先日

 

母の 普段使い用の靴を 買いに

ふたりで デパートへ出掛けた

 

 

コロナが心配なので

車で行って ササッと買って

ササッと帰ってくるつもりだった

 

 

の ・ だ ・ が

 

 

そうは 問屋が卸さなかった

(↑ショーワな言い方!!)

 

 

 

マンガに描いたように

2つまで 候補を絞るのは

比較的 簡単だった

 

でも その後

どちらの靴にするか で

迷宮に突入した

 

 

片方は

少しだけ ヒールがある

オシャレなデザイン

 

そして もう一方の靴は

機能性重視の

紐でしっかり結ぶタイプ


 

両方 履いて

少し 歩いてごらんになったら

どうですか?

 

店員さんに そう促されて

靴を替えながら 歩き回る

 

 

どう?

 

と 私が聞くと

 

う~ん どっちも歩きやすいわね

 

という返事

 

 

でも どちらかと言ったら

どっち?

 

う~ん そうねえ…

 

紐靴の方は 安心感があるわね

 

でも

こっちも 軽くて 簡単に履けるし

いい感じ

 

 

迷っているふうを 装いながらも

その言葉の端々から

私は

母は オシャレな靴の方を

気に入っていることがわかった

 

 

でも

母は 膝が悪い

 

 

 膝のためには

足をしっかりと包み込む

紐靴のほうが

絶対 いい

 

 

とはいえ

履くのは 母だ

 

母が

気に入って 選ばなければ

意味がない

 

 

私は

 

あ この紐靴

内側に クッションが付いていて

履き心地 よさそうね

 

とか

 

つま先の カーブのところが

意外とオシャレだよ

 

などと言って

さり気なく 紐靴の方を

プッシュする

 

 

すると 母は

それに対して

 

紐靴って

どうしても 運動靴っぽいわよね

 

やっぱり 踵があると

フォーマルなところにも

行けるんじゃないかしら

 

などと オシャレ靴を擁護する

 

 

ただ

 

悲しいかな

認知症になってからの 母は

自分の決断に

自信が持てないのだった

 

 

これで いいのかしら

本当は おかしいんじゃないかしら

 

と 不安になって

 

かつての母なら

スパッ と決めていたところで

自分を 主張しきれない

 

 

しばらくすると

母は

ポンコツ頭を フル回転させたせいか

だんだん 混乱してきたようだ

 

で 結局

どっちにするの?

 

と聞く 私の言葉をスルーし

 

虚ろな目をして

ただひたすら 靴を

履いて脱いで 履いて脱いで…

 

 

多分

靴を脱いで 次の靴を履く間に

母の中で

既に脱いだ方の 靴の記憶は

消え去り

 

常に

その時履いている靴の感覚しか

ないのだろう

 

 

 

私としては

母自身に

靴を 選ばせたかった

 

だって

自分の履く靴くらい

当たり前に 自分で決めたいだろう

 

少なくとも

母は そういうタイプの人間だ

 

これまでの人生だって

自分で 決めて

自分で 道を切り拓いてきた

 

 

戦後の混乱期に

田舎から 東京の大学を目指したり

 

専業主婦でありながら

父に内緒で

株をしたり 投資をしたりして

安月給だった 父より

稼いでいた時期もあったらしい

 

 

 

 

1時間近く 経っただろうか

 

母は 相変わらず

靴を 脱いだり履いたりしていた

 

私は

もう 待ちきれなかった

 

 

 おかあさん

 

膝が悪いから

やっぱり 紐靴にしなよ

 

膝が良くなってから

おしゃれな靴

また 買いに来よう

 

そう言って

半ば強引に ヒモ靴に決めさせた

 

 

 

初老の店員さんは

この 時間のかかる買い物客に

内心は うんざりだったろうけど

顔には 一切出さず

 

母の すべての動作に

付き合ってくれた

 

そのことが

私は 本当に 有り難かった

 

 

だから

 

予定には 全然なかったけど

自分の靴も 買ってしまった

 

…ってか

母を待っているうちに

自分も 欲しくなっちゃって

 

 

ちなみに

私の場合は

 

ピンポイントで 選んで

試し履き 一回の

即決ね