「チェルビ」第四十九話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第四十九話 恋愛連載小説

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まさか、この四十九話をするにあたって謝らなければならん羽目にあうとは・・・(クリック)



帰り道の車内では、ほとんど会話がなかった。


会社に戻り、車から降りると、まだ黒い空が見えた。


明かりが消えた営業部の部屋に入ると、残っていた人たちは、みんな眠っていた。


少し固い枕と、重たい布団は、すぐに眠れそうな安心感があった。


午前四時四十五分。


眠りに就く前、最後に確認した時刻。


この三時間後には、誰かが買ってきたコンビニのおにぎりとペットボトルの緑茶で、朝食をとっていた。


勤務中は、時々、猛烈な疲労感と睡魔が襲ってきたが、この日の仕事は、何とか乗り切ることができた。


帰る前に、ユイに電話を入れた。


「もう、晩ごはん食べた?」


ユイは部屋に帰ってきたところで、今日は外食したいと言ってきた。


小さな鈴の音が聞こえる。


多分、チェルビを抱いているのだろう。


「めっちゃ、ラーメン食べたいんやけど・・・」


ユイは、僕の提案に賛同してくれた。


マンション近くのラーメン屋に行くことにした。


駅に着くと、マフラーと手袋姿のユイが、出迎えてくれた。


ラーメン屋に入る前から始めた今回の出来事の話は、店を出る直前まで終わらなかった。


帰り道、学生風の若者や、サラリーマンやOLの集団が、賑やかだった。


僕たちは、手をつないで歩いた。


ユイは、左手だけ手袋をしている。


僕の気持ちの昂ぶりが、ユイに伝わったのだろう。


ユイの手が、僕の手を何度も強く握ってくる。


部屋に入ると、チェルビがゆっくり玄関まで歩いてきた。


両手でチェルビを抱えあげ、顔よりも高く持ち上げた。


後ろ足は伸びきって、無表情のまま、こちらを見下ろしている。


「あーっ!」


ユイの叫び声。


奥の部屋の床に、大量のティッシュペーパーが散乱している。


そのうちの一ヶ所は、黄色く濡れていた。




「イクオ、イクオ」


ユイの声が、遠くで聞こえる。


現実の朝が、やってきた。


「ありがと」


ユイの手は、冷たくなかった。


頭が重い。


鼻の奥が、いつもより、狭く感じる。


風邪ではないようだ。


ただ、疲れているだけだった。


時計を見てみると、いつも起きる時間を十五分過ぎていた。


食欲はなかったが、ユイが用意してくれたトーストとスクランブルエッグを、ゆっくり時間をかけて食べた。


最後に、野菜ジュースを飲み干した。


「今日も、遅くなる?」


「多分、遅いよ。ユイは?」


ユイも遅くなるらしい。


日高さんの部署の人たちと忘年会がある。


「頑張ってね」


ユイが、椅子に座っている僕の後ろから、抱きついてきた。


白い手が、もう片方の白い手首を、僕の胸の前で掴んでいる。


僕の右頬に、優しいキスがゆっくり運ばれてきた。


「ありがと」


「うん」


僕とユイの視線の先には、小さなネズミのぬいぐるみと格闘中の猫がいた。





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