「チェルビ」第四十二話 恋愛連載小説
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普段の生活に、パソコンの勉強と練習が欠かせなくなっていた。
学生の頃以来の勉強は、苦痛ではなかった。
のめり込んでいるという表現が当てはまるかもしれない。
僕はパソコンに関して、とても一生懸命だった。
スクールの先生が、僕を高く評価してくれたこともあった。
ただし、あくまでも基本操作や基礎知識レベルの話なので、現時点での力が、実践に活用できるかは疑問だ。
「仕事」にするほどの技量や専門知識は、当然、持ち合わせていない。
しかし、なぜか、この時の努力は無駄にならないという自信があった。
この自信には、全く根拠はなかった。
それでも、僕は頑張った。
自分の意志で、頑張り続けた。
僕の中で、何かが起ころうとしていた。
いや、僕自身が、自分の力で何かを変えようとしていたのかもしれない。
それは、未来の自分への宣戦布告でもあり、過去の自分との決別の準備でもあった。
機会が訪れてきた時に、出遅れないように、僕の気持ちは臨戦体制を崩さない。
機会は、すぐに訪れることになる。
僕が努めている出版会社は、年末商戦に向けて、少し忙しくなってきていた。
定期発刊誌の合併号や、スポットの出版物などのイレギュラーな仕事が、業務の混乱を予想させる。
毎年、この時期はとても忙しく、ピーク時には、残業だけでなく、会社で寝泊りする事態にもなるらしい。
「早川君、何歳やったっけ?」
「二十五です」
僕が配属されている物流管理部の工藤主任が、僕の隣に座った。
小休憩の時間。
社員食堂では、僕たち以外にも、数人の社員がくつろいでいた。
僕も工藤主任も、紙コップに入ったホットコーヒーを飲んでいる。
「若いなあ。二日や三日の徹夜でも、平気やろ?」
「さすがに、三日の徹夜は勘弁してほしいですね」
「そら、そうやな」
工藤さんは、大きな声で笑った。
僕も、つられて笑った。
工藤主任は、とても面倒見がいい父親みたいな存在だ。
社内では、物流管理部以外の社員からも頼られている。
僕が入社した次の日に、物流管理部の社員全員で歓迎会をしてくれたのだが、この時の幹事は工藤主任だった。
この会社で居心地がいいのは、工藤主任に依るところが大きいかもしれない。
「来週から、鬼のように忙しなるで」
「マジですか?」
工藤主任は、現時点でわかっている仕事の予定を教えてくれた。
「早川君は、彼女おるんか?」
「はい。一応、一人います」
工藤主任は、また大声で笑った。
「早川君、なかなか、おもろいな。それに、なかなか男前やし、女の子にモテるやろ?」
「さあ、どうですかね」
休憩時間が終わり、僕たちは自分の持ち場に戻った。
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