「チェルビ」第四十五話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第四十五話 恋愛連載小説


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「うわっ。すごいね、これ」


時計を見たユイの感想は、どちらにも受けとれる。


もしかしたら、気に入らないのかもしれない。


僕は、この時計を身に付けたユイを見たかった。


「着けてみてもいいですか?」


店員から時計を受け取り、ユイに渡した。


赤いベルトが、ユイの左手首に巻き付いた。


大きなケースが光る。


「見て。真ん中に、赤い石がある」


ユイが、僕の前に手首を差し出してきた。


一緒に、時計を覗き込む。


透けるような真っ白い文字盤の上に、細長いシルバーのポイントが浮かんでいる。


中心には小さな赤い石が置かれていて、光を放って輝いていた。


そこから、シンプルな形状をしたシルバーの三針が伸びていて、髪の毛のように細い秒針は、美しい文字盤の上を、滑るように動いている。


サイドにあるリューズも、赤色にメッキされていた。


「自動巻きですか?」


店員がムーヴメントの説明をしてくれた。


ユイは、手首の角度をいろいろ変えてみたり、鏡に映したりして、自分と時計の相性を確かめていた。


「ユイ。俺的には、その時計、めっちゃ似合ってると思うんやけど」


「うん。良すぎるかも」


白い笑顔は、決心を固める理由に十分だ。


「これにします」


店員に告げた。


ユイよりも、僕のほうが、赤い時計を気に入ってしまったかもしれない。


店員が、黒く塗られた小さな木箱を用意して、そこに時計をしまった。


小さな赤い紙袋に入れられた、ユイへのクリスマスプレゼント。


「メリークリスマス」


「ありがと」


ユイの笑顔が、僕を満足させてくれた。




あてもなく、アーケードの通りを歩き始めた。


ユイは、今すぐ時計を着けたいと言い出した。


僕たちは、カフェに入った。


二人とも、ストレートのホットティーを注文した。


窓際の二人掛けの小さな丸テーブルの席。


背の高いカウンターチェアに腰掛けた。


ユイが黒い木箱を、テーブルの上の小さなスペースに置いた。


フタを開けると、赤い時計が、静かに、時間を刻んでいる。


ユイは、時計を取出して、自分の左手首に着けた。


「ありがと。めっちゃ、カッコいい、これ」


「うん。カタログの女の人より、似合ってるよ」


木箱を直したユイは、さっきの店の話をはじめた。


いくつか、気に入ったデザインのバッグや、アクセサリーがあったこと。


革製品以外にも、雑貨や服も置いてあったこと。


それら全てが、日本人デザイナーによるデザインで、日本国内で製作されていること。


「えっ!?あれ、みんな日本製?」


「うん。この時計もそうみたい」


ユイが時計を外して、僕に渡した。


ケースの裏は、シースルーバックだ。


サファイアガラスの向こうで、機械仕掛けが、せわしく動いているのが見える。


部品を固定する精密ビスが、青や緑や赤の色をしていて、小さな宝石箱を連想させる。


部品の一部に、シリアルナンバーがシルク印刷されていて、その下に、日本製であることを示す刻印があった。





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