実家暮らししていた頃のお話です。


私は一時期、ケーキ教室に通っておりまして、毎週金曜日に2ホール作って、自宅にお持ち帰りしていたんですね。


で、この頃もすでになんか、微妙に虚弱体質で。


いつも土曜日のお昼過ぎに目が覚めるのです。



ガチャ♪(←冷蔵庫のドアを開ける音)


私「ケーキ無いやんけ…。」ガーン


ゴミ箱を漁ると、ホールケーキのケース2箱分が捨ててあります。


ちょうどそこへ兄が通りかかったので、喰ってかかります。


私「ちょっとっ!!ここに夕べ置いてあったケーキの中身!!」


兄「あぁ…。食べた。」


私「なんで!?なんで無くなるの!?」


兄「そこに、ケーキがあったから。うまかったぞ?」


私「ナニ、登山家みたく言ってんのっ!


  アタシが言いたいのは、家族五人分で、2ホールケーキがあって、なぜ私の分が残っていないかって事よっ!!」


兄「あぁ…。最初は、4分の1食べたんだが…。」


私「よ、4分のいちぃ!」


兄「次に見た時、一つ減っていて。」


私「どいつだっ!!」


兄「そこで、残り4分の1を食べ。」


私「一人でホール半分喰ってんじゃねーかっ!!」


兄「そして、今、お前が怒っている。」


私「おかしいだろっ!!最初に4分の1食べたなら、そこで打ち止めだろっ!!」


兄「まぁ、待て。冷静に考えろ。犯人は俺一人じゃない。」


私「自分が犯人だと認めたなっ!!


  普通に考えたら、最初に手を付ける時。
  自分が食べた残りが5分の4にするはずだ。


  次の人間も5分の4残して。
  次も5分の4、そして次も5分の4。

  えっと、5分の4×4回で、えっと…。


  ともかく、最初の5分の1以上残ってなきゃ、おかしいだろうがっ!!


  なぜ、ケーキを持ち帰った私が一口も食べれないんだ!!」


兄「そこに、ケーキがあるからだ。」


私「ぬけぬけと!」


兄「お前、ケーキごときで、そんな熱くなるなよ。うっとおしぃ。」


私「なんだと~!!これで、何度目だ!!
  食べるなとは言わないが、食べ過ぎだろ。」


兄「それは認める。俺にどうしろと言うんだ。」


私「弁償しろっ!!そして、今、まさにお昼ご飯に1ホール食べるいう私の夢を打ち砕いた慰謝料も要求する!!」


兄「チッ!いくらだ。」


私「1ホール750円かかってんだっ!!500円払えっ!」


兄「チッ!高い。」


私「これでも大特価だっ!


  しかも、このケーキはなぁ!


  夕べ、スラブ系の変な外人に自転車で追っかけられてっ!!
  すれ違いざまに、お尻触られたのよぉ!!


  それでも、投げつけずに、必死に守って帰ってきた、貴重なケーキだったのにっ!!」


兄「その外人、目が悪かったんだな。」


私「違うわぁ!私の可憐なお尻が触られたのよぉ!!


  メッチャメチャ、怖かったわぁ!」


兄「悪趣味な。」


私「謝れぇ!!私と痴漢さんに謝れぇ!!」むかっ


兄「お前、何言ってんだよ。チッ!


  ケーキ食ったのは、悪かったよ。


  これからは、食べられたくなければ、冷蔵庫に入れとくなよっ!」


と、兄に捨て台詞を吐かれながらも、お金をもらって、近所のケーキ屋にショートケーキを買いに行ったのですが。



数週間後の土曜日昼。



ガチャ♪(←冷蔵庫を開ける音)


私「…ねーよ。ケーキが。」汗


ゴミ箱を覗くと、ケーキの箱が一つ捨てられていました。

私は不敵な笑みをたたえながら、パジャマ姿で2階へと戻ります。


私「くっくっく。ここまでは予想済みだ。


  こんなこともあろうかと、もう一つは仏壇に隠しといたのさっ!」にひひ


と、私が仏間に行くと。


無残に食いちぎられたケーキが畳の上に転がっていました。



猫「ニャ?」にゃー


飼い猫がこちらを振り返って、小さく鳴きます。


私「ケーキが…。」ガーン


猫「ウニュ?」


体をくねくね曲げながら、耳を平たくして、猫が小さく鳴きます。


私「こらーっ!お前かぁー!」


猫「ニャニャ!?」


私「何、これ、誰か知らない人が来て、散らかしていったんだよ?的なフリをしてんだっ!


