「チェルビ」第四十四話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第四十四話 恋愛連載小説

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ユイが、僕の左腕に抱きついてきた。


嬉しい気持ちになった時のユイの癖だ。


「イクオ」


「ん?」


「来年も、再来年も、ずっと一緒に、クリスマスやれたらいいね」


「ずっと一緒におるよ。来年も、再来年も。その前に、ユイの今年のクリスマスプレゼントやな。頑張って探すわ」


二人でこの街を歩くのは、何度目かになる。


クリスマスツリーを飾ったり、サンタの人形を置いていたり、クリスマス仕様の店が多かった。


午前中は、ユイへのプレゼントは見つからなかった。


昼食を済ませて、電車で別の街に移動した。


服屋や雑貨屋を見て回ったが、やはり見つからなかった。


カフェで、コーヒーを飲んで、また歩きだした。


アーケードの下、人の流れに乗って、通りを歩いていると、ひとつの店が気になった。


以前まで、そこは確か、小さな和菓子屋だったはずだ。


店の入口の小ささはそのままで、バッグや帽子などが飾ってある。


全て、革製品のようだ。


「あれ、新しい店?」


「うん。わたしも初めて見た」


店に入ると、やはり入口は狭い。


左右の壁に、オブジェのように、様々な色や形の、革製のバッグが掛けてあった。


奥に進むと、少し開けていて、フロア中央に、ガラスショーケースがある。


中には、ブレスレットや、凝った装飾が施された財布、キーホルダーや指輪が、綺麗に並べられていた。


あまり見かけないデザインだったが、機能性も考えられているようなものが多く、好感が持てる。


壁にもガラスのショーケースがあり、腕時計が飾ってある。


機械式のムーヴメントの説明書きが表紙になったカタログが、無造作に置いてあった。


めくっていくと、一ページごとに一つの腕時計が紹介されている。


どれも、素晴らしいデザインだ。


いくつかは、本気で欲しくなった。


何ページ目かの写真が、ページをめくる僕の手を止めた。


壁のショーケースを、見てみる。


あった。


間違いない。


カタログの中の一ページに視線を戻す。


真っ白な空間に、綺麗な立ち姿の白人女性が一人。


軽くて柔らかそうな布地のワンピースから、細く白い腕が伸びている。


左の手首に鮮やかな赤色がある。


赤い革ベルト。


白く光る変型のトノー型ケースが、それが腕時計であることを主張している。


再び、壁に視線を移す。


ガラス越しに、現物を見てみる。


赤い革ベルトに光沢のある赤糸のステッチ。


ベルトの存在感に負けないように、樽の形をした大きなケースが採用されている。


素材はステンレスだと思う。


鏡面の金属が、店内の光を強く反射している。


近くにいた店員を呼んだ。


若い女性店員は、ガラス扉を開けて、その時計を取り出して、店内中央のショーケースの上に置いた。


ユイは、陳列棚に置かれたバッグを見ている。


ユイを呼び寄せた。




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