最初から無かったもの 1 | 宇宙の波紋~SORANOMINAMO~

宇宙の波紋~SORANOMINAMO~

心を映すパステル曼荼羅アートを描きながら、日々の雑感を語っています。

 

 

その人は右手が不自由だった。

隠していたので、

パッと見た限りでは分からないけれど、

その不自然な動作に、

やがて誰もが気がついた。

 

けれどもその人は隠し続けていた。

右手が使えないがために時間がかかっても、

その手で誰かに手渡すことが出来なくても、

平然とした態度で、

時には自分の有能さをアピールした。

 

私はその人の右手が、

そもそも存在しないのではないかと思った。

それは服で隠していても、

その中身が感じられないからだった。

その中身が動いているのを、

見たことが無かったからだった。

 

無理をしていないかと気遣ってみても、

その人は何を言っているのか分からないと言った。

 

その人はやがて

周りから足手まといだと非難された。

なぜお前だけできないのか。

なぜ迷惑を考えないのか。

一緒にいたくないと。

 

そして周りはささやき始めた。

あいつには右手が無いのではないかと。

 

その人は、

右手を使う仕事を買って出たが、

失敗ばかりが続いた。

 

その人は、

日に日に元気を無くしていった。

 

1人でいることが多くなり、

無気力に遠くを見つるようになった。

 

私はその人に聞いた。

あなたは私たちが握手を求めても、右手が出ない。

右手があるなら、握手ができるはずでしょう?

 

彼は困惑した。

右手はもちろん動かず、

言葉も出ず、表情もこわばった。

 

「右手が無いのなら、無いのだと分かって」

 

彼は初めて、私の話を聞いた。

そう、彼は今まで自分の右腕が無いのかもしれないと、

考えてみることもなかった。

 

だから、

自分の右腕がどうなっているのかを

じっくり見たことも無かったのだった。

 

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これは例え話ですが、私の体験談です。

今どうしても書いておきたい部分だけ書きました。

続くといいのですが…