  アタシも今、これ見て、ビックリー的なリアクション返してんだっ!」


猫「ニャー!」


猫は逃げ出しました。


しかし、私は追いかけます。


私「待て!この四足歩行の愛玩動物の分際で、よくも私の楽しみをメチャクチャにしてくれたなっ!!」(←何気にひどい事言ってます。)


ガラリ♪(←弟が部屋の戸を開ける音。)


弟「ふわぁ~!何騒いでんの!姉ちゃん。


  あ、上の姉ちゃんじゃなくて、下の姉ちゃんか。珍しい。」


私が小太りのトラ猫を捕まえるのと同時に弟が仏間に入ってきました。


なんか、誤解がありそうなので、補足説明させていただきますが。


普段は、私はおとなしくて、温厚な人間なのです。
あまり、人前で声を荒げたりはしません。


だから、自宅で大騒ぎすることも、あまりなくて。
弟は活発な性格の姉の方が騒いでいると思った、という次第。


私達、姉妹は性格も容姿もかなり違いますが、声がそっくりなのです。



私「この子がっ!この子がケーキをっ!!」


猫「ヴニュー!」


私が猫の顔を掴んでいると、弟があきれた表情でこちらを見ています。


弟「あぁ…。もう、これ食えないだろ。


  残りは犬にでもくれてやったと思えば、いいじゃん。」


私「犬じゃないっ!こいつは猫だっ!!

 どうせ、たいして食えやしないくせに、触感を楽しむためにメチャクチャにしてやがったんだっ!!」


弟「まぁ、動物がやった事だし、許してやれば?


  いいじゃん、捧げもの持ってこられるよりは。」



注:捧げもの。元野良猫を飼い猫にした加減か、家に、バッタ、コガネムシ、蛇、トカゲ、スズメ、コウモリ、ネズミ、金魚、ハム(この2つは盗って来た)などの戦利品を見せびらかしに来ることがある。我が家は野生の王国。


ちなみに、この時私がふんづかまえている猫は2代目なので、狩りはできない。



トラ猫は耳を平たくして、視線を泳がせています。


猫「ウニュン、ウニュウ…。」


私「しらばっくれるな!この期に及んでいい訳かっ!


  そのヒゲについた、生クリームが動かぬ証拠だ!!」


弟「姉ちゃん、猫相手にそんな事言っても…。」



私「いいや!許せん。
  いいか!?
  
  食べ物って奴はなぁ!


  食べれる時に、食べれるだけ、食べとかなきゃいけないんだぞっ!!


  生ぬるい事言ってると、いつか足元すくわれるぞっ!!

  これは、生き物の基本だっ!!


  そんな、どんぐり眼でかわいい声を出しても…。


  出しても、無駄だ…。うっ…。かわいい…。


  ケーキ食べれない私、かわいそう…。」しょぼん



私が猫を開放して、しょんぼりしていると、弟はいったん自分の部屋に戻っていきました。


私「どうしてだ…。この家の人間は前世はイナゴかなにかか?


  なぜ、こんなにも人の食糧を食い漁るんだ…。」


弟が戻ってきて、私に個別包装のデコレーションポッキーを差し出しました。


弟「まぁ、姉ちゃん。


  これでも食って、元気出せや。」


私「うん…。ありがと。


  うぐうぐ。ウマイな、ポッキー…。


  アレ?このポッキー…。(見覚えがある)


  お前、これ、どうしたの?」


弟「拾った。」


私「どこで。」


弟「姉ちゃんの部屋で。」


弟「お前もかっ!!このバッタ野郎!!」むかっ









お後がよろしいようで…。(実話)