「チェルビ」第六十二話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第六十二話 恋愛連載小説

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僕たちの順番がやってきた。


ステージの上に立つと、少しだけ緊張したが、目の前の画面と音に集中した。


スローテンポから、いきなり早いリズムに切り替わる。


僕とユイは、練習どおり、上手くステップを踏むことができている。


「イクオ、めっちゃ楽しい!」


楽しさのあまり、大きくなっている声。


跳ね回る赤い髪。


少女の白い笑顔が、僕へ向けられる。


泣きたくなるほどの、完璧な可愛さだ。


二人とも、ステップだけでなく、目の前の男女のキャラクターと同じ振り付けができるほど余裕がある。


笑いあいながら踊り続けた。


最後のスローステップを決めたところで、ユイが僕に抱きついてきた。


画面には、今日一番のスコアが表示されている。


「イクオ、すごい!わたしら、めっちゃ、すごいって!」


ステージを降りると、少し興奮気味のユイは、僕の左腕が痛くなるほど強くしがみついてきた。


周りの人たちの拍手の中、小さく手を振りながら歩くユイ。


「めっちゃ、楽しかった。イクオ、ありがと」


自動販売機で冷たいジュースを一本だけ買って、二人で分けあって飲んだ。


雑貨屋や服屋をブラブラしていると、カウントダウンイベントまで、あと三十分になっていた。


「そろそろ、行こっか」


「うん」


外に出ると、やはり寒い。


短時間で、体温が奪われていく。


ユイは赤いマフラーを、白い首元に巻き直した。


「ユイ、走ろ」


「うん」


イベント会場まで、走った。


顔に触れてくる空気は、シャーベットを連想させる。


アスファルトの上を、二人の乾いた足音が走り抜ける。


振り返ると、必死で走り続ける少女の姿があった。


その後ろには、冬の夜空とライトアップされた大型建造物。


「ユイ、頑張れ」


「イクオ、速いって」


僕たちは、白い息を切らしながら、笑っている。


明日で年が変わる特別な日。


初めて、二人一緒に新しい年を迎えることが、楽しくて仕方なかった。


会場の大型スピーカーから、流行りの音楽が流されているのが聞こえる。


広場は、半分ほど人で埋まっていた。


ほとんどが、カップルやグループの若者だったが、中には小さな子どもを連れた家族もいる。


皆、談笑したり、記念撮影をしたり、音楽に合わせて踊ったりしている。


僕たちも、音楽に合わせて体を動かしていた。


寒さと持て余した時間は、それで紛らわせることができた。


イベント開始の時間がやってきた。


派手な音楽とともに、ステージ上にテレビでよく見かける男女のタレントが、ペアで現れた。


司会の二人は、とても派手な衣装だ。


ステージの上からの呼び掛けに、会場にいる皆が大声で応える。


今回のイベントは、五組のアーティストの音楽ライブがメインだ。


どのアーティストも特別好きなわけではなかったが、イベント自体は盛り上がりそうなのは予想できた。


一組目のアーティストが出てきた瞬間から、会場は異常な盛り上がり方だった。


左隣にいるユイと話すときも、大きな声が必要なほどだ。


立て続けに、五組のアーティストが出てきた。


五組目のアーティストの演奏が終わると、司会の二人がステージに姿を現した。


先に演奏し終わった四組も、ステージ上に戻ってきた。


どうでもいい会話で、時間調整をしている。


年明けまで、あと五分を切っている。


一分前。


いよいよカウントダウンが始まった。


ステージの上部にある電光表示板に、カウントダウンの数字が表示されている。


僕とユイは全身で抱き合って、減っていく数字とお互いの顔を、交互に見ていた。


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