「チェルビ」第三十六話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第三十六話 恋愛連載小説

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「ごめん。お待たせ」


ユイが、隣に座る。


「どうやった?」


自然に聞くことができた。


悪くなかった結果が、ユイの表情から読み取れたせいだろう。


「うん。話が盛り上がりそうやから、今度、日高さんの仕事を見学がてら、ゆっくり話そって言われた」


完璧ではなかったが、ユイは日高さんに自分の思いを伝えることができた。


日高さんも、ユイに興味があったので、思わず声をかけたそうだ。


お互いに響き合うものがあったのかもしれない。


ユイは、平日にアルバイトを休むことにした。


休みが取れた日に、日高さんの仕事場に行くと約束して、その日のチェルビの世話を友達に頼んだらしい。


「今週、日高さんの会社に行ってくる」


「うん。・・・・・。ユイ・・・」


「ん?」


「よかったな」


「イクオ・・・。ありがと」


ユイは、トイレに行くと言って席を立った。


初めて聞く、少しだけ上ずった声が耳に残った。


ユイは、ずっと、今の僕と同じだったに違いない。


専門学校を辞めてからは、自分の夢を持つことはできても、得体のしれない不安と、想像できない未来に、神経を削られていたのだろう。


もしかしたら、気づいていないだけで、相当なストレスを抱え込んでいたのかもしれない。


「ありがと。ごめんね」


帰ってきたユイは、いつもの笑顔を見せてくれたが、目は少しだけ赤かった。



午後一時を回った頃から、忙しくなってきた。


僕たちは、接客に追われていた。


並べていた作品は、若い人を中心に、色々な人に買ってもらえた。


チェルビも、売り上げに貢献してくれた。


作品を並べているところを動き回ったり、僕やユイに抱かれている姿を見た人が、チェルビを気に入ってくれて、ポストカードやシャツを買ってくれたりした。


途中、ケンゾーちゃんが、差し入れを持って遊びにやってきた。


ペットボトル入りのレモンティーが、とても美味しかった。


ユイが、ケンゾーちゃんに、日高さんとのやり取りを報告している。


「マジで!?ユイッチ、すごいやん。よかったなあ」


「うん。でも、まだ、どうなるかわからんよ」


ケンゾーちゃんの話では、ユイは、専門学校では成績優秀で、いわゆる”エリートクラス”に入ることも可能だったらしい。


なぜ学校を辞めたのか、不思議だったと言っている。


「あっ、今日、打ち上げせえへん?」


ケンゾーちゃんの提案に、ユイと僕は賛成した。


ター君とマサやんも、打ち上げに参加するのは大丈夫なようだ。


午後五時を回り、会場内の人は、少なくなってきた。


僕たちが用意していたものは、ほとんど売れた。


退去の時間は、各自の判断だった。


僕たちは、片付けを始めた。


他の参加者たちも、帰り支度にとりかかっている。


「お疲れさまです。今日は、どうやった?」


女性オーナーが、僕たちの所へ現れた。




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