先日、トークショーのお仕事で、
箱根・芦ノ湖のすぐそばにある成川美術館に行ってきました。
(↑この日は残念ながら雲に隠れて、富士山の姿は観られず。。。)
現在、成川美術館の一室では、
約4000点を誇る現代日本画コレクションの中から、
選りすぐりの名品の数々を紹介する収蔵展が開催中。
平山郁夫、加山又造、杉山寧ら、
日本画界のビッグネームたちが勢ぞろい。
それらの出展作品の中には、東山魁夷による《泉》という作品も。
東山魁夷は、国民的風景画家として、
日本各地の風景を描き続けていた印象がありますが、
実は、若い頃に2年ほど、憧れの地であったドイツに留学しています。
本作は、魁夷が60歳を過ぎた頃に描かれたもの。
皇居新宮殿のための壁画《夜明けの潮》や、
川端康成の勧めによって取り組んだ「京洛四季」シリーズなど、
国内での大仕事にひと段落が着いたため、ドイツへ再訪したそうで。
30数年ぶりのドイツで、初心を取り戻して描いたうちの1枚が、この《泉》なのです。
また、成川美術館のもう1つの展示室では、
“四田淳三・湯口絵美子 父娘展-雪と薔薇-”が同時開催中。
こちらは、約30年にわたって雪の塔の風景を描き続けた四田淳三と、
その長女で、自らもバラを育て、バラを中心に描く湯口絵美子さんの2人展です。
さらに、成川美術館では現在、
“齋正機展 里山、そして鉄道物語”も開催中。
福島県出身の人気日本画家・齋正機さんの最新個展です。
なんと齋さんの個展が成川美術館で開催されるのは、1年ぶり5度目とのこと。
もはや甲子園の常連校みたいな感じになっています。
なお、5度目となる個展だけあって、
今回は展示室を2つ使ってのスペシャル仕様。
一方の展示室では、齋さんの代名詞ともいうべき、
「鉄道のある風景」を描いた作品で構成されています。
中でも注目したいのは、箱根登山鉄道を描いた新作群。
実はこれまで齋さんは、箱根登山鉄道をモチーフにしたことがなかったそうで。
成川美術館オーナーたっての希望もあり、
本展のために、改めて箱根登山鉄道を取材し、
「箱根登山鉄道のある風景」を数点描いたそうです。
それら新作の中で個人的にイチオシは、
箱根登山鉄道と親会社が一緒である箱根海賊船をモチーフにした作品。
その名も、《ソーダ水ノ中ヲ海賊船ガ通ル》です。
モチーフとなるのは、成川美術館のカフェから見える芦ノ湖の光景。
ユーミンのヒット曲『海を見ていた午後』の歌詞、
「♪ソーダ水の中を 貨物船がとおる」のフレーズのように、
ソーダ水の中を箱根海賊船が通ったとしたら、という想像で描かれたものです。
なお、あくまで齋さんの想像の産物なので、
成川美術館のカフェでは、ソーダ水は提供されていないとのこと。
あと、テーブルにあるチーズケーキも、現在は提供されていないそうです。
あしからず。
そして、もう一方の展示室で紹介されていたのは、
齋さんの故郷である福島の光景を描いた作品の数々です。
齋さんのライフワークの一つに、東邦銀行のカレンダーがあります。
毎年、福島県内のスポットをモチーフにした絵を描き下ろしているそうです。
実は、成川美術館は基本的に、
他から作品を借用することはないそうなのですが。
本展では、これまでカレンダーに採用された原画が、
東邦銀行からまとまった形で特別に出展されています。
普段は本店の役員室や会議室に飾ってあるとのこと。
それらをまとめて目にすることができる貴重な機会です。
中でもとりわけ必見なのが、構想期間2年制作期間1年、
縦1.8m×横6mの大作《ふくしま物語~桃源郷59の願い~》。
桃源郷をテーマに、復興の願いを込めて制作された作品で、
海の間を走り抜ける常磐線と、その上空を舞うカモメたちが描かれています。
また、画面の下半分を占めるのは、59の桜。
何を隠そう、これらの桜はすべて、福島県の59市町村の形をしているのだとか。
例えば、一番上の左から2番目の桜は、
諸橋近代美術館のある北塩原村の形をしています。
なお、桜といえば、成川美術館所蔵の、
《夜ノ森ノ桜 ~WONDERFUL WORLD~》も出展されていました。
描かれているのは、富岡町の夜の森の桜並木。
夜の森は、福島でも有数の桜の名所として知られているそうですが、
東京電力福島第1原発事故により、長い間、帰還困難区域となっていたそう。
しかし、2022年にようやく規制が緩和され、
12年ぶりに、自由に花見が楽しめるようになりました。
その時の様子を丹念に取材して描かれたのが、こちらの1枚。
よく見ると、画面内に楽しそうな人がたくさんいました。
表情は描かれていませんが、
この日を待ちわびていたであろう、
人々の喜びが、ひしひしと伝わってくるようでした。


ちなみに。
前回訪れた際には気づかなかったのですが、
成川美術館には芦ノ湖が眺められるちょっと庭園もあるようです。
その庭園の一角には、七面鳥がいました。
そして、こちらにも“サイ”さんがいました。

















