「チェルビ」第五十一話 恋愛連載小説
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「えっ!?」
僕も、工藤主任も驚きの声を上げた。
周りのみんなも、しゃべるのをやめて、神崎マネージャーに注目した。
「お前、いきなり、なに言うてんねん?」
工藤主任は、呆れた感じだ。
「今、ウチにいる人たちで、この前みたいな対応ができる人間なんかいませんよ。早川さんの対応は、完璧でしたからね。はっきり言って、わたし、あの日はめちゃめちゃ感動しましたよ。これだけの優秀な人材が、ウチの社内にいたことに驚きですわ。ぜひ、ウチの会社のためにも、早川さんには、制作部に来ていただきたいですね」
「でも、早川君は物流の人間やぞ。今、抜けられたら、こっち、ひっくり返ってまうわ」
神崎マネージャーは、涼しげな笑いを顔に浮かべている。
「今すぐ、違いますって。年末年始が終わって、落ち着いてからでいいですよ。この前のこと、営業の後藤マネージャーに報告したら、表彰もんやって、めっちゃ喜んでましたよ。ちなみに、クライアントは、今度、早川さんに手土産持ってきてくれるそうです」
「後藤さんにも、報告済みか・・・。お前、どこまで手回してんねん」
「さあ、どこまででしょうね?一応、配属変更の申請書には、ウチのボスの承諾印が押してありますけど」
よくしゃべる人だが、全然嫌な感じがしない。
僕は、神崎マネージャーの人間的魅力に、完全に呑まれていた。
そして、この人が僕に対して抱いている考えと、僕が期待しているものが同じ方向を向いていることを確信した。
「社長の判子、押してあるんやったら、あとは、俺が判子ついたらええだけやんけ」
工藤主任が、僕の方を振り向いた。
「どうする?いや、どうしたい?早川君」
みんなの視線が、僕に集中する。
僕は、下の唇を噛みながら、両拳を握りしめていた。
(こういうのは、早いほうがいい)
決断。
あとのことは、考えなかった。
「制作部に行かせてください」
頭を下げた。
見慣れた白い床タイルに、汚れやキズがあるのが目に入る。
数秒が長い。
この沈黙の主犯は、間違いなく僕だ。
工藤主任の声は、明るかった。
「しゃあないな。神崎、すぐにウチの社員募集かけてくれ。抜けた穴、埋めるのに、優秀な人材が必要やぞ」
「ありがとうございます」
僕と神崎マネージャーは、その場にいた全員に頭を下げた。
僕の心は、感謝の気持ちでいっぱいになり、胸の奥に貯まっていたものが、素直に流れていくのを感じた。
一秒でも早く、このことをユイに報告したかった。
「その神崎マネージャーと、一緒に仕事できたらいいね」
先日のラーメン屋で、ユイは僕にそう言った。
「うん。本気でそう思うよ・・・」
僕の本心だった。
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