「⋯裕太?」

思わず名前が口から出ました。


裕太はマスクを少しだけ下げて、小さく笑います。「うん」

どうして。

どうしてここにいるの。

わたしは数秒フリーズしていたと思います。


「電話で会えないって言われたから、これで諦めようと思って」

裕太はそう言いました。

「最後に一回だけ顔を見たくて来た」

その言葉に、胸がザワッとします。


でも次の瞬間、わたしはハッとしました。

ここは職場です。

周りにはお客様もいます。

スタッフもいます。

こんなところで話をしてはいけない。


「裕太、ここ職場だから⋯

わたし仕事中だから」

できるだけ冷静に言いました。

「帰って」

でも裕太は、その場から動きません。


「五分だけ

本当に五分だけでいい

ちゃんと諦めるから」

その時でした。


「高橋さん」

後ろから声が聞こえました。

振り返ると、元彼Fさんでした。

本社から応援で来ているFさんが、こちらへ歩いてきます。



次回へ続きます。