「チェルビ」第三十一話 恋愛連載小説
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抱えていた段ボール箱の中身が暴れだした。
そして、周囲に確実に聞こえるほどの大きな鳴き声を発している。
「それ、猫っすか?」
隣に立っていた金髪のショートヘアーの青年が声をかけてきた。
耳にたくさんのピアスをしているが、なぜか優しい雰囲気をもった好青年だった。
「あっ、そうです。多分、お腹空いて、ご機嫌斜めになってるんちゃうかな?」
色白で細身のこの青年は、猫が大好きらしい。
出品の準備を済まして、後でチェルビを見に来る約束をして別れた。
僕とユイは、自分たちの場所へ戻って、出品準備の続きをはじめた。
ある程度済ましていたので、すぐに終わった。
段ボール箱のフタを開けると、チェルビは横たわっていて、顔だけこちらを向けて鳴いている。
ユイがミルクを入れた哺乳瓶を持って、チェルビを片手で抱き上げた。
両方の前足で哺乳瓶を抱え、待ちきれなかった様子で、必死になってミルクを飲んでいる。
後ろ足も使い抱えこもうとするが、上手くいかないようだ。
何度も滑るガラスに苦労している。
いつの間にか、その姿を微笑ましく眺める人たちが、僕たちの周りに集まっていた。
チェルビとユイに声をかけてくる人もいる。
ミルクを飲み終えたチェルビは、段ボール箱に戻された。
最近お気に入りの、木で出来た車のオモチャで遊びだした。
前足を器用に使って、車輪をクルクルと回している。
時々、何かに驚いたように飛び跳ねて、車のオモチャを威嚇する。
チェルビの周りには、常に誰かがいるようになってしまった。
今は、小さな女の子がしゃがみこんで、箱の中を眺めている。
年齢を聞くと、五歳だと教えてくれた。
さっきの金髪の青年がやってきた。
「うわあ。めっちゃ、可愛いっすね」
オモチャを手に取り、チェルビと遊んでくれた。
「抱かせてもらってもいいっすか?」
「どうぞ」
ユイが応えて、チェルビを箱から抱えあげて、青年に渡した。
「うわあ、ちっちゃいなあ。名前、なんていうんですか?」
チェルビの名前を教えると、青年はいい名前だと感心していた。
ユイは、自分が名付け親なのだと自慢している。
「この子、女の子でしょ?めっちゃ美人になりそう」
青年はゆっくりとチェルビを箱に戻した。
それから、ユイの作品を一通り眺める。
真剣な表情で作品を見ている姿は、なにか神聖なものを感じさせる。
青年は、どの作品もとてもセンスがいいと褒めていた。
それから、後で自分が出品しているものも見に来てほしいと言い残し、自分の場所に戻っていった
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