ドサッ。
気付くと、どこかの室内のベッドの上でした。
ユアンさんは、何度か移転を繰り返し、私をここに連れてきたようです。
ユ「姫、愛してる。好き。大好き。愛してる。」
私「愛してる。好き。大好き。愛してる。」
私は雨の様に降る、ユアンさんのキスを顔に受けて。
彼のセリフをオウム返ししていました。
私は彼の膝の上に頭を乗せる格好で仰向けに横たわっており。
私の後頭部を支えながら、ユアンさんは私にキスを繰り返していました。
ユ「好き。今夜は僕のそばに居て。僕の姫でいて。」
私「好き。今夜は側に居る。ユアンさんのしんじゅでいる。」
セリフの合間に降ってくるキスを受けながら、私はうっとりと…っていうより。
ぐったりとしながら、彼のセリフをオウム返ししていました。
カチ、と歯があたります。
私は、めまいを覚えながら、微動だにできず、されるがままです。
(ユアンさんのキスだ…。)
頭の芯が、グラグラしていて、なぜ自分が彼にキスされているか、よく分かっていません。
彼が頬や、唇だけでなく、首筋やうなじへキスをしてきても、まったく身動きができず。
ただ、天井をぼんやりと眺めているだけです。
(…ここは、ユアンさんの部屋だ…。)
微かに視線を巡らすと、白とライトベージュを基調とした、シンプルな室内が見て取れました。
一度、彼に連れられてここに来た事があります。
まぁ、その、若い男性の部屋に一人で来る、という事が何を意味するかは、察してください。
ユ「姫、好き。僕の姫。愛してる。」
私「…………。」
そう言いながらも、キスを繰り返してきますが、私がぐったりしているのを見て。
彼は、ため息をつきながら、体を離します。
私も少し、めまいが治まってきました。
私「…強引だな。何を知っている。
もしかして、ガイド交代の話でも出ているのか?」
ユ「………。」
この時、ユアンさんは何かを言ったかもしれませんが、私には聞き取れませんでした。
すぐにユアンさんに押し倒されますが、私はぐったりとして、キスをされるだけです。
ユ「僕の愛を受け入れて。愛してる。」
私「あなたの、名前を教えて。」
ユ「○○○○○○○○○。」
彼のネイティブな発音に、しっかりと聞き取れませんでしたが。
やはり、イワンなんちゃら、かんたら、という名前の様でした。
彼は、ふ、と微笑むと、「ユアンでいいよ。」と言います。
ここは、日本語で聞こえます。
そして、自分の様な存在は他にもたくさんいる、という事を言っていますが。
どうも、私の知覚のアクセスが悪くて、会話がブツ切れに聞こえます。
私「…ここは、どこのフォーカスエリアなの?」
ユ「○○○○○○。」
やはり、彼が何を言っているのか、まるでジャミングがかかったように聞こえません。
彼に再び口づけを繰り返されますが、私はまるで自分の体が人形になったかのように、動かせず。
それを見た彼は、ため息をついて、その場を離れます。
隣の部屋に移動したらしく、奥から、カチャカチャと、食器のぶつかる音が聞こえてきます。
そうして、少ししたら。
ユ「姫。ちょっと、こっちに来て。」
私「うん。」
私は、ノロノロと彼の呼ぶ場所へと移動します。
そこには、丸いテーブルとイスが二つあり。
私はそこに背中を丸めて、腰かけます。
ユ「はい。これを飲んで。」
コトリ、と目の前にホカホカと湯気を立てる、白いマグカップを置かれます。
気付けば、私の姿はローカル1のままになっていますが、その時の自分はそれに気づかず。
ぼんやりした頭で、そのマグカップを両手にとって、口をつけます。
それは、トロリとしたのど越しの、はちみつレモン的なドリンクでした。
私は、それを、少しずつ、少しずつ、ふうふう言いながら飲みます。
私「んく。んく。ふぅ。」
そのドリンクを飲み終わったとたん、頭の中がグルグルとしていたのが、ピタリとおさまり。
自分の背筋がしゃっきりと伸びるのを感じます。
私「ぷはぁ!」
私はコトンと、勢いよくテーブルにマグカップを置くと。
いつの間にかすぐ隣に座っていたユアンさんが、テーブルの上に両腕を組んでその上に自分の顎を乗せて。
