● “mite!見て!” あなたと話して、アートに近づく | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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姉妹・その他
 

 

今回は、千葉県佐倉市にある川村記念美術館にやってまいりました。
実は、この川村記念美術館、今年の7月2日から来年2008年の3月中旬にリニューアルオープンされるまで、

長い長いお休みとなるそうです。
その期間中、常設コレクションは兵庫・島根・愛知へと巡回するそうですので、

西日本にお住まいの皆様は、どうぞ楽しみにお待ちください。

 


さて、休館前最後の美術展となるのが、

今回ご紹介する 「“mite!見て!” あなたと話して、アートに近づく」
これは、今までご紹介してきたどの美術展よりも、

この“とに~の美術展へ行こう!”シリーズにピッタリの美術展です。

 

この美術展は、川村記念美術館のコレクションの中から厳選された13作品が展示されています。
しかし、普通の美術展のように、何かのテーマにそって展示されているわけではありません。

時代もバラバラなら、モチーフもバラバラ。

絵もあれば、写真もあり、インスタレーションもある。

では、一体どんな美術展だというのか??

 

実は、この美術展は、普通の美術展会場にはある“あるもの”がない美術展なのです。
その“あるもの”とは、作家名や題名が描かれたキャプション。
これを、あえて無くすことで、絵に先入観を持たずに、観賞を楽しんでみようじゃないかという、

とてもユニークな美術展。

何とも、イベント性の高い美術展なのです。

 


そして、この美術展のメインイベントは、毎日2時から行われるギャラリートーク。

これに参加しなかったなら、この美術展の楽しさの半分も味わえないことになりますので要注意。


普通、ギャラリートークと言うと、係の方が、まぁそれなりにタメになるようなガイドをしてくれるものです。
が、今回は、展覧会場の作品の前に座って、参加者全員がその感想や印象などをトークするというスタイル。
座布団が用意され、地べたに座って観賞するという、なかなかできない経験が味わえます。

その上、作品を通じて、見ず知らずの方と会話するという、これまたなかなかできない経験まで味わえるのです。
絵を前にして語る機会に恵まれたのは、

いずれ“美術展へ行こう!”presentsの美術館ガイドをやりたいと思っている僕にとって、またとないチャンス。

これは、腕の見せ所とばかしに、一人気合が入る僕でした。

 

期間によって、ギャラリートークする作品は変わるそうですが、

僕が行ったときにトーキングした作品は、上にある左の絵と真ん中の絵。

画像がちょっと見づらいですね…。

 

よろしければ、下記の美術館のホームページを見ていただければ、わかりやすいと思います↓


http://www.dic.co.jp/museum/exhibition/mite/exhibit.html

 

 

まず、左の絵の前で、「どう見えますか?」とガイドの方に指されました。

あくまで、見たままの感想でいいと言われたので、そのまま答えました。


「この2人は、姉妹です。で、場所はオーディション会場。そうですね、たぶんドラマか映画かの。

お姉ちゃんは、無理やり、前にいる妹を連れて来たのでしょう。

で、その付き添いで来たと見せかけて、

本当は審査員が“私に目を向けてくれないかなぁ”と狙っていますね、きっと。

『オーディションで付き添いに行っただけなのに、私が選ばれちゃいました。てへっ』と言うつもりでしょう。

そんな顔をしてます」 


僕以外のメンバーは、おばさまが大半だったのですが、その人たちの意見はと言うと、

圧倒的に病弱な母を前にした姉妹の絵というものでした。

まぁ、言われてみれば、そうかもしれません。
ただ、ガイドの人に、「どちらの意見にしても“複雑な心境”というところは共通していますね」と、

強引に締めくくられたのは、少しばかり心外でした。

 


続いて、真ん中の絵については、中央に描かれている大砲(?)は、擬人化したものだという意見がチラホラ。
それを受けて、ガイドの人は僕に、

「では、この2人は何をしゃべっているのでしょうか?あと、どういう関係でしょうか??」

というムチャ振りをしてきました。
しかし、1年以上、このシリーズで鍛えましたから、“わかりません”などとは言えません。


「そうですね。これが、何だかよくわからないのですが、僕は大砲だと思うのですね。

すると、左のヤツが、しゃべった途端に、角度的に右のヤツに砲弾が直撃するわけです。

だから、今はまだ一切しゃべってはいません。

関係はですね、左のが狙っていることを、右のは気づいてない様子ですからね。

身近にいるのに、相手の殺気に気づいていない関係…たぶん、兄弟ではないでしょうか。

『兄ちゃんめ!』と弟が思っている、そんな絵に見えます」


と、この意見を言ったところ、おばさま方が、

「じゃあ、左のは妻よ、妻」

「そうね、それなら夫婦関係のが近いわ!」

「ウチは、ちょうどこんな感じよ」と異常に大盛り上がり。
何となく、言わなければ良かった感に見舞われました。

 

