その人は右手が不自由だった。
隠していたので、
パッと見た限りでは分からないけれど、
その不自然な動作に、
やがて誰もが気がついた。
けれどもその人は隠し続けていた。
右手が使えないがために時間がかかっても、
その手で誰かに手渡すことが出来なくても、
平然とした態度で、
時には自分の有能さをアピールした。
私はその人の右手が、
そもそも存在しないのではないかと思った。
それは服で隠していても、
その中身が感じられないからだった。
その中身が動いているのを、
見たことが無かったからだった。
無理をしていないかと気遣ってみても、
その人は何を言っているのか分からないと言った。
その人はやがて
周りから足手まといだと非難された。
なぜお前だけできないのか。
なぜ迷惑を考えないのか。
一緒にいたくないと。
そして周りはささやき始めた。
あいつには右手が無いのではないかと。
その人は、
右手を使う仕事を買って出たが、
失敗ばかりが続いた。
その人は、
日に日に元気を無くしていった。
1人でいることが多くなり、
無気力に遠くを見つるようになった。
私はその人に聞いた。
あなたは私たちが握手を求めても、右手が出ない。
右手があるなら、握手ができるはずでしょう?
彼は困惑した。
右手はもちろん動かず、
言葉も出ず、表情もこわばった。
「右手が無いのなら、無いのだと分かって」
彼は初めて、私の話を聞いた。
そう、彼は今まで自分の右腕が無いのかもしれないと、
考えてみることもなかった。
だから、
自分の右腕がどうなっているのかを
じっくり見たことも無かったのだった。
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これは例え話ですが、私の体験談です。
今どうしても書いておきたい部分だけ書きました。
続くといいのですが…
