<その69>『時の過ぎゆくままに』 | まなブログ

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大阪府堺市で鍼灸院を開業しています。
日々の気づきをつづります。

言わずとしれたジュリーの名曲です。



さて、サラダの中央でスポットライトを浴びた主役とは?


「・・・豚しゃぶですか?」

「そう、上ロースですよ。」


上ロースはいいんです。

しかし、量が半端ではありません。

これまでのメニューを考慮すると、あり得ない量です。

トッピングというより、豚しゃぶにレタスを敷いたってかんじ。


「さあ、豚しゃぶサラダを召し上がってください。」


Yさんは、主張されます。

あくまで、これは「サラダ」であると。

すいません。

「お肉料理」にしか思えないのは、私だけでしょうか?

まだ、胃の中でカルビくんがしっかりと自己主張されておられます。



「先生、ごまだれにします?それとも、ポン酢で?」


ここは、少しでもさっぱりしたいところ。


「じゃあ、ポン酢で。」


ごまだれのビンを脇にどけようとされるYさん。

しかし、その瞳がキラッと光ります。


「あら、でも、ごまだれがちょうど使い切れそうね。」

「・・・。」

「先生、ごまだれでもよろしいかしら?」


だったら、最初から訊かないでください。


「さあ、ごまだれを・・・ダバダバダバ~と。」


その効果音からしてお分かりでしょう。

かけ過ぎです。

明らかに。


「で、最後にポンポンと。」


と、とどめにビンの底を叩かれるYさん。

意地でもごまだれを使い切る所存。

鳩山総理にもこれぐらいの覚悟が欲しいところだ。


「さあ、先生、どうぞどうぞ。」

「・・・では、頂きます。」


うっ!

こ、これは・・・。

見事、ごまだれの味しかしないじゃないか。

しかし、ここは。


「いやあ、さすがにこの豚肉はやわらかくて、甘みがありますねえ。」

「でしょー。何と言っても上ロースだから。」


私の生存本能が、唇をそう動かすのです。


それにしても、きつい。

このタイミングで、お肉はないだろう。

胃の中では、牛と豚のデュエットが不協和音を奏でています。


さらに、ごまだれの酸味と胃酸が組んだ最強のタッグ。

食道を上へ昇ろうと暴れています。


「・・・ごちそうさまでした。」

「はい、お粗末さまでした。」


終わった。

いろんな意味で、「終わった」かんじだ。

これは、帰宅後、胃腸だけでなく、腎のツボで生命力も補う必要があるだろう。


その分、イキイキとされた教祖様。

しっかりと精気を吸い取って頂いたようだ。

半ば放心状態。

瞳孔が開いたままの私に、


「はい、先生、おみやげですよ。」


Yさんが現実の世界へ引き戻してくれました。


「これは、ぴょんぴょんですね?明日にでも早速頂きます。」


さり気に賞味期限をチェック。

先月、おみやげに頂いた冷麺。

当たり前のように、5日ほど過ぎていたからだ。


大丈夫、「14日まで」だ。

今日は、6日。

まだ、一週間近くあるじゃないか。

こうして、その夜も黒魔術の結界から解放されたのです。



-翌日。


「あっ、そうそう。昨日、冷麺もらってきたから、茹でてくれる?」


夕食前、母に声をかける私。


「ああ、これね。」

「そう、それそれ。」


しかし、母は訝しげな顔で。


「訊こうと思ってたんやけどね。」

「えっ?」

「これ、ほんまに食べるん?」

「ほんまにって・・・うん、おいしいで。」


母は製品表示欄をもう一度確認し、


「でも、これ、賞味期限、過ぎてるよ。」

「えっ、まだ、一週間近くあるやろ?」

「ほら、自分で見てみ。」


母から手渡された冷麺のパック。


「2010年4月14日までおいしく召し上がれます。」


ねっ、ほら、14日まで大丈・・・はっ!!!

4、4月。

4月って書いてあるぞ。

え~と、確か、今は5月だったよな。

ってことは、ひと月近く前に切れているじゃないか。


何と言うことだ。

未だ黒魔術の結界にとらわれていたというのか、私は。


待てよ。

先月、冷麺をお土産にもらったのは、4月の半ば。

それで、5日ほど賞味期限を過ぎていた。

ってことは、同じ時期に買いだめした冷麺だというのか・・・。


数日しか賞味期限がない生麺タイプの冷麺。

そ、それを数ヶ月単位で買いだめされるなんて。

アパルトヘイトどころか、見事に賞味期限が撤廃されているではないか。


これは、警鐘なのだろうか?

日々、時間に追われながら生きている私への。

時の流れは、もっと悠久で深遠なもの。

それに、身を任せながら生きなさいと。


時の~ 過ぎゆくまま~にぃ この身を任せ~」

思わず心の中で口ずさむ私。



あらためて、Yさんの器の大きさを痛感させられました。

ひと月近く賞味期限が過ぎた冷麺。

それを当たり前のように、お土産として手渡される器量。


「何事にも寛容であれ。」


冷麺のパッケージから、教祖様のそんなメッセージが聴こえてきそうだ。


これから、冷麺のおいしい季節。

もし、あなたの食卓にも、賞味期限の切れた冷麺がのぼることがあったなら。

黒魔術の結界は、すぐそこまで張り巡らされていることだろう。




-完-



(2010/5/9)