
【アメリカの夢のつけ替えとつけ戻し】
7月4日のアメリカ独立250年記念のイベントで、トランプはアメリカの歴史的な星条旗を示しながら、戦争のベテラン軍人たちに敬意を表していた。ベテランたちは一人一人ステージに上がっては、独立戦争時の星条旗やリンカーンの棺を包んだ星条旗などに敬礼し、人々の称賛を受けていた。
黒人としてグレーンベレーでベトナム戦争を戦ったパリス・デイヴィス大佐、19歳の士官候補生としてパール・ハーバー急襲を経験したケン・シューブリンク隊長、第二次世界大戦でノルマンディー上陸作戦を経験した107歳になるアーサー・ローズといった人たちがいた。
トランプ大統領は、「あなたたちは自由と独立のために勇敢に戦った」と言って感謝した。第一次世界大戦以来、アメリカが不干渉主義を捨てて、大英帝国の軍隊のようなものとして動き始めてからは、「自由と独立のため」の戦いではなかったのだけれど、トランプがそのように言ったことは、アメリカが背負わされた大きなトラウマを癒やす効果があったような気がする。
中でも、ベトナム戦争はアメリカの最大の黒歴史だと思う。やり方の残虐さにしても、アメリカ兵たちの犠牲の大きさにしても、結局撤退することになった結末についてもだ。国内の反戦運動も激しく、国際的にも非難の的になり、アメリカは自由と民主主義のためにという大義名分で侵略戦争を行う帝国主義国家だという評価を後々まで残すことになった。
グリーンベレーだったデイヴィス大佐は、南ベトナム軍の部隊を指揮していて、北ベトナム軍の攻撃に遭い、部隊を撤退させる中で、自ら傷を負いながら、危険に身をさらして、何人もの兵士たちを助けたということだった。
現実には、「自由と独立のため」の戦争などではなかったのだけれど、それはベトナムで戦っていたアメリカ兵たちのせいではない。ともかくも、この人たちは、自由と独立のためだと信じて戦っていたのだ。つまりは騙されたのだし、犠牲者でもあるのだけれど、そうは言わないで、「あなたたちは自由のために勇敢に戦った」とトランプは言うのだ。実際、そう思って戦っていたのだから、これは間違いではない。
いわば騙されて戦争に加担した人たちが、ステージに上がっては、独立戦争時の星条旗やリンカーンの星条旗に敬礼していく。この歴史的な星条旗をアメリカが掲げていた頃は、アメリカ兵たちは本当に「自由と独立のため」に戦っていたのだ。この人たちは、そういう戦いだと思っていたから、命を投げ出して戦っていた。この人たちが歴史的な星条旗に敬礼する姿は、そのことを深く印象づけた。
アメリカが不干渉主義を守っていた1913年までは、アメリカは本当に独立と自由のために戦っていたのだ。ジョージ・ワシントンは、イギリス軍が砲撃を浴びせてくる中で、独立宣言を読み上げたのだと、ニューヨーク市長のマムダーニが、独立記念のスピーチで語っていた。自由と独立のためには命も犠牲にするというアメリカの精神は、ここから来ている。
それというのも、その頃のアメリカは、本当に人々の自由を守るために、戦っていたからなのだ。ハミルトンの関税によるアメリカ独自の経済システムは、誰にでも平等に夢を実現させるチャンスを与えていた。だからこそ、アメリカでは多くの発明がなされ、製品化された。これがつまり、アメリカン・ドリームの原型なのだ。そうした経済システムを国家の方針としている国だからこそ、そのシステムを守るために、命を捨ててでも戦ったのだ。
その頃のアメリカは、イギリス、フランス、スペインに植民地支配されていた土地を解放して、独立させるために、イギリスやフランス、スペインと戦っていた。それで、最初の13州から次々と州が増えて、連邦が大きくなっていったのだ。アメリカは「自由の帝国」だとトランプは言っていたけれど、まさにそうしたものだった。それが見えてくると、アメリカ人たちが国を愛し、星条旗を愛する意味も理解できる。
アメリカの活動家グループ、プロメテアン・アクションのスーザン・コキンダさんは、プロメテアンという名前は、人類に火をもたらすために自らを犠牲にしたプロメテウスから来ているということを言っていた。人類に新しいものをもたらすために戦うのが、もともとのアメリカの精神だからなのだと。共和国として独立するというのが、そもそも最大のことだけれど、それ以来、初めて飛行機で飛んだライト兄弟、電球を発明したエジソンなど、命がけで人類に新しいものをもたらした人々がいる。フリーエネルギーを考案して金融家に睨まれたニコラ・テスラもだ。
ところで、それが1914年以降、つけ替えられてしまったのだ。アメリカは連邦準備制度によって、大英帝国に金融を乗っ取られることになり、大英帝国の軍隊のようなものとして動かされることになった。そのときから、「自由を侵す敵」が大英帝国ではなく、ドイツだとかソ連だとか北ベトナムだとかになった。要するに大英帝国がやっつけたい国を「自由を侵す敵」だと思い込ませて、戦わせたのだ。
