クマオは旅行するなら女と行きたいのだ。どこかの温泉宿で女とゆっくりして、セックスしたい
のだ。そんな恋人同士としての関係をクマオは思う存分楽しみたいのだ。
イライラした気持ちで、私はクマオの「旅行にも行けないからか?」という質問に、
「そうです」と返信しながら、ふと思い出した。
クマオと最後に旅行したのは2017年の秋。広島方面への2泊3日の旅だった。
宮島に渡る船のデッキ。隣にはカップルが立っていた。男性が女性の腰に手をまわし、
身体を密着させている。二人の顔は唇が触れ合うほどの距離。きっと宿では激しく身体を
重ね合うのだろうなと容易に想像できた。
ふとクマオの横顔を見た。その時のクマオの横顔は、どこか寂しそうで、やるせなさそうに
見えた。私の思い過ごしであってほしいと思ったが、きっとクマオも悶々としていたのだ。
宿についても、キスさえしない関係になっていた私たち。
何でオレだけこんな貧乏くじを引いたのかと、きっとクマオは思っている。そう思わないでは
いられないクマオのあの時の残念そうな横顔。
クマオさん、私でごめん。こんなおばさんと旅行しても何もおもしろくないよね。
私は心の中で何度も何度も謝っていた。
クマオからは何の返信もないまま日が過ぎた。
その週の土曜日の午後、クマオから電話がかかってきた。