最近

 

椅子に座って

ぼーっ としている時間が

多い 母

 

 

 

まあ その事自体は

介護している側からすれば

ラクっちゃあ ラクなんだけど

 

でも

その間にも

母の脳内の

記憶を司る 神経ネットワークが

ブチブチと 切れていっている

(恐らく)

ことを考えると

 

娘としては

 

なにか 刺激を与えて

神経ネットワークが切れる量を

減らさなきゃ

 

な~んて 考えちゃうんだよね

やっぱり

 

 

折り紙や パズルを

やらせてみたり

 

懐メロを聴かせたり

 

そして 今回は

思い立って

母が 旅行で撮った写真ばかりを

集めた アルバムを

見せてみた

 

 

 

すると 母は

 

なんと!

 

他の 何よりも

はるかに 食いつきよく

 

旅行の写真を

集中して 見たのだった

 

 

そもそも 最近は

なにかに 興味を示すことも

少なくなっていたので

 

私としては

金鉱を掘り当てた 気分

 

 

写真をじっと見つめる母を

見ながら

 

昔を思い出して

エモい気分に浸っているのかな

しめしめ

この間に 夕飯の準備をして…

 

な~んて 思っていた

 

ん ・ だ ・ け ・ ど

 

 

母は

突然 アルバムから顔を上げ

深い深い 溜め息をつきながら

つぶやいたのだった

 

 

こんなところに 行ったの?

ぜんっぜん 覚えてないわ

 

 

にわかには

信じられなかった

 

だって

 

母は

非日常的体験が 大好きで

 

1ドル360円の時代から

バブルを挟み

失われたン十年の中盤くらいまで

 

時間と 体力と お金が

許す限り

全精力を傾けて

あちこち 旅行してたから

 

 

 

子どもの頃

 

旅行で

長期に家を開けては

笑顔で戻ってくる母を 見ながら

 

私も 大人になったら

母みたいに 旅行するんだ

 

何の疑問も 抱かず

そう 思っていた

 

 

実際

自分が 大人になった時

 

子どものことや

仕事のこと 家のことを

考えると

時間的にも 金銭的にも

なかなか 母のような余裕は 

持てなくて

 

近場の

1~2泊の旅行はしても

 

例えば 長期の海外旅行などには

なかなか 手が届かなかったけど

 

 

一方 母は

そんな私に

 

私 もう 世界中

行きたいところは

ぜ~んぶ 行ったわ

 

と豪語し

 

あなたも 海外旅行に行くなら

若いうちがいいわよ~

 

などと言って

私の気分を 逆撫でしてきた

 

 

そんな

母娘の

平穏な(?)日々の中

 

同居している 母が

認知症を発病し

 

私の 海外旅行は

当面 お預けになった

 

 

いや それでも

母の状態が

今よりは 悪くなかった時

 

海外旅行に行く チャンスは

何度か あった

 

 

だけど その度毎に

まるで 私を

海外に行かせまい

とするような

怪奇な事件が 重なって

 

ある時など

涙なしでは 語れない

悲しい結末に

なってしまったのだった

 

 

 

 

そして

母の 認知症が進んだ

 

私が 旅行するのと

母が ショートステイに行くのは

ワンセット

 

でも

知り合いがいないのが

寂しいのか

 

お泊りすることに

激しく 抵抗を示す

 

 

それでも 何回かは

ショートステイに行ってもらい

私も

友人たちと 国内旅行を

楽しんだのだけれど

 

ショートステイに行く話をする度に

母は

テーブルに突っ伏し 嗚咽を漏らし

この世の終わりのように

嘆き悲しむのが

お約束

 

私は 毎回

悪代官になった 気分

 

 

 

 

この夏

ちょっとした事件が あった

 

 

私は 娘ドラ子に誘われ

下関まで 2泊旅行をした

 

母の ショートステイのお預けは

午後1時過ぎから

 

それから 駅に行って

新幹線に乗って

 

となったら

現地に着くのは もう夜

 

しかも 帰る日のお迎えは

午前11時

 

となると

それなりの2泊旅行を

楽しもうとすると

 

母には ショートステイに

4泊してもらわざるを得ない

 

それは

さすがに 酷だ

 

なので

隣駅に住む 仲の良い叔母に

お願いし

 

朝早く 我が家に来てもらって

ショートステイの お迎えが来るまでの

数時間

一緒に 過ごしてもらった

 

んだけど

 

その夜

 

旅先に

叔母からのLINEが きた

 

 

無事

姉(←母)を お迎えの車に乗せました

安心してください

 

ところで

姉(←母)は ずっと

 

ショートステイに 行きたくない

 

と言い続けて 泣いていました

 

私は その様子を見るのが

本当に辛かったです

 

◯ちゃん(←私)には悪いけど

今後 このお役目は

お引き受けできません

 

ガビ~ン

四面楚歌

 

 

 

 

先日 厚生省から

ひとの健康寿命の発表が あった

 

健康寿命とは

日常生活を 問題なく送れる

期間のこと

 

その 日本人女性の平均は

75歳

 

ということは

私には

外出や 旅行を 楽しめる期間は

あと10年も

残されていないことになる

 

 

アルバムの中で

海外含め 数々の観光名所で

写した写真の中で

 

人生を謳歌するように

微笑む母は

40代~70代

 

私は

今 60代後半

 

 

ということは

 

母と私の どちらが

ほんとうの 悪代官なのか?

 

 

 

母のことは 大好きだけど

 

大切に 思っているけれど

 

次に

気の合う友だちに

海外旅行に誘われたら

 

私は…