アメリカ人たちは、自由と独立のためには命も投げ出す、という精神性が強くあったから、そういう言い方でコロリと騙されたのだ。第一次世界大戦のときは、ドイツ皇帝ウィリヘルムが残虐な独裁者だから、ヨーロッパをドイツから解放しなければいけない、と言われて、戦った。第二次世界大戦では、ドイツ、イタリア、日本のファシズム政権が世界を占領しようとしているからと、この勢力から世界を解放するために戦った。そして、ベトナム戦争では、中国とソ連という共産国家がベトナムを支配しようとしているから、ベトナムを独裁から守らなければというので、戦った。
第二次世界大戦でのドイツと日本は、大英帝国が影で支配しているファシズム政権だったから、この勢力から世界を守るというのは、まだ筋が通っていた。しかし、ベトナム戦争になると、ベトナムで専制独裁が行われていたわけではなかったのだから、もう筋が通らない。どうしてベトナムを2つに分断して、たがいに戦わせなければならないのか? それで、ベトナム戦争では、共産化したベトナムは世界にとって恐ろしい存在だと思わせるために、兵士たちをMKウルトラで洗脳した。そのため、米軍兵士たちの多くは、ベトナム人を惨殺して楽しむような異常な精神状態になってしまい、帰還したあとも、普通の生活ができなくなってしまったくらいだった。
アメリカが、大英帝国に裏で支配されるようになってから、アメリカン・ドリームというものも、付け替えられてしまった。もはや国が人々に成功する自由を保障し、奨励していた時代ではなくなり、アメリカ人たちの成功への夢は、支配のために利用されるようになった。スターになる夢を実現するために、魂を売るようなことも耐え忍ぶべきだというようにだ。それで、アメリカン・ドリームの伝統が、腐敗の王国を作り出すことになってしまったのだ。
トランプは、第二次世界大戦やベトナム戦争を経験したベテラン軍人たちに、「あなたたちは自由のために勇敢に戦った」と言い、軍人たちは、1913年以前の星条旗に敬礼した。この人たちは、その頃のアメリカのつもりで、自由のためだと信じて戦っていたのだ。もともとのアメリカの旗が出てきたことで、これまでのアメリカの黒歴史は癒やされ、つけ替えられたようだ。いや、つけ戻されたのだ。それまでつけ替えられていたものを、もともとの形に戻したのだ。
大英帝国に支配され、騙されて戦わされた時期も含めて、アメリカは自由のために戦ってきたのだ。騙されて気がつかずに加担した人たちもいるし、知っていて共謀した人たちもいる。しかし、アメリカをこの陰謀から解放するために、身を犠牲にした人たちもいる。ケネディもニクソンもトランプもだ。それはこれまで、隠された事実だったけれど、その事実の方に、世界の意識が向いたのだと思う。
自由のためだと信じて戦っていた人たちは、あれは嘘だった、あなたたちは騙されたのだと言っても、解放されはしないだろう。自由のためだと信じて戦ったあなたは勇敢だった、と言ったとき、アメリカ人は人々の自由のために身を犠牲にして戦うのだということに、誇りを持つことができるだろう。
社員から信頼されるいい経営者は、社員たちの失敗を非難するのではなく、新たな方向にモチベーションを上げるために、うまく褒める。トランプはあれをやっているなと思った。これを見たアメリカ人たちは、腐敗し、支配されていたアメリカを忘れて、本当に自由のために戦うアメリカに、ポジティブな意識を持つようになるだろうから。
実際、トランプ政権は大英帝国の支配からアメリカを解放することに成功した。1901年にマッキンリー大統領が暗殺されてから、アメリカは経済システムを大英帝国に乗っ取られ、支配されていった。トランプ政権は、そこからアメリカを解放し、再び自由と独立のために戦うことができる国にしたのだ。これからアメリカは、国内の産業を復興させていかなければならないし、大英帝国がまわりの国を支配して、戦争を起こそうとするのを阻止しなければならない。トランプは、その方向に人々がポジティブな意識を持つように仕向けているのだ。
トランプ政権がベネズエラやイランでやっていたことも、表向きは、独裁的な政権から解放するために、ということだったけれど、実際にやっていたのは、大英帝国がこの2つの国を支配しようとして、カラー革命をしかけたりしていたのを、軍隊を出動させて阻止したということだったようだ。現地に入った米軍兵士たちは、それをしっかり見ていたはずだ。今、アメリカは、独立当初のように、本当に人々を独裁から解放するために戦っている。アメリカは、再び自由と独立の帝国に戻ったのだ。だからトランプは、人々の意識をその方向に向けかえた。
トランプがスピーチし、戦争のベテラン軍人たちが古い星条旗に敬礼してから、花火が盛大に打ち上げられて、街はまるで大規模な空爆を受けているかのように見えた。爆弾が花火になり、戦争の時代が終わって黄金時代が来たことを示しているかのようだ。花火が打ち上げられている間、ステージでは、軍楽隊の歌手たちが、制服のままでアメリカの昔のヒット曲を歌っていた。それで、アメリカの軍隊というもののイメージが、すっかり塗り替えられてしまったようだった。
アメリカはこれから、自由の帝国として、世界中の人々に自由を保障し、専制から解放するための軍隊を持つのだ。とにかくそれがトランプの意図であり、多くの人々がそう信じていれば、それは本当にそうなるはずだ。
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