こんな感じのやり取りで、30分のギャラリートークは、あっという間に終了。

それなりに充実した時間を過ごすことができました。
たくさんの人と、意見の交換をしながら美術鑑賞する。

これから、もっとこういう機会が増えたなら。
そう思えただけでも、この美術展は成功だったのではないでしょうか。はい。
皆様も、こういう体験は滅多にできませんので、たまには、こういうイベントに参加してみてはいかがでしょうか。


 

さてさて、ここで、いつものように、この美術展でオススメの画家をご紹介。

今回取り上げるのは、写真左の絵を描いたモイーズ・キスリングです。


キスリングは、前々回ご紹介した藤田嗣治と同じく、エコール・ド・パリを代表する作家です。

いや、代表するどころか、エコール・ド・パリの芸術家たちのリーダー的な存在でした。

そのため、彼についたあだ名は、彼らの活動していた街の名をとって、『モンパルナスの帝王』。

どうにも、“ミナミの帝王” を連想してしまって、いかつい感じですが、

実際は、皆から好かれる好人物だったようです。

 


エコール・ド・パリの面々が活躍する一世代前、パリ秋葉原では、

アキバ系のルノワールが、“萌え” な絵で人気を博していました。

印象派の時代、ルノワールによって、パリ秋葉原には “2次元萌え” 文化が根付いたのです。
そして、それから数十年後、今回の主役・キスリングは、

そんなパリ秋葉原に、また新たな文化を根付かせました。


キスリングの作品のモチーフの多くも、ルノワールと同じく女性です。

が、彼の作品に描かれる女性は、 《姉妹》 を見てもおわかりのように、

全くもって “萌え” な表情を浮かべていません。
パリ秋葉原の民衆は、彼の描く冷たい表情の女性に、“萌え” とは違った魅力を見出しました。

そう、“ツンデレ” です。

キスリングは、とりわけ「モンパルナスの女王」と呼ばれた伝説のモデル・キキを多く描きました。

その数は、100点以上。その内の一つが、右上の一枚。
キキは、彼の作品に描かれた他の女性同様、とてもクールな表情で描かれています。

実は、キスリングとキキは熱愛した恋人同士。

この絵からは、そんな感じはほとんど受けません。まさに “ツンデレ” 。


キスリングは、“ツンデレ”という新しい概念を武器に、

パリ秋葉原で、【美少女フィギュア】のような作品を次々と生み出していきます。
それでは、今回は、【美少女フィギュア】の観賞ポイントを通して、キスリング作品の魅力に迫っていきましょう。

 


まず、【美少女フィギュア】で、一番のポイントは “目”

"目”が、かわいくなければ、すべて台無しになってしまうというほどに大事なポイントだそうです。

【美少女フィギュア】を、普通の女の子の人形、例えば、リカちゃん人形やバービー人形と比べてみますと、

目が大きめに作られていることに気づきます。

ここが、【美少女フィギュア】の特徴なんだそうですが、キスリングの絵も、まさに同じ。

“目”を若干大きめに描くのが、キスリングスタイルです。

 


次なるポイントは、 “手の造形”

【美少女フィギュア】マニアが、特にこだわるポイントなのだとか。
キスリングも、そんなマニアの要望に応えるつもりで作品を作った…のかどうかは定かではありませんが、

“手の造形”には一番のこだわりを見せています。《姉妹》 の絵を、今度は手に注目してご覧下さい。

絵の中で、手がひと際リアルに描かれていることが、おわかりでしょうか。

女の子の無表情な顔からは、その心情を伺い知ることが難しいですが、

この手の動きからは、心情がヒシヒシと伝わってくるようです。
実際、美術展でこの絵を観る機会があったら、少し近づいて観てみるのがオススメです。

この手を描くのに、キスリングがどれだけ細部にまで魂を込めたのか、きっとおわかりになるはずです。

 


そして、最後のポイントは、 “エナメルのような質感”

これもまた、【美少女フィギュア】の魅力の一つです。

仕上がりが、つやつやとしているほど、良いのだそうです。
キスリングの絵の最大の魅力も、まさにこの “エナメルのような質感” 。

キスリングは、独自の「エナメルのような」色彩によって、パリの民衆を魅了しました。

実物を観てみると、よくわかりますが、色がツヤツヤとしていて、とても瑞々しい印象を受けます。
考えてみると、エナメルは、マニキュア、パンプス、アディダスのスポーツバッグなど

様々な形で人々を魅了しています。

が、そんなエナメルの色彩で絵を描いた人物は、後にも先にもキスリングしかいないのではないでしょうか。

 


皆さんにも、そんなキスリングの作品を一度“mite!見て!” いただきたいものです。
さぁ、川村記念美術館へ行こう!


 

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