「チェルビ」第五十八話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第五十八話 恋愛連載小説

※いつも、読んでくださり、ありがとうございます!

ここからの展開が、自分の中で、なかなかまとまってこない・・・。(大筋はできてるんやけど)

でも、できるだけ頑張りたいと思います。

これからも、よろしキュン。


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「いただきます」


その場にいた全員が、僕に向かって言葉をかけてきた。


ケーキの味は、平凡だった。


そのおかげで、話題は僕の仕事のことになった。


簡単な説明だけをした。


話は、それ以上、広がらなかった。


チェルビが、リビングのドアに爪をたてだした。


「やっぱり、あのドアって、猫に好かれるんや」


すでにケーキを食べ終えた奈緒ちゃんが、話しだした。


昔、ユイと奈緒ちゃんの二人で、一匹の猫を飼っていたらしい。


白黒模様の雌猫で、ユイが「アイチャ」と名付けた。


当時のユイは、猫の名前を「アイチャン」にしたかったのだが、すでに奈緒ちゃんの友達の家で飼われていた犬に、名前を先取りされていたらしい。


アイチャは、病気で五年しか生きられなかった。


佐々木家では、それ以来、猫を飼うことを禁止した。


ユイが高校生になったばかりの頃の話だ。


「チェルビは、大丈夫やで。お医者さんに、ちゃんと診せたもん」


ユイは、何かを言われる前に、先手を打った。


「今までの中では、一番やね」


唐突な奈緒ちゃんの一言に、ユイが反応した。


「なにが?」


奈緒ちゃんが、僕のほうに顔を向ける。


「お姉ちゃんが連れてきた彼氏のなかで、イクオ君が一番カッコいいやん」


一瞬、場の空気が固まりそうになった。


しかし、それは意外なところから崩れる。


「お母さんも、そう思うわ。前の彼氏って、変な子やったもんね」


お母さんの一言で、奈緒ちゃんは無邪気に笑っている。


「オレも、そう思ってた」


お父さんが、トドメを刺した。


僕とユイ以外の三人は、楽しそうに笑っている。


「みんな、なに言ってるの。マジで、やめて。イクオも、なんか言って」


ユイが、僕の袖を引っ張る。


「いや・・・。オレが一番やったら、今までの彼氏は、全然、大したことないな」


初対面特有の雰囲気は、ユイの尊い犠牲により、平和的なものに変わった。


僕とユイは、お互いの過去のことをあまり話さなかった。


特に、昔の恋人のことについては、避けていた。


二人の間に、そのことには触れないようにするルールが、知らない間に決められていた。


ここに来て、少しだけユイの過去を知ることができた。


それは、僕にとって新鮮な感覚だった。


数ヶ月ではあるが、ずっと一緒にいるのに、まだまだユイのことについて知らないことがある。


もしかしたら、これから知りたくないようなことも、知らなければならないかもしれない。


理想のような家庭の空気に触れるうちに、自分の中にぼんやりと、ある決意が形造られていくのを感じていた。


すっかり元気になったように見えるユイ。


その横顔は、明るく笑っている。


この笑顔を、いつまでも一番近くで見ていたい。


お母さんが、紅茶のおかわりを入れてくれた。


「ごめんね。ウチは、いつもこんな感じやから。イクオ君も、気使わなくていいからね」


目標にするには、素晴らしすぎる家庭だった。




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