=事故後5日目=

 

 

母は

目に見えて 衰弱してきている

 

水分以外は

全く 受け付けなくなった

 

 

今日は 初めて

 

こんなことなら

もう 死んだほうがマシ

 

な~んてことまで 言い出した

 

120歳まで生きる気満々の 母からは

先ず 聞いたことがないセリフだった

 

 

何 言ってんの

 

冗談のように 返したけど

その言葉は

ますます 私を追い詰めた

 

 

 

明後日は

救急病院で 抜糸の予約が入っている

 

その時

もう一度 よく診てもらおう

 

それまでは

おうちで 頑張ろう

 

ずっと そう 思ってたけど

 

 

本当に このままで

大丈夫なのだろうか

 

 

母の目には 生気がなく


このままでは 干からびて

あと数日で 即身仏になりそうだ

 

 

そんな 母を

明後日の予約を待たずに

病院に 連れて行くのは

非常識だろうか

 

 

私は すがる思いで

かかりつけ医の先生に 電話をかけた

 

先生

母が 食べ物を口にしないんです

 

元気が なくて

痛みも

だんだん 強くなってきているようで

 

鎮痛剤が ちょっとでも切れると

 

苦しい 痛い もう死にたい

って言うんです

 

私は

どうすればいいですか

 

 

先生は あっさり

 

すぐ 救急でかかった病院に

連れていきなさい

 

と言ってくれた

 

背中を 押してもらえた

 

 

私は 医者の言質を得て

早速 母の寝ている部屋に行き

痛がる母を 起こそうとした

 

けど

今日は なかなか起こせない

 

あれ?

 

足を見ると

筋肉が萎縮しているのか

膝が まっすぐに伸びない

 

背中も 丸まったまま

 

頑張って 伸ばそうとするも

痛がって できない

 

まるで ダンゴムシのようだ

 

 

どうしよう

これじゃ ひとりでは

とても 車まで連れて行けない

 

私は 呆然とした

 

 

救急車を呼ぶ

 

という発想が 頭に浮かんだが

 

でも それは

私にとって

予約無しで病院に行く 以上に

高い壁だった

 

 

救急車1回の出動には

5万円ほど かかる

と聞いたことがある

 

母は

5日前にも 利用したばかり

 

この国は

どんどん 貧しくなってきていて

 

世間では 減税を謳う政党が

多くの指示を 集めている

 

そんな中

 

私は

94歳認知症母が

社会のリソースを たて続けに使うことに

後ろめたさがあった

 

 

でも

 

 

それでも

 

 

私は スマホを手にして

119を入力した

 

まだ 呼ぶかどうか

迷っていた

 

ふと スマホに目を落とすと

検索画面に

 

救急車を呼ぶかどうか 迷った時は

#7119

 

という文字が 目に入った

 

 

この番号は 以前

息子がアレルギーになった時にも

かけたことある

 

私は

この救急相談センターへ 電話した

 

 

今までの顛末と

 

母が 94歳認知症であること

 

死にたい と言うくらい

痛がっていること

 

体が丸くなってしまっていて

一人では 病院に連れていけないこと

 

などを 伝えた

 

 

相談員は 話を聞いてくれ

すぐに

 

救急車を手配しましょう

 

と言ってくれた

 

 

 

涙が 出た

 

救われた気が した