私の事を、上目使いで見ていました。
目がまったく笑っていません。
ユ「飲んだね。」
私「…ごちそうさま、です。」
いつも、柔和で微笑みを絶やさない彼が笑っていない。
それどころか、その眼差しは鋭く、さきほどのバーでこちらを振り返った時と同じ目をしています。
(…男の人の、目だ。)
私は、ゴクリと生唾を飲みこみ。
今更ながら、カチーンと、体が硬直します。
こういう目線には、慣れていないのです。
(な、な、なんで、ここに私いるんだろう。
え、えと、ユアンさん、男の人の目をしている。
えと、頭がしゃっきりしたのは、いいんだけど。
なんか、なんか、ユアンさんが、メチャクチャ魅力的に見える~。)
私は一人で青ざめたり、赤くなったり、身体がカチコチに固まったのですが。
ユアンさんは、それに構わず、私を抱きかかえて、ベッドルームへ運びます。
ユ「僕の姫。今夜は僕の姫だからね。」
私「あの。あの、それはちょっと。あの…。」
ユアンさんは、私の唇の下に自分の親指を当てて、うつむいていた私の顔を起こすと私にキスをしてきます。
私は、こういうシチュエーションが憧れだったので、なんだか、頭のネジが一本吹っ飛びます。
そして、トップスをめくって、手を差し入れてきます。
私「え。ちょっと!それはマズイって!」
ユアンさんは、私の上に覆いかぶさりながら、囁きます。
ユ「あのね、姫。
これだけじらしておいて、もう男は止まらないよ?
僕の事、好き?」
私「す………。」
(好きに決まってんだろうがぁぁ~~~~!!
誰のために、まっ黒焦げになりながらフォーカスエリアをぶっ飛ばしてたと思ってんだぁぁ!)
私は自分の顔から火が出そうなくらい顔が紅くなっているのを感じます。
ユアンさんは、微笑みながら強引にキスをしてきます。
(いや、待て。マズイって。ミカエルさんが本命なんだから、そんな事になっちゃったら、ユアンさんが…。)
私が体をずらして、逃げようとすると。
ユ「僕の事、愛してるよね?」
私「あの、えっと。その。おかしくない?ガイドが人間に惚れるって変じゃない?」
ユ「姫。観念しなさい。僕の事を愛してるって。」
私「えっと。あの、ユアンさん、陽のガイドだよね?」
ユ「僕の姫。僕の気持ちは伝えたよ?君も僕を愛してる。」
キスを繰り返しながらも、いつの間にか、トップスを脱がされています。
私が慌てて胸を隠そうとすると。
ユ「…かわいい胸。」
私「…ッ!」
ボンッとまた、頭のネジが吹っ飛びます。
顔が紅くなり、体がプルプルと震えます。
(そ、そんな事、今まで言われた事無かった!!!)
小さな胸がコンプレックスの私の心をわしづかみするセリフだったのです。
ユ「あきらめて、僕の事を受け入れなさい。」
私の首筋にキスをしてきます。
そして、そのまま耳元で囁きます。
ユ「…姫が本気になったら、僕を弾き飛ばすのは簡単だ。
それをしないのは、僕を愛しているからだ。」
私「え…。」
ユ「本気で嫌がっているなら、僕を残して跳べばいい。
ほら。」
私「あ…。」
私の頭のネジが、ボンッ、ボンッ!と弾け飛びます。
(お、おかしいにゃ。なんで、こんな的確に私の弱点を攻めれるんだ?
ユアンさんが、お利口になってるにゃ?)
私は目がグルグルになって、頭の中が沸騰したみたいになりつつも。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、と思いつつも。
ユ「逃げれるのに…、ね。」
クスリ、とユアンさんは私の顔の上で笑い。
私の手を万歳させる格好から。
そこに自分の指を絡めて、恋人つなぎをしてきて。
それを横目で見ている私は、さらに動揺して。
私「う。」
ユ「愛してるよ…。」
ゆっくり、ゆっくり、黒曜石の様な漆黒の大きな瞳を持つ、端正な顔を近づけてきます。
すっかり、忘れていましたが、ユアンさんも極上の美形なのです。
(ダメだダメだ!この顔は凶器だ!!
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ…………キスして欲しい。)
唇が触れたら、もう、止まりませんでした。
