着信音が鳴り続けます。

あと数秒で切れてしまいそう。

その時。わたしは気付けば通話ボタンを押していました。

「⋯⋯もしもし」

自分でも驚くくらい小さな声でした。

数秒の沈黙。


そして、聞こえてきたのは。

「⋯出てくれてありがとう」

久しぶりに聞く裕太の声でした。

不思議な感覚。

胸が苦しくなることも、涙が出そうになることもありませんでした。


ただ

「あぁ、裕太の声だ」

そう思っただけでした。


「突然ごめん」

「電話は拒否されてないのかなって、ダメ元で掛けてみた」

裕太は少し申し訳なさそうに言います。

わたしは返事ができません。


裕太が続けました。

「LINEブロックされてるの分かってたし

もう話せないと思ってた

でも今日、アプリでななを見つけて⋯どうしても声だけ聞きたくなった」


その言葉を聞いた瞬間、わたしは目を閉じました。少し前なら、この一言だけで心が揺れていたと思います。


でも今、頭に浮かんだのは、ほんの数十分前に電話で笑っていた佐藤さんの声でした。

「一緒にのんびりタイムしたいなぁ」

その優しい声の方が、ずっと温かく心に残っていたんです。


わたしは静かに息を吸いました。

そして、裕太に言いました。

「⋯何かあったの?」

その一言から、止まっていた時間が少しずつ動き始めようとしていました。


次回へ続きます。