舟越桂 森へ行く日 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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箱根を代表する美術館の一つ、彫刻の森美術館が、

今年2024年に、めでたく開館55周年を迎えることとなりました。

それを記念して、美術館の人気スポット・足湯が、

名前も新たに、「森の足湯」としてリニューアルオープン。

 

 

 

足湯の浴槽として使われているのは、

「ニューインペリアルレッド」やら「セルぺジャンテベージュ」やら、

一昔前のケータイのカラバリエーションみたいな名前が付いた原石の数々。

それら国内外から厳選した15種類の原石でできた足湯に浸かることで、

彫刻の代表的な素材の一つである石の迫力や魅力を、足や目で実感できることでしょう。

 

 

 

なお、足湯はいわゆる“インフィニティ風呂(※)”スタイル。

(※浴槽の縁が見えず、自然の景色や海と一体となったようなお風呂)

 

 

 

これからは、こちらの「森の足湯」も、

《幸せよぶシンフォニー彫刻》と並ぶ映えスポットとなることでしょう。

 

 

さて、現在、美術館ではさらに開館55周年記念として、

本館ギャラリーを使って、“舟越桂 森へ行く日”が開催中。

今年3月にご逝去された、日本を代表する彫刻家・舟越桂さんの個展です。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

展覧会は全部で4つの部屋で構成されています。

まず最初の展示室では、舟越さんのアトリエを再現。

 

 

 

彫刻作品やドローイング、制作道具、

そして、舟越さんの私物や落書き(?)もあって、

まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのような、ワクワク感を覚えました。

アトリエ内には気になるものはたくさんありましたが、

特に気になったのが、床にさりげなく置かれた注意書き。

 

 

 

そこには、こう書かれていました。

 

くまんばち」がいても、おどろかないで下さい。

飼っています。刺しませんから・・・・。   舟越

 

くまんばちそのものではなく、

くまんばちを飼っていたという事実に驚きました。

 

また、再現されたアトリエの裏手には、

「立てかけ風景画」と名付けられたシリーズが展示されています。

 

 

 

これらは、昨年から今年にかけて闘病中だった舟越さんが、

病床の窓から見えた雲を機に描き始めたドローイングのシリーズです。

ティッシュの箱を切ったものに、ドローイングを描き、

病院食で提供されたヨーグルトの空き箱を台座替わりにしています。

病床でも創作意欲が湧き出ていたのですね。

 

続いての展示室では、「人間とは何か」がテーマ。

舟越さんはある時、山と対峙した際に、

山が自身の中に入ってくる感覚を味わったそうで。

その体験をもとに制作されたのが、こちらの《山と水の間に》という作品です。

 

左)《立ちのぼる顔》 1993年 紙に水彩、インク、墨、修正液 作家蔵

右)《山と水の間に》 1998年 楠に彩色、大理石 個人蔵

 

 

一見すると、これまでの舟越作品と差異はないようですが。

彫刻の左肩にご注目ください。

そこに山があるから。

 

 

本展のメインとなるのは、2階の展示空間。

こちらでは、 「異形化」のターニングポイントになった作品や、

「スフィンクス」シリーズの作品、本展のメインビジュアルの作品など、

2000年以降に制作された主な作品がドローイングとともに一同に会しています。

 

中央)《水に映る月蝕》 2003年 楠に彩色、大理石 作家蔵

 

中央)《遠い手のスフィンクス》 2006年 楠に彩色、大理石、革、鉄 高橋龍太郎コレクション蔵

 

 

それらの中には、2021年に制作された《青い体を船がゆく》も。

 

左)《青い体を船がゆく》 2021年 楠に彩色、大理石 西村画像蔵

 

 

こちらの展示で何よりも印象的だったのは、

彫刻同士の目線が一切あっていなかったこと。

 

 

 

それぞれが思い思いの方向を向いています。

しかし、だからといって、

お互いが無視し合っているような、

殺伐とした印象、ギスギスした印象ではなく。

あえて見つめていないだけで、

お互いがお互いを尊重し合っているような、

そんな不思議な信頼感(?)、関係性が感じられました。

 

改めて舟越さんの作品を観て、

感じたこと、思ったことは他にもたくさんあったのですが。

それを一つ一つ言葉にするのが、野暮に思えるくらいに、

どの彫刻作品も、人智を超越したもののように感じられました。

もはや彫刻作品というよりも、仏像と向き合っている感覚に近かったです。

星星

 

 

さてさて、最後の展示室では、一転して(?)楽しいムードに。

こちらでは、舟越さんが家族のために制作したおもちゃや、

舟越さんが制作した絵本に関する品などが展示されています。

 

手前)《立ったまま寝ないの!ピノッキオ!!︎》  2007年 楠に彩色、雑木、バネ 作家蔵

 

 

なお、こちらの展示室は、かつては館長室だったそう。

普段は公開されていないプライベートな空間で、

舟越さんのプライベートな一面が垣間見られますよ。

 

 

ちなみに。

本館ギャラリーに向かいにあるアートホールでは、

関連企画として“名作コレクション+舟越桂選”が開催されています。

彫刻の森美術館コレクションから選りすぐられた名作の数々と、

 

 

 

舟越さんとゆかりのある現代作家5人の作品を紹介するものです。

 

三沢厚彦《Animals 2023-01》 楠、油彩

 

左)保井智貴《untitled》 漆、麻布、螺鈿、岩絵具、黒曜石、大理石、etc.

右)保井智貴《untitled》 漆、麻布、螺鈿、岩絵具、膠、スペクトライト、大理石、鉄、etc.

 

 

中でも見逃せないのが、舟越さんと三沢厚彦さん、

杉戸洋さん、小林正人さんの4人が共同制作したこちらの作品。

その名も、《オカピのいる場所》です。

 

 

 

共同制作とのことで、具体的には、

誰がどの部分を制作したかは公表されていないそうですが。

 

 

 

間違いなく顔を描いたのは、舟越さんでしょう。

個性がダダ洩れしていました。

 

 

 

 

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