中心に約90点が集結しています。
有機的なフォルムの彫刻やレリーフで知られるジャン・アルプ。
彼を紹介する展覧会は、これまで日本で何度も開催されています。
一方、その妻であるゾフィーの展覧会は、
僕が知る限り、日本で開催されたことがないような・・・。
というか、そもそも作品が紹介されること自体も無いような・・・。
正直に言って、本展を通じて初めてその名を知りました。
ただ、日本でこそ知名度格差のあるアルプ夫妻ですが、
ゾフィーは、母国のスイスでは国民的画家の一人に数えられているようで、
スイスフランの紙幣のデザインに採用されていたこともあるようです。
なお、2021年にはMoMAで回顧展が開催され、
国際的にゾフィーの再評価が高まっているとのこと。
本展を機に日本でもゾフィーへの注目が集まるのは必至です。
実際、ゾフィーの作品を目にして、
率直に感じたのは“ジャンよりいいじゃん!”でした。
(※個人の感想です)
右がジャンで、左がゾフィー。
有機的で感覚的な印象のジャンに対し、
ゾフィーは幾何学的で理知的な印象を受けます。
ジャンのほうが女性っぽく、ゾフィーのほうが男性っぽい作風ゆえ、
「これってもしかして、入れ替わってるー!?」と思ってしまったほどでした。
さて、個人的に惹かれたゾフィーの作品は多々ありましたが。
それらの中でも特に印象に残っているのが、こちらです↓
一見すると、モンドリアンの抽象画のようですが、
その正体は、ある邸宅のステンドグラス・パネルのデザインとのこと。
今から100年近く前のデザインとは思えない斬新さ。
時代を先取りしていたセンスの持ち主です。
そんなゾフィーのセンスは、
ビーズ編みの手帳カバーでも発揮されていました。
この当時、「ビーズ編み=家庭での営み=女性的な仕事」とみなされていたそう。
しかし、ゾフィーの手による手帳カバーは、そういったレベルを軽々と超越。
額装されてもまったく違和感のない美術品、工芸品に昇華していました。
これまでダダイスムを代表するアーティストや詩人というと、
デュシャンやマン・レイ、ジャン・アルプ、ブルトンの名が挙げられていましたが、
これからはきっと、そこにゾフィーの名が加わるはずでしょう。
と、ふと思いついてしまったのですが、
そういえば、ウルトラマンに登場する宇宙人や怪獣には、
ダダやブルトンと、ダダイスムに由来するものがいます。
もしかしたら、ウルトラマンの兄ゾフィーは、
ゾフィー・トイバー=アルプに由来しているのかも。
まぁ、それはさておきまして。
昨日紹介した硲伊之助に続いて、本展を通じて、
ゾフィー・トイバー=アルプの人気が高まることでしょう。
これほど良質な展覧会を同時開催してしまうだなんて。
出し惜しみをしないアーティゾン美術館に、
王者の貫禄(?)のようなものを感じました。


ちなみに。
初めて知ったゾフィーの存在に衝撃を受けすぎて、
ジャン・アルプの紹介をほぼないがしろにしてしまいましたが。
彼の作品ももちろん良かったですよ。
特にグッと来たのは、こちらの作品です↓
就寝中の不慮の事故により、53歳でこの世を去ったゾフィー。
ジャンはそのショックから、死後4年近く、
通常の創作活動を中断し、ゾフィーのために作品や詩を制作、
さらには、ゾフィーのカタログ・レゾネ作りに励みました。
その後、再び制作に戻ってから作られたのが、これらの作品群です。
上に展示されているのは、ゾフィーが亡くなる直前に描いたドローイング。
下に展示されているのは、それらに基づいたジャンのレリーフ作品です。
亡き妻との共作。
なんともロマンティックな作品です。








