「チェルビ」第三十四話 恋愛連載小説
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会場内に設けられた特設ステージでは、ミニライブが始まっていた。
買い物客らしい人の姿は、ほとんど見られない。
僕たちは、少し早い昼食をはじめた。
ここに来る途中、コンビニでパンやおにぎりを買っておいた。
誰かが来ても見られるように、出品作品にかけてあった白布は取り払っておいた。
「この猫ちゃんは、そこにいる猫ちゃん?」
チェルビのポストカードを手に取った女性が尋ねてきた。
上品な雰囲気で、どことなく古着屋の女性オーナーに似ている。
年は、やはり四十歳前後だろうか。
「そうです」
ボクとユイの間で遊んでいたチェルビを、しゃがんでいる女性の足元へ置いた。
「お名前は?」
首元を人差し指で触りながら、チェルビに話しかけている。
チェルビの名前を教えると、やはりいい名前だと褒めてくれた。
「このシャツやカードのデザインは、あなたがしたの?」
「はい」
ユイが、明るい返事を返す。
「あなた、学生さん?」
「いえ。今は、フリーターです」
ユイは、専門学校でデザインの勉強をしていたことを、女性に伝えた。
チェルビは、僕の元へ帰ってきた。
女性は、数点の作品について、ユイに質問した。
ユイは丁寧に答える。
「いろいろ質問して、ごめんなさい」
女性は、赤い革製のパスケースから名刺を取り出して、ユイと僕に渡した。
名刺には、聞いたことのない会社名が書かれてあった。
日高真知子という名前の上に、制作部主任と書いてある。
この会社は、あるアパレルメーカーの下請けを主にしているらしい。
日高さんの部署では、デザインや制作の仕事だけでなく、得意先との打ち合わせや、営業活動も行っていると教えてくれた。
もし興味があるのなら、連絡してほしいと言い残し、トートバッグだけを買っていった。
僕は、哺乳瓶に少しだけ残ったミルクを、チェルビの口元に持っていく。
飲み終えたチェルビは、眠たくなってきたのか、動きが鈍かった。
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