「チェルビ」第四十話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第四十話 恋愛連載小説

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男性店員が提示してきた金額は、僕の予想に近かった。


レジで支払いを済ませ、車に戻った。


「すごいね。言ってみるもんやね」


派手なプリントの大きな紙袋を抱えながら、ユイは助手席でご機嫌だった。


「オレ、初めて買い物でマケてもらった」


帰り道、ハンバーガーショップに寄って、昼に食べる食事を持ち帰りで買った。


部屋に戻って、チェルビを檻から出してあげた。


チェルビは、僕たちにはかまわず、ベッドへ向かって、ゆっくり歩いていく。


垂れ下がっている深い青色のシーツに爪を引っかけて、よじ登っていく。


随分、上手に登るようになった。


そうすると決めていたように、ベッドのまん中まで、わき目も振らず歩いていく。


そこで、丸くなった。




十二月。


僕たちは、相変わらずの日常生活を送っている。


チェルビの首輪に付いてある鈴が一つ鳴った。


ベランダのサッシのガラスに爪を立てている。


「寒いのに・・・」


ユイが、サッシを開けると、チェルビはベランダに出た。


僕の友人に作ってもらった木製の腰掛けの上に飛び乗る。


置物のように座り、ベランダと外をさえぎる背の低い壁の上、切り取られたような夜の空を眺めている。


時々、後ろ足で耳の裏を掻いたり、前足で顔を洗う仕草をしている。


チェルビの瞳に映る星の光は弱々しい。


僕たちも、ベランダに出た。


決して綺麗ではない、街の明かりが作り出す夜景。


「海が見たい」


ユイの思いつきの一言は、僕をとても驚かせた。


僕の心を、直に覗いたかのようだ。


たった今、意味もなく、僕もそう思っていた。


「びっくりした。オレも、そう思ってた。海、見たくなってたよ」


二人の思いが同じだった記念に、キスをした。


チェルビは、二人には無関心で、小さな夜空を眺めているだけだった。


車を出した。


三十分も走れば、海沿いの公園に着くことができる。


助手席のユイの膝の上に、チェルビがおとなしく座った。


途中、コンビニに立ち寄り、温かい缶コーヒーを二本買った。


海沿いの公園の駐車場には、僕たちの他に、何台か車が停まっていた。


数組のカップルや若者のグループが、公園の遊歩道を歩いていた。


防波堤に腰掛けているのは、一組のカップルだけだ。


「ユイ、寒くない?」


「大丈夫。気持ちいいね、風」


二人とも、両手に缶コーヒーを持っている。


チェルビは、僕たちの前を、ゆっくり歩いている。


小さな鈴の音は、少し冷たい潮風に乗って、僕たちの耳に届いている。






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