*孔明先生ご自身が言われたとされる原文はこちらから
玄徳殿はその気宇壮大な天下の大計に固唾をのみ
『善(すばらしい)』と発するのがやっと。
興奮冷めやらぬまま、孔明先生に出盧し力を貸してほしいと頼みますが……
━─━─諸葛武侯伝17━─━─━─
「先生!是非出盧して私を助けてください」
玄徳殿は目を輝かせて臥龍・孔明先生に
今後も力を貸してほしい、早い話が劉備軍に仕官して欲しいとお願いしましたが、
さっきまであんなに天下三分の計を熱く語っていた孔明先生は
「いや、それはちょっと……私如き浅学の人間には……」
何か引っかかりがあるのか、表情を曇らせてしまいました。
が、玄徳殿は
「何をおっしゃる先生!
こんな山奥にいながら天下三分の計を立てられるお方が
何を言われますか!
先生の才能を山中の庵に閉じ込めておくとは
余りにも勿体ない!」
誠意と熱意を、決して得意ではない言葉に託しました。しかし
「晴耕雨読生活もなかなかいいものですよ♪
私はもともと、諸侯に仕える気はない一介の農夫に過ぎません
天下には沢山、賢者がおりますので、私ではなく天下の賢人を招き入れてください」
孔明先生の心はまだ、最後の扉を頑なに閉ざしたままです。
そんなやり取りを見ていた張飛さんは
「孔明!兄者の厚意を無駄にする気か!
山を出るのか出ないのか、ハッキリしろ!」
案の定、声を荒げてしまい
―孔明先生の心配事ってこれ!?
と誤解されても仕方がないほどの剣幕でしたが
「三弟(張飛)は粗野な男ですので気にしないで下され」
非礼を詫びて玄徳殿の熱意に水を差さないよう気を配る関羽殿。
孔明先生の気持ちが動かない様子を見て
どんなに言葉を尽くしても、この方には、伝わらないのか―
玄徳殿は今までの想いを噛みしめていました。
義勇軍として旗揚げしてからずっと民百姓の悲しみや苦労を
間近で感じて、何とかしたいと足掻(あが)き続けてきた玄徳殿。
どんなに天下万民を幸せにしたいと願っても
その熱い情熱をあざ笑うかのように空回る日々。
それでも、乱世に跪くことなく
己の信念を貫いて来られたのは偏に……何が為?誰が為?
今、ようやく目の前に
今までの自分の想いを実現させてくれる
臥龍がいるというのに……
玄徳殿は覚悟を決めたように頷くと突然、
「先生!」
跪いて頭を下げて懇願!
これには
「兄者!」「兄貴!」
二人の義兄弟だけではなく
「な、なんと!」
孔明先生も驚き、慌てて玄徳殿を起こそうとすると
「先生、憐れむのであれば私ではなく、天下万民を……何卒……」
乱世に苦しむ天下万民を代表して孔明先生に頭を下げた玄徳殿。
言葉ではうまく言えないからこそ、心に響く玄徳殿の言動。
孔明先生の中で、何かが起こりました。
孔明先生は改めて玄徳殿の前に座り頓首すると
「この命ある限り、犬馬の労を厭いません」
玄徳殿に天下を翔ける『翼』を与えるべく
遂に起ち上がったのです。
━─━─おわり━─━─━─
三顧の礼だけで17話

ここまで長らくお付き合いくださりありがとうございました。
